肺がんの治療を続けながら、日々の生活や経済面での不安を抱えていらっしゃる方は少なくありません。「治療の副作用で以前のように働けない」「収入が減って生活が苦しい」「この先どうすればいいのか」――そんな悩みを一人で抱え込んでいませんか?
実は、肺がんで生活や仕事に支障が出ている方は、障害年金を受給できる可能性があります。在宅酸素療法を実施されている方、化学療法の副作用で日常生活に著しい制限がある方、呼吸機能が低下して思うように動けない方など、多くのケースで障害年金の対象となります。
しかし、「肺がんでも障害年金がもらえるなんて知らなかった」「自分の症状で本当に対象になるのだろうか」「申請が複雑そうで諦めていた」という声もよく耳にします。障害年金は、あなたが納めてきた保険料に基づいて受け取る正当な権利です。知らないまま、あるいは諦めてしまうのは、あまりにももったいないことです。
この記事では、肺がんで障害年金を受給するために知っておくべきすべての情報を、神戸の障害年金専門社労士がわかりやすく解説します。具体的には、以下の内容をお伝えします。
- 肺がんで障害年金が受給できる具体的なケースと認定基準
- 受給するために必要な3つの要件
- 申請の流れと必要書類の詳細
- 診断書作成で押さえるべき重要なポイント
- 実際に受給できる金額の目安
- よくある疑問への回答
私たち清水総合法務事務所は、「諦めない障害年金」をコンセプトに、神戸を中心に障害年金申請のサポートを行っています。肺がんのような複雑なケースでも、適切な準備と専門知識があれば、受給の可能性は高まります。
この記事が、あなたの経済的な不安を少しでも軽減し、治療に専念できる環境を整える一助となれば幸いです。
申請について不安な点や疑問があれば、まずはお気軽にご相談ください。初回相談は無料で承っております。
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肺がんでも障害年金は受給できる
「肺がんで障害年金なんてもらえるの?」――このような疑問を持たれる方は非常に多くいらっしゃいます。実際、障害年金と聞くと、手足の障害や視覚・聴覚の障害をイメージされる方がほとんどです。しかし、障害年金はがんを含むあらゆる病気が対象となります。もちろん、肺がんも例外ではありません。
障害年金は「病名」ではなく「障害の状態」で判断される
障害年金の認定において重要なのは、「何の病気か」ではなく「その病気によってどのような障害が生じているか」という点です。つまり、病名そのものではなく、病気が原因で生じている日常生活や仕事への支障の程度が評価されます。
肺がんの場合、以下のような障害が評価の対象となります。
- 呼吸機能の低下:息切れ、呼吸困難など肺がんそのものによる呼吸機能障害
- 全身状態の悪化:化学療法や放射線療法の副作用による倦怠感、食欲不振、体重減少
- 転移による障害:脳転移による神経症状、骨転移による運動機能障害など
- 治療の継続による制限:頻繁な通院や入院による日常生活の制約
「まだ歩ける」「少しは働ける」という理由で諦める必要はありません。日常生活にどの程度の支障があるか、以前と比べてどのように変化したかが重要な判断基準となります。
肺がんで障害年金を受給できる具体的なケース
肺がんで障害年金が認められる具体的なケースを見ていきましょう。以下のような状況の方は、障害年金の対象となる可能性が高いといえます。
1. 在宅酸素療法を実施している方
常時または労作時に在宅酸素療法(HOT)を行っている場合、呼吸機能障害として認定される可能性があります。特に常時使用している場合は、障害厚生年金3級以上の認定基準を満たす可能性が高くなります。
2. 化学療法の副作用で日常生活に著しい支障がある方
抗がん剤治療による倦怠感、吐き気、食欲不振、下痢、手足のしびれなどの副作用が強く、日常生活動作(入浴、着替え、食事、移動など)に介助が必要な状態や、ほとんどベッドで過ごしている状態の場合、障害年金の対象となります。
3. 呼吸機能が著しく低下している方
動脈血ガス分析の数値(PaO2、PaCO2)や予測肺活量の値が一定の基準を下回っている場合、あるいは階段の昇降や平地歩行でも著しい息切れがある場合、呼吸機能障害として認定されます。
4. 転移により複数の障害がある方
