お子さまが知的障害と診断され、20歳を迎えるにあたって障害年金の申請を考えているけれど、「療育手帳を取得していない」「軽度判定だから無理かもしれない」と不安を感じていませんか。
あるいは、ご自身が成人してから知的障害と診断されたものの、幼少期に療育手帳を取得していなかったため、障害年金の申請を諦めかけている方もいらっしゃるかもしれません。
結論からお伝えすると、療育手帳がなくても知的障害で障害年金を受給できる可能性は十分にあります。実際に、養護学校や特殊学級の在籍状況、通知表、医療記録などの客観的な資料があれば、療育手帳の代わりとして認められるケースは少なくありません。
この記事では、神戸で障害年金申請を専門にサポートしている社会保険労務士が、療育手帳なしでも知的障害の障害年金を受給するための具体的な方法を、実際の成功事例とともに詳しく解説します。
こんな悩み、ありませんか?
- ☑ 療育手帳を取得していないが、障害年金を申請したい
- ☑ 軽度の知的障害と診断されているが受給できるか不安
- ☑ 20歳を過ぎてから知的障害と分かったが、幼少期の記録が少ない
- ☑ 療育手帳の代わりに何を準備すればいいか分からない
- ☑ 特別支援学級に通っていなかったが申請できるか知りたい
一つでも当てはまる方は、この記事を最後までお読みください。諦める必要はありません。適切な準備と申請方法で、受給への道が開ける可能性があります。
知的障害における障害年金とは?基礎知識を押さえよう
知的障害は障害年金の対象です
知的障害は、障害年金の認定基準において「精神の障害」の一つとして位置づけられています。障害認定基準では、知的障害を次のように定義しています。
💡 知的障害の定義
「知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続的な支障が生じているため、何らかの特別な援助を必要とする状態にあるもの」
この定義からも分かるように、知的障害は発達期に生じる障害であるため、通常の障害年金で求められる「初診日要件」や「保険料納付要件」は問われません。つまり、年金保険料を納めていなくても、また初診日がいつであっても、障害の程度が基準に該当すれば受給できる可能性があるのです。
療育手帳と障害年金は別の制度です
ここで重要なのは、療育手帳と障害年金は全く別の制度であるという点です。療育手帳は各自治体が独自の基準で交付する福祉サービスのためのものであり、障害年金は国の年金制度です。
療育手帳の判定基準は主に知能指数(IQ)を重視しますが、障害年金の認定では、IQはあくまで判断材料の一つに過ぎません。障害認定基準には次のように明記されています。
💡 重要ポイント
「知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する」
つまり、療育手帳を持っていないことや、軽度の判定を受けていることは、障害年金の受給を妨げる理由にはならないのです。
受給要件は2つだけ
知的障害で障害年金を受給するための要件は、実はシンプルです。
1. 年齢が20歳以上であること
20歳の誕生日の前日(法律上の20歳到達日)から申請が可能になります。20歳を過ぎてから知的障害と診断された場合も、すぐに申請できます。
2. 障害の程度が1級または2級に該当すること
知的障害の場合、障害基礎年金の対象となるため、1級または2級の認定を受ける必要があります(3級では支給されません)。
この2つの要件を満たせば、療育手帳の有無にかかわらず、受給の可能性があります。
知的障害における障害年金申請の全体像
20歳到達(または診断確定)
20歳の誕生日の前日から申請可能。初診日は出生日として扱われるため、初診日の証明は不要。
障害の程度の確認
日常生活における援助の必要度を総合的に判断。療育手帳がなくても、客観的資料で障害の存在を証明できればOK。
申請書類の準備・提出
診断書・病歴就労状況等申立書・代替証明資料を揃えて年金事務所へ提出。審査期間は通常3か月程度。
療育手帳がなくても障害年金を受給できる3つの理由
「療育手帳がないと障害年金はもらえない」と思い込んでいる方は少なくありません。しかし、それは誤解です。ここでは、療育手帳なしでも受給できる根拠を、制度の観点から詳しく解説します。
理由1:療育手帳は障害年金の必須要件ではない