肺がんが脳や骨、肝臓などに転移し、それぞれの部位で障害が生じている場合、複数の障害を総合的に評価して等級が決定されます。例えば、脳転移による運動麻痺や高次脳機能障害、骨転移による運動機能障害などが該当します。
5. 治療により症状が固定している方
手術や放射線治療の後遺症として、呼吸機能の低下や放射線肺炎などが残存し、改善が見込めない状態になっている場合も対象となります。
実際の受給事例
ここでは、肺がんで障害年金を受給された一般的な事例をご紹介します(個人情報保護のため、典型的なケースとして記載しています)。
【事例1】在宅酸素療法で障害厚生年金3級を受給されたケース
50代男性の方で、小細胞肺がんの治療後、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を合併し、在宅酸素療法を24時間実施することになりました。動作時の呼吸困難が著しく、日常生活に大きな制限がある状態でした。診断書に在宅酸素療法の実施状況と動脈血ガス分析の数値を詳細に記載していただき、障害厚生年金3級の認定を受けることができました。年間約58万円の年金を受給されています。
【事例2】化学療法中で障害厚生年金2級を受給されたケース
60代女性の方で、非小細胞肺がんステージIVと診断され、分子標的薬による化学療法を継続されていました。治療の副作用により、著しい倦怠感、食欲不振、体重減少(治療前より15kg減)があり、日常生活のほとんどに介助が必要な状態でした。主治医に全身状態の詳細と日常生活動作の制限を診断書に記載していただき、障害厚生年金2級の認定を受けました。年間約150万円の年金を受給されています。
【事例3】肺がん転移で複数障害として認定されたケース
50代男性の方で、肺がんが脳と骨に転移し、軽度の運動麻痺と腰痛による歩行困難がありました。呼吸機能の低下も認められたため、「その他の障害用」と「肢体の障害用」の2つの診断書を提出し、総合的な評価により障害厚生年金2級の認定を受けました。
これらの事例からわかるように、肺がんの病期(ステージ)や治療状況、症状の程度によって、障害年金を受給できる可能性は十分にあります。大切なのは、ご自身の症状を正確に把握し、適切に申請することです。
【肺がんで障害年金が認められる可能性のあるケース】
- ☑ 在宅酸素療法(HOT)を常時または労作時に実施している
- ☑ 階段の昇降や平地歩行で著しい息切れがある
- ☑ 化学療法の副作用で日常生活に介助が必要
- ☑ 抗がん剤治療により著しい倦怠感があり、ほとんど寝て過ごしている
- ☑ 体重が治療前と比べて10kg以上減少している
- ☑ 食欲不振が続き、十分な栄養が取れない状態
- ☑ 脳転移により運動麻痺や高次脳機能障害がある
- ☑ 骨転移により歩行や日常生活動作に支障がある
- ☑ 放射線肺炎などの後遺症で呼吸機能が低下している
- ☑ 治療のため頻繁な入院が必要で、仕事や日常生活が著しく制限されている
※上記のチェック項目に複数該当する方は、障害年金の対象となる可能性があります。まずは専門家にご相談されることをお勧めします。
障害年金の受給要件(3つの条件)
障害年金を受給するためには、3つの要件をすべて満たす必要があります。この要件は、肺がんに限らずすべての傷病に共通するものです。それぞれの要件について、肺がんのケースでの注意点を含めて詳しく解説します。
①初診日要件:初診日に年金に加入していること
初診日とは、障害の原因となった病気について、初めて医師の診療を受けた日のことです。この初診日に、国民年金、厚生年金、共済年金のいずれかに加入している必要があります。
肺がんの場合、初診日の特定には注意が必要です。以下のようなケースが考えられます。
【ケース1】健康診断で異常が見つかった場合
会社の健康診断や人間ドックで肺に異常が見つかり、その後医療機関を受診した場合、健康診断を受けた日ではなく、その結果を持って初めて医療機関を受診した日が初診日となります。ただし、健康診断の当日に医療機関で診察を受けた場合は、その日が初診日です。
【ケース2】風邪や咳で受診し、後に肺がんと判明した場合
「咳が続く」「息苦しい」といった症状で内科や呼吸器科を受診し、検査の結果、肺がんと診断されることがあります。この場合、最初に咳などの症状で受診した日が初診日となります。肺がんと確定診断された日ではありません。
【ケース3】他の病気の治療中に肺がんが見つかった場合
例えば、腰痛で整形外科を受診し、そこで「内科を受診してください」と言われて総合病院を受診した結果、肺がんが見つかった場合は、最初に腰痛で受診した日が初診日となる可能性があります。
初診日は、受給できる年金の種類(国民年金か厚生年金か)を決める重要な日です。初診日に厚生年金に加入していれば障害厚生年金を、国民年金に加入していれば障害基礎年金を受給できます。一般的に、障害厚生年金の方が受給額は高くなります。
初診日を証明するためには、「受診状況等証明書」という書類を初診の医療機関で作成してもらう必要があります。初診から長期間経過している場合、カルテが破棄されていることもありますので、早めの準備が大切です。
②保険料納付要件:一定期間の保険料を納付していること
障害年金は、保険料をきちんと納付している方が受け取れる制度です。初診日の前日時点で、以下のいずれかの条件を満たしている必要があります。
【原則】
初診日のある月の前々月までの公的年金加入期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせて3分の2以上あること。
【特例(救済措置)】
初診日において65歳未満であり、かつ初診日のある月の前々月から遡って1年間に保険料の未納期間がないこと。
※この特例は、初診日が2026年4月1日前にある場合に適用されます。
多くの方は、この特例の方が条件を満たしやすいでしょう。直近1年間に未納がなければ良いということです。
具体例で考えてみましょう
Aさん(45歳)が2024年6月15日に肺がんで初診を受けました。この場合、2023年4月から2024年4月までの1年間(前々月まで)に未納期間がなければ、保険料納付要件を満たします。
注意点として、「前々月まで」というのがポイントです。初診日のある月とその前月の納付状況は問われません。例えば、初診日が2024年6月15日なら、2024年4月分までの納付状況を確認します。
もし保険料の納付状況に不安がある場合は、お近くの年金事務所で照会することができます。電話での問い合わせも可能ですので、まずは確認されることをお勧めします。
③障害状態要件:障害認定日に基準を満たしていること
障害認定日とは、原則として初診日から1年6ヶ月を経過した日のことです。この日に、国が定める障害認定基準に該当する障害の状態にあることが必要です。
ただし、肺がんの場合、1年6ヶ月を待たずに障害認定日となる特例があります。
【肺がんで1年6ヶ月を待たない特例】
- 在宅酸素療法を開始した日:常時使用している場合、開始日が障害認定日となります
- 症状が固定した日:手術などを経て病状が固定し、それ以上の治療効果が期待できないと判断された場合
例えば、2023年6月に初診を受け、2023年12月から在宅酸素療法を開始した場合、2023年12月が障害認定日となり、1年6ヶ月を待たずに申請することができます。
また、障害認定日に障害の状態が軽かった場合でも諦める必要はありません。「事後重症請求」という方法があり、障害認定日以降に症状が悪化した場合、その時点で申請することができます。この場合、請求した月の翌月分から年金が支給されます。
一方、障害認定日に既に基準を満たしていたにもかかわらず、その時点で申請していなかった場合は、「遡及請求」により最大5年分の年金を遡って受け取ることができます。
【重要】障害年金の受給要件(3つの条件)
| 要件 | 内容 | 肺がんでの注意点 |
|---|---|---|
| ①初診日要件 | 初診日に国民年金、厚生年金、共済年金のいずれかに加入していること | 健康診断で異常発見→医療機関受診の場合、医療機関を受診した日が初診日。咳などの症状で最初に受診した日が初診日となる場合もあり。 |
| ②保険料納付要件 | 【原則】加入期間の3分の2以上が納付済または免除 【特例】初診日の前々月から遡って1年間未納なし |
多くの方は特例の方が満たしやすい。前々月までの1年間が対象。 |
| ③障害状態要件 | 障害認定日(原則:初診日から1年6ヶ月後)に障害認定基準を満たしていること | 在宅酸素療法開始日は特例的に障害認定日となる。事後重症請求も可能。 |
※3つの要件をすべて満たす必要があります。1つでも満たさない場合、残念ながら障害年金を受給することはできません。