障害年金の認定基準や申請手続きのどこにも、「療育手帳の提出が必須」とは書かれていません。療育手帳はあくまで「参考資料の一つ」として扱われるに過ぎないのです。
実際、障害認定基準には次のように記載されています。
💡 認定基準の記載
「発育・養育歴、教育歴、療育手帳の有無とその区分を考慮する。中高年になってから知的障害が判明して請求する場合には、幼少期の状況を考慮する。幼少期の状況は療育手帳により確認されるのが一般的であるが、療育手帳がない場合には養護学校や特殊学級の在籍状況や通知表などを通して客観的に確認できれば、障害等級2級の可能性が検討される」
つまり、療育手帳がなくても、他の客観的資料で幼少期から知的障害があったことを証明できれば、受給の可能性があるということです。
理由2:「総合判定」では生活実態が重視される
知的障害の障害年金認定では、「総合判定」という方法が採用されています。これは、IQなどの数値だけでなく、日常生活における援助の必要度、就労状況、生活環境など、さまざまな角度から総合的に障害の程度を判断するものです。
具体的には、以下のような項目が考慮されます。
- 日常生活能力: 食事、清潔保持、金銭管理、通院服薬、対人関係、危機対応、社会性の7項目
- 療養状況: 通院頻度、服薬の有無、福祉サービスの利用状況
- 生活環境: 在宅か施設入所か、家族の援助の程度
- 就労状況: 就労の有無、仕事内容、職場での配慮の程度
- 発育・教育歴: 特別支援学級の在籍、通知表の評価、学習の遅れ
療育手帳はこれらの項目の一部に過ぎません。たとえ療育手帳がなくても、日常生活で多くの援助が必要であることを示す資料が揃えば、1級や2級の認定を受けられる可能性は十分にあります。
理由3:代替証明資料が広く認められている
障害年金の審査では、「客観的に知的障害があったことが分かる事実」があればよいとされています。この客観的事実を証明する方法は、療育手帳だけではありません。
実際に認められた代替証明資料の例としては、次のようなものがあります。
- 特別支援学校(養護学校)や特別支援学級の在籍証明書
- 小中学校の通知表(評価が著しく低い場合)
- 母子健康手帳(発達の遅れの記載)
- 幼少期の医療機関の診療記録
- 発達検査や知能検査の結果
- 障害福祉サービスの利用記録
- 就労移行支援や就労継続支援の利用証明
これらの資料を複数組み合わせることで、幼少期から知的障害があったことを証明し、療育手帳がなくても受給につなげることができます。
⚠️ ご注意ください
ただし、代替証明資料が一切ない場合は、受給が難しくなる可能性があります。できるだけ早い段階で、幼少期の記録を探し始めることをお勧めします。実家の押し入れ、学校への問い合わせ、母子手帳の確認など、思い当たるところから始めてみましょう。
知的障害の障害等級認定基準
| 等級 | 障害の状態 | 年金額(月額・概算) |
|---|---|---|
| 1級 | 食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要で、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難。日常生活が困難で常時援助を必要とする | 約8.6万円 (年額約103万円) |
| 2級 | 食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要で、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られる。日常生活にあたって援助が必要 | 約6.9万円 (年額約83万円) |
| 3級 | 労働が著しい制限を受ける | 支給なし (障害基礎年金に3級はない) |
※金額は2024年度の基準。子の加算がある場合は増額されます。
療育手帳の代わりに準備すべき資料|完全リストと入手方法
療育手帳がない場合、幼少期から知的障害があったことを証明するために、複数の客観的資料を集める必要があります。ここでは、実際に認められた資料を、カテゴリー別に詳しく紹介します。
カテゴリー1:教育関連の資料
学校での学習状況や在籍状況は、知的障害の客観的証明として非常に重視されます。
1. 特別支援学校・特別支援学級の在籍証明書
入手方法: 卒業した学校に連絡して「在籍証明書」または「卒業証明書」を発行してもらいます。学校が統廃合されている場合は、教育委員会に問い合わせましょう。
証明力: 非常に強い。特別支援学級に在籍していた事実は、知的障害があったことの有力な証拠になります。
2. 通知表(成績表)
入手方法: 実家に保管されていることが多いです。紛失している場合、学校に「指導要録の写し」を請求できる場合があります(保存期間があるため早めの確認を)。
証明力: 中程度。全教科で著しく評価が低い場合、学習面での困難を示す資料になります。
3. 個別の教育支援計画・個別の指導計画
入手方法: 在学中に作成されていた場合、学校に保管されている可能性があります。
証明力: 強い。具体的な支援内容が記載されており、障害の程度を示す資料として有効です。
カテゴリー2:医療関連の資料
4. 幼少期の診療記録・カルテ
入手方法: 小児科や発達外来を受診していた医療機関に問い合わせます。カルテの保存期間は5年が原則ですが、それ以上保管している医療機関もあります。
証明力: 非常に強い。発達の遅れや知的障害の診断が記載されていれば、最も有力な証拠になります。
5. 母子健康手帳
入手方法: 保護者が保管していることが多いです。紛失している場合、再交付は難しいですが、市区町村の母子保健担当課に記録が残っている場合があります。
証明力: 中程度。発達の遅れ(首すわり、寝返り、言葉の発達など)が記載されていれば有効です。
6. 発達検査・知能検査の結果
入手方法: 児童相談所、保健センター、医療機関で実施された検査記録を問い合わせます。
証明力: 非常に強い。IQや発達指数(DQ)の数値は、障害の程度を示す重要な資料です。
カテゴリー3:福祉サービス関連の資料
7. 障害福祉サービスの受給者証
入手方法: 市区町村の障害福祉課に問い合わせます。過去に利用していたサービスの記録も取得できる場合があります。
証明力: 強い。障害福祉サービスの利用実績は、障害の存在を示す有力な証拠です。
8. 就労移行支援・就労継続支援の利用証明
入手方法: 利用している(していた)事業所に証明書の発行を依頼します。
証明力: 中〜強。就労に特別な支援が必要だったことを示す資料になります。
9. 精神障害者保健福祉手帳
入手方法: 取得している場合は、そのコピーを準備します。
証明力: 中程度。知的障害で精神障害者保健福祉手帳を取得している場合、参考資料になります。
カテゴリー4:その他の資料
10. 家族や第三者の証言(申立書)
入手方法: 幼少期から現在までの状況を詳しく知る家族や支援者に、具体的なエピソードを書いてもらいます。
証明力: 補助的。単独では弱いですが、他の資料と組み合わせることで説得力が増します。
11. 写真や日記
入手方法: 家族が保管している写真や育児日記を探します。
証明力: 補助的。発達の遅れや日常生活の困難を示すエピソードがあれば参考になります。
💡 資料収集のポイント
1つの資料では証明力が弱くても、複数の資料を組み合わせることで説得力が大きく高まります。「これだけでは足りないかも」と諦めず、思い当たる資料をできるだけ多く集めましょう。特に、幼少期の状況を示す資料(10歳以前)は重要です。
日常生活能力の判定項目(診断書で評価される7項目)
以下の項目で、「援助が必要」「できない」が多いほど、障害等級が高くなる傾向があります。
1. 適切な食事
配膳や片付けを含めて、バランスよく3度の食事を摂れるか
2. 身辺の清潔保持
入浴、洗髪、着替え、部屋の掃除や片付けができるか
3. 金銭管理と買い物
お金を適切に管理し、計画的な買い物ができるか
4. 通院と服薬
規則的に通院し、必要に応じて服薬できるか
5. 他人との意思伝達及び対人関係
会話ができるか、集団行動に参加できるか
6. 身辺の安全保持及び危機対応
危険から身を守れるか、異常時に適切に対応できるか
7. 社会性
公共交通機関の利用、銀行や役所の手続きが一人でできるか
医師に診断書を書いてもらう際は、これらの項目について具体的なエピソードを伝えることが重要です。
幼少期の記録を最大限に活用する方法
療育手帳がない場合、幼少期から知的障害があったことを証明するために、さまざまな記録を活用する必要があります。ここでは、具体的な活用方法を解説します。
通知表の見方と活用ポイント
通知表は、学習面での困難を示す重要な資料です。以下のポイントに注目して、病歴・就労状況等申立書に記載しましょう。
注目すべきポイント
- 各教科の評価: 全教科で最低評価(1や「努力を要する」)が続いている場合、学習の著しい遅れを示す証拠になります
- 所見欄のコメント: 「理解が遅い」「個別の支援が必要」「集団行動が難しい」などの記載があれば、そのまま引用します
- 出席状況: 頻繁な欠席や保健室登校がある場合、適応困難を示す資料になります
- 学年ごとの変化: 学年が上がるにつれて評価が下がっている場合、学習内容の複雑化に対応できなかったことを示します
申立書への記載例
「小学校の通知表を見ると、全教科で最低評価が続いており、特に算数と国語は1年生から6年生まで一貫して『努力を要する』の評価でした。所見欄には『理解に時間がかかるため、個別の支援が必要』『簡単な計算も繰り返し練習が必要』と記載されています(通知表のコピー添付)」
母子健康手帳の活用方法
母子健康手帳には、乳幼児期の発達の記録が詳しく残っています。以下の項目をチェックしましょう。
重要な記載箇所
- 発達の節目の遅れ: 首すわり、寝返り、お座り、つかまり立ち、歩行、言葉の発達などの時期
- 健診での指摘: 3か月健診、6か月健診、1歳半健診、3歳児健診での医師や保健師のコメント
- 予防接種の記録: 接種時期の遅れは、発達の遅れと関連している場合があります
- 保護者の記録欄: 「言葉が遅い」「他の子と違う気がする」などの記載があれば重要です
学校への問い合わせ方法
在籍証明書や指導要録の写しを取得する際の問い合わせ方を具体的に紹介します。
電話での問い合わせ例
「〇〇年に貴校を卒業した△△と申します。障害年金の申請に必要なため、在籍証明書と、可能であれば指導要録の写しを取得したいのですが、手続き方法を教えていただけますでしょうか」
学校が統廃合されている場合
学校が既に閉校している場合は、以下の手順で記録を探します。
- 市区町村の教育委員会に連絡し、記録の保管場所を確認
- 統合先の学校に記録が引き継がれている場合は、その学校に問い合わせ
- 保管期間を過ぎている場合は、代替資料(卒業アルバム、通知表など)で補う
医療機関への問い合わせのコツ
幼少期のカルテを取得する際は、以下の点に注意しましょう。
カルテの保存期間
法律上、カルテの保存期間は5年です。しかし、発達障害や知的障害の診療を行っている医療機関では、長期保管している場合もあります。諦めずに問い合わせてみましょう。
問い合わせの際のポイント
- 受診した時期をできるだけ正確に伝える(母子手帳や保険証の記録を確認)
- 診察券が残っていれば、診察券番号も伝える
- 「障害年金の申請に必要」と目的を明確に伝える
- 廃棄されている場合は、「受診していた事実の証明書」だけでも発行してもらえるか確認
💡 記録が見つからない場合
どうしても幼少期の記録が見つからない場合でも、諦める必要はありません。現在の診断書に、「幼少期から知的障害があったと推定される」という旨の医師のコメントを記載してもらうことで、認められるケースもあります。また、家族や親族の詳細な申立書で、幼少期のエピソードを具体的に記述することも有効です。
療育手帳なしで受給できた!3つの成功事例
ここでは、実際に療育手帳を持たずに障害年金の受給に成功した3つの事例を詳しく紹介します。それぞれ異なる状況でしたが、適切な準備と申請により、希望をつかむことができました。
20代女性・軽度知的障害・療育手帳なし
🔹 発症から受診まで
Aさんは、幼少期から言葉の発達がゆっくりで、同年代の子どもたちと比べて遊びの内容も幼く、親御さんは「少し成長がゆっくりなのかな」と感じていました。小学校入学時は普通学級に入りましたが、授業についていくことができず、1年生の1学期から担任の先生に「理解が遅い」「集団行動が難しい」と指摘されていました。2年生に進級する際、学校側から「特別支援学級への転籍を検討してはどうか」と提案され、2年生からは特別支援学級で学ぶことになりました。しかし、当時の親御さんは「いつか追いつける」と考え、療育手帳の取得は行いませんでした。中学・高校も特別支援学級・特別支援学校で学びましたが、療育手帳は最後まで取得しないまま20歳を迎えました。
🔹 日常生活での困難
現在、Aさんは就労継続支援B型事業所で軽作業をしていますが、作業の手順を覚えるのに時間がかかり、職員の方から毎日同じ説明を受けています。「今日は何曜日?」と頻繁に尋ねたり、簡単な計算(おつりの計算など)ができなかったりと、日常生活の多くの場面で援助が必要です。金銭管理は一人ではできず、母親が通帳を管理し、毎週決まった金額をAさんに渡しています。一人で電車に乗ることはできますが、乗り換えが必要な場合は迷ってしまうため、通所には毎日同じルートを使っています。買い物も、いつも同じコンビニで同じ商品を買うことはできますが、初めての店や商品選びは一人ではできません。
🔹 申請への不安と転機
20歳を迎える数か月前、親御さんは障害年金の存在を知り、申請を検討しました。しかし、療育手帳を取得していなかったため、「受給は難しいのではないか」と不安を感じていました。市役所の窓口で相談したところ、「療育手帳がないと厳しいかもしれません」と言われ、一度は諦めかけました。しかし、インターネットで情報を調べるうちに、「療育手帳がなくても、他の資料で証明できれば受給できる可能性がある」という情報を見つけ、専門家に相談することを決意しました。
✅ 実際に行った準備・対策
- 小学校から高校までの通知表をすべて集めました。全学年で最低評価が続いており、所見欄にも「理解が遅い」「個別支援が必要」との記載がありました
- 特別支援学級・特別支援学校の在籍証明書を取得しました
- 現在通所している就労継続支援B型事業所に、支援の内容を詳しく記載した証明書を発行してもらいました
- 病歴・就労状況等申立書に、幼少期から現在までの具体的なエピソードを詳細に記載しました(「おつりの計算ができない」「曜日感覚がない」など)
- 医師に診断書を依頼する際、これらの資料を持参し、日常生活の困難を具体的に伝えました
通知表と在籍証明書が決め手となり、療育手帳なしでも2級に認定されました。「諦めずに準備して本当によかった」と親御さんは涙を流されました。現在も就労継続支援B型で働きながら、障害年金を受給し、将来への不安が大きく軽減されています。
30代男性・中度知的障害・20歳過ぎてから判明
🔹 発症から受診まで
Bさんは、幼少期から「少し発達がゆっくりな子」として育ちました。言葉の遅れがあり、3歳児健診では「経過観察」と言われましたが、当時は「そのうち追いつくだろう」と考え、特別な対応はしませんでした。小学校は普通学級に在籍しましたが、学習についていけず、成績は常に最下位。中学を卒業後、定時制高校に進学しましたが、1年で中退しました。その後、アルバイトを転々としましたが、仕事の指示が理解できず、どの職場も長続きしませんでした。30代になり、うつ症状が出たため精神科を受診したところ、初めて知的障害の診断を受けました。医師から「おそらく幼少期から知的障害があったと思われます。障害年金が申請できるかもしれません」と言われ、申請を考え始めました。
🔹 日常生活での困難
Bさんは現在、実家で両親と同居しています。簡単な家事(皿洗いなど)はできますが、料理や掃除の段取りを一人で考えることができません。金銭管理は全くできず、「お金を使いすぎてしまう」「必要なものと欲しいものの区別がつかない」という状態です。通院は一人でできますが、それ以外の外出は家族の同伴が必要です。会話は単純なやりとりならできますが、「昨日何をしたか」を順序立てて説明することが苦手で、話が前後したり、要点が伝わらなかったりします。アルバイトの面接でも、質問の意味が理解できず、何度も聞き返してしまうため、採用に至らないことが続いていました。
🔹 申請への不安と転機
診断を受けた精神科医から障害年金の話を聞き、希望を持ちましたが、「療育手帳も取得していないし、幼少期の記録もほとんどない」という状況に不安を感じました。年金事務所に相談に行ったところ、「幼少期の証明が難しいと、受給は厳しいかもしれません」と言われ、ショックを受けました。しかし、「何もしないで諦めたくない」という思いから、障害年金専門の社会保険労務士に相談することを決めました。社労士から「まずは幼少期の記録を探しましょう」とアドバイスを受け、実家の押し入れを徹底的に探したところ、母子手帳と小学校の通知表が見つかりました。
✅ 実際に行った準備・対策
- 母子手帳を見つけ、3歳児健診で「発語が少ない」「理解が遅い」との記載があることを確認しました
- 小学校1〜3年生の通知表が見つかり、全教科で最低評価だったことが分かりました(4年生以降は紛失)
- 幼少期に言語訓練を受けていた病院を思い出し、問い合わせたところ、当時のカルテが保管されており、診療記録の写しを取得できました
- 現在の主治医(精神科)に、「幼少期から知的障害があったと推定される」という内容を診断書に明記してもらいました
- 母親に、幼少期から現在までの詳細なエピソードを申立書に書いてもらいました(「オムツが取れたのは5歳」「小学校で一人だけ九九が覚えられなかった」など具体的に)
母子手帳と医療記録が幼少期からの障害を証明する決定的な資料となり、2級に認定されました。さらに、20歳時点でも障害があったと認められ、遡及請求(過去に遡っての支給)も認められました。「もう一生働けないと思っていたけれど、これで生活の目途が立った」とBさんは安堵の表情を見せました。
20代女性・軽度知的障害・療育手帳B判定
🔹 発症から受診まで
Cさんは小学校入学時から学習の遅れが目立ち、2年生の時に児童相談所で知能検査を受けたところ、IQ65と判定されました。療育手帳を取得しましたが、判定は「B(軽度)」でした。小中学校は普通学級に在籍しましたが、学習内容を理解することができず、テストはほぼ0点の連続。周囲からは「努力が足りない」「怠けている」と誤解されることも多く、本人も自信を失っていきました。高校は特別支援学校に進学し、卒業後は就労移行支援を利用して就職活動を行いましたが、一般就労は難しく、現在は就労継続支援A型事業所で働いています。20歳を迎える際、親御さんが障害年金の申請を検討しましたが、「軽度判定では無理だろう」と周囲から言われ、申請を躊躇していました。
🔹 日常生活での困難
Cさんは現在、就労継続支援A型事業所で清掃の仕事をしています(最低賃金が保障される雇用契約)。仕事の内容は単純な繰り返し作業ですが、それでも手順を覚えるのに時間がかかり、職員からの指示が必要です。「報告・連絡・相談」が苦手で、困ったことがあっても自分から言い出せず、ミスが積み重なってしまうことがあります。日常生活では、買い物に行っても「何を買えばいいか分からない」と立ち尽くしてしまうことがあり、母親が買い物リストを作って渡しています。金銭管理も苦手で、ATMの使い方は覚えましたが、「いくら引き出せばいいか」の判断ができません。公共交通機関の利用は、いつものルートなら一人でできますが、電車の遅延など予定外の事態が起きるとパニックになってしまいます。
🔹 申請への不安と転機
親御さんは、「療育手帳がB(軽度)だから障害年金は無理」と思い込んでいました。しかし、就労継続支援A型の支援員から「療育手帳と障害年金は別の制度だから、一度専門家に相談してみては」とアドバイスを受け、障害年金専門の社労士に相談しました。社労士から「軽度判定でも、日常生活での困難が大きければ受給できる可能性がある」と聞き、希望を持ちました。「Cさんの場合、福祉サービスを長年利用している実績が強みになります」とのアドバイスを受け、申請の準備を始めました。
✅ 実際に行った準備・対策
- 就労移行支援と就労継続支援A型の利用証明書を取得し、「常時支援が必要」という内容を明記してもらいました
- 療育手帳はBでしたが、児童相談所での検査結果(IQ65)の記録を取り寄せました
- 小中学校の通知表をすべて集め、学習の遅れを証明しました
- 病歴・就労状況等申立書に、日常生活の具体的な困難を詳しく記載しました(「買い物リストがないと何を買えばいいか分からない」「電車が遅延するとパニックになる」など)
- 医師に診断書を書いてもらう際、福祉サービスの利用状況と日常生活の困難を詳しく伝え、「援助が常時必要」という点を強調してもらいました
療育手帳がB(軽度)判定であっても、福祉サービスの長年の利用実績と、日常生活における具体的な困難の証明により、2級に認定されました。「軽度だから無理だと諦めていたけれど、相談して本当によかった」と親御さんは喜びを語りました。現在も就労継続支援A型で働きながら、障害年金を受給し、将来への安心を得ています。
3つの成功事例の比較
| 項目 | 事例1 通知表が決め手 |
事例2 母子手帳と医療記録 |
事例3 福祉サービスの実績 |
|---|---|---|---|
| 年代・性別 | 20代女性 | 30代男性 | 20代女性 |
| 療育手帳 | なし | なし | あり(B判定・軽度) |
| 主な困難 | 作業手順を覚えられない、金銭管理ができない、乗り換えができない | 家事の段取りができない、金銭管理が全くできない、説明が苦手 | 報連相ができない、買い物の判断ができない、予定外の対応が困難 |
| 申請の壁 | 療育手帳なし、市役所で「厳しい」と言われた | 30代で初診断、幼少期の記録がほとんどない | 軽度判定、「無理」と周囲から言われた |
| 決め手となった資料 | 通知表(全学年)、特別支援学級の在籍証明、就労支援の証明書 | 母子手帳、幼少期の医療記録、通知表(一部) | 福祉サービスの利用証明、通知表、詳細な申立書 |
| 成功のポイント | 通知表の所見欄を活用、日常の困難を具体的に記載 | 徹底的に記録を探した、母親の詳細な申立書 | 福祉サービスの実績を強調、診断書の内容を工夫 |
| 認定結果 | 2級 年約83万円 |
2級 年約83万円+遡及約250万円 |
2級 年約83万円 |
💡 3つの事例から学ぶこと
療育手帳がなくても、あるいは軽度判定であっても、適切な資料を集めて日常生活の困難を具体的に証明できれば、障害年金の受給は十分に可能です。諦めずに、まずは手元にある資料を集め、専門家に相談することが大切です。
申請の流れと準備チェックリスト
ここでは、療育手帳がない場合の障害年金申請の具体的な流れと、準備すべき事項を詳しく解説します。
申請までのステップ
療育手帳なしの知的障害申請 7つのステップ
幼少期の記録を探す(申請の3〜6か月前)
実家の押し入れ、学校への問い合わせ、母子手帳の確認など、思い当たるところから記録を探し始めましょう。時間がかかる作業なので早めの着手が重要です。
年金事務所で初回相談(申請の2〜3か月前)
まずは年金事務所に電話予約し、「知的障害で療育手帳がない場合の障害年金申請」について相談しましょう。必要書類のリストをもらえます。
医療機関を探す・受診する(申請の1〜2か月前)
診断書を書いてもらえる精神科・心療内科を探します。初診で診断書を書いてもらえない場合もあるため、複数回の受診が必要な可能性も考慮しましょう。
診断書の依頼(20歳前後3か月または現在)
医師に障害年金用の診断書を依頼します。集めた資料(通知表、母子手帳など)を持参し、日常生活の困難を具体的に伝えましょう。
病歴・就労状況等申立書の作成
幼少期から現在までの経過を詳しく記載します。「いつ・どこで・どんな困難があったか」を具体的に書くことが重要です。
必要書類を揃えて提出
診断書、申立書、代替証明資料、戸籍謄本、住民票、年金手帳、振込先の通帳などを揃え、年金事務所または市区町村の窓口に提出します。
審査結果を待つ(約3か月)
提出から約3か月で結果が通知されます。認定されれば年金証書が届き、不支給の場合は不支給決定通知書が届きます。
診断書作成時のポイント
診断書は障害年金の審査において最も重要な書類です。医師に正確な診断書を書いてもらうために、以下のポイントを押さえましょう。
医師に伝えるべき情報
- 日常生活の具体的な困難: 「金銭管理ができない」だけでなく、「スーパーでおつりの計算ができず、いつも多めに出してしまう」など具体的に伝えます
- 家族の援助の内容: 「食事の準備」「通院の付き添い」「金銭管理」など、どんな援助を受けているか詳しく伝えます
- 就労の状況: 就労している場合は、「単純作業のみ」「常時指導が必要」など、配慮や支援の内容を伝えます
- 幼少期からの経過: 集めた資料(通知表、母子手帳など)を見せながら、「幼少期から知的障害があった」ことを伝えます
医師への説明メモの例
診察時に渡すメモの例
【日常生活でできないこと】
・金銭管理:おつりの計算ができない、ATMで引き出す金額を判断できない
・買い物:何を買えばいいか分からず、リストがないと困る
・公共交通機関:いつものルートは一人でできるが、乗り換えや遅延があるとパニックになる
・家事:皿洗いはできるが、料理の段取りや掃除の計画が立てられない
・対人関係:報告・連絡・相談が苦手、困っても言い出せない
【家族の援助】
・母が毎週の買い物リストを作成
・金銭管理は母が通帳を管理し、週に3000円を渡す
・通院は母が同伴
【幼少期の状況】
・小学校2年生から特別支援学級に在籍(在籍証明書添付)
・通知表は全学年で最低評価(コピー添付)
・母子手帳に「3歳児健診で発語が少ない」との記載(コピー添付)
⚠️ 診断書の確認を忘れずに
診断書を受け取ったら、提出前に必ず内容を確認しましょう。特に「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」の欄が、実態と合っているかチェックします。もし実態より軽く書かれている場合は、医師に修正を依頼することも検討しましょう。
✅ 申請前の準備チェックリスト
幼少期の記録を探した
通知表、母子手帳、診察券、学校からの書類など、実家や保管場所を探索
学校に在籍証明書を請求した
特別支援学級や特別支援学校に在籍していた場合は必ず取得
医療機関にカルテの有無を確認した
幼少期に受診した小児科や発達外来に問い合わせ
福祉サービスの利用証明書を取得した
就労移行支援、就労継続支援、障害福祉サービスなどの利用実績
診断書を作成してくれる医療機関を見つけた
精神科・心療内科に電話で確認、必要に応じて複数回受診
日常生活の困難を具体的にリスト化した
「できないこと」を箇条書きにして、診察時に医師に渡す
病歴・就労状況等申立書を下書きした
幼少期から現在までの経過を時系列で整理、具体的エピソードを記載
必要な添付書類を揃えた
戸籍謄本、住民票、年金手帳、振込先の通帳のコピーなど
診断書の内容を確認した
受け取った診断書が実態と合っているかチェック、必要なら修正依頼
不支給になった場合の対応
万が一、不支給の決定が出た場合でも、諦める必要はありません。以下の対応が可能です。
1. 審査請求(不服申立)
不支給決定に納得できない場合、決定通知を受け取ってから3か月以内に「審査請求」を行うことができます。新たな証拠資料を追加したり、不支給理由への反論を記載したりして、再審査を求めます。
2. 再申請
診断書の内容を見直し、医師に日常生活の困難をより詳しく伝えて診断書を書き直してもらい、再度申請する方法もあります。特に、診断書の「日常生活能力の判定」が実態より軽く書かれていた場合に有効です。
3. 専門家への相談
障害年金を専門とする社会保険労務士に相談することで、不支給理由の分析や今後の対策について具体的なアドバイスを受けられます。
よくある質問(FAQ)
療育手帳なしでの知的障害の障害年金申請について、よくいただく質問をまとめました。
まとめ:療育手帳がなくても、諦めない障害年金申請を
この記事では、療育手帳がない場合の知的障害の障害年金申請について、制度の仕組みから具体的な準備方法、成功事例まで詳しく解説してきました。
この記事の重要ポイント
- 療育手帳は必須要件ではありません – 通知表、母子手帳、医療記録など、他の資料で代替できます
- 軽度判定でも受給の可能性があります – IQだけでなく、日常生活の援助の必要度が総合的に判断されます
- 20歳過ぎてから判明しても大丈夫です – 幼少期の記録を集めることで、遡及請求も可能な場合があります
- 複数の資料を組み合わせることが鍵です – 一つ一つは弱くても、組み合わせることで証明力が高まります
- 具体的なエピソードが重要です – 「金銭管理ができない」ではなく「おつりの計算ができない」など、具体的に記載しましょう
申請を成功させるために
療育手帳がない場合の障害年金申請は、確かに簡単ではありません。しかし、適切な準備と正確な情報提供により、受給への道は開けます。
最も大切なのは、「諦めない」ことです。市役所の窓口で「厳しい」と言われても、周囲から「無理」と言われても、まずは専門家に相談してみてください。一人で悩まず、サポートを受けながら、一つ一つ準備を進めていきましょう。
療育手帳なしの申請 全体フロー
STEP1
記録を探す
・通知表
・母子手帳
・医療記録
・在籍証明書
STEP2
医師への相談
・資料を持参
・困難を説明
・診断書依頼
STEP3
申請・審査
・書類提出
・審査(約3か月)
・結果通知
↓
障害基礎年金2級の場合:年額約83万円を受給
療育手帳なしでも諦めないでください
知的障害の障害年金申請は、一人で進めるのが難しいケースも多くあります。神戸の障害年金専門社労士「諦めない障害年金」清水綜合法務事務所では、療育手帳がない方、軽度判定の方、20歳を過ぎてから診断された方など、困難なケースでも丁寧にサポートいたします。
📞 電話: 050-7124-5884 / ✉️ メール: mail@srkobe.com
初回相談無料 | 全国対応 | オンライン相談可
この記事が、療育手帳がなくて不安を感じている方、軽度判定で諦めかけている方の希望の光となれば幸いです。適切な準備と専門家のサポートがあれば、道は必ず開けます。
一人で悩まず、まずは一歩を踏み出してみてください。あなたとご家族の未来が、少しでも明るくなることを心から願っています。