これらの要件について、ご自身が該当するかどうか不安な場合は、年金事務所または障害年金専門の社会保険労務士にご相談ください。特に初診日の特定や保険料納付状況の確認は、専門家のアドバイスを受けることで、スムーズに進めることができます。
肺がんの障害認定基準を詳しく解説
障害年金が認定されるかどうかは、国が定めた障害認定基準を満たしているかによって決まります。肺がんの場合、主に「呼吸機能障害」と「全身状態の悪化」の2つの観点から評価されます。ここでは、それぞれの認定基準について詳しく解説します。
呼吸機能障害としての認定基準
肺がんによる呼吸機能の低下は、「呼吸器疾患による障害」として評価されます。認定にあたっては、検査数値と日常生活での呼吸困難の程度の両方が考慮されます。
【検査数値による評価】
主に以下の検査結果が重要となります。
- 動脈血ガス分析:酸素分圧(PaO2)、二酸化炭素分圧(PaCO2)の値
- スパイロメトリー検査:予測肺活量の%(%VC)、1秒率(FEV1.0%)
- 呼吸困難の程度:Hugh-Jones分類による評価
[要確認: 最新の動脈血ガス分析値の具体的な基準値(PaO2、PaCO2の等級別基準)については、日本年金機構の「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」の呼吸器疾患の項目で確認してください]
一般的に、動脈血酸素分圧(PaO2)が低いほど、また二酸化炭素分圧(PaCO2)が高いほど、呼吸機能の障害が重いと評価されます。
【呼吸困難の程度(Hugh-Jones分類)】
日常生活での呼吸困難の程度は、Hugh-Jones分類という国際的な指標で評価されます。
- I度:同年齢の健康者と同様の労作ができ、歩行、階段昇降も健康者並みにできる
- II度:同年齢の健康者と同様に歩行できるが、坂道や階段は健康者並みにはできない
- III度:平地でさえ健康者並みに歩けないが、自分のペースでなら1km程度歩ける
- IV度:休み休みでなければ50m以上歩けない
- V度:会話や着替えでも息切れする、外出できない
一般的に、Hugh-Jones分類でIV度以上の場合、障害年金の対象となる可能性が高くなります。III度の場合でも、検査数値や全身状態によっては認定される場合があります。
【在宅酸素療法の位置づけ】
在宅酸素療法(HOT)を実施している場合、それ自体が呼吸機能の著しい低下を示すものとして評価されます。
- 常時使用(24時間):障害厚生年金3級以上が認定される可能性が高い
- 労作時使用:使用頻度や日常生活への影響度により評価
在宅酸素療法を開始した日は、初診日から1年6ヶ月を待たずに障害認定日となりますので、早期の申請が可能です。
全身状態の評価基準
肺がんでは、呼吸機能の数値だけでなく、がんそのものや治療による全身状態の悪化も重要な評価ポイントとなります。これは「悪性新生物による障害」として評価されます。
【一般状態区分表による評価】
障害年金の認定では、「一般状態区分表」という指標が使われます。この表は、日常生活の制限の程度を5段階(ア・イ・ウ・エ・オ)で表したものです。
| 区分 | 日常生活の状態 | 等級の目安 |
|---|---|---|
| ア | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく発病前と同等にふるまえる | 対象外 |
| イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働、座業はできる(例:軽い家事、事務) | 3級程度 |
| ウ | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に介助が必要。日中の50%以上は起居しているが、それ以上の活動は制限される | 2級程度 |
| エ | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要。日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能 | 2級程度 |
| オ | 身のまわりのこともできず、常に介助が必要。終日就床を強いられ、活動の範囲がベッド周辺に限られる | 1級程度 |
※上記は目安であり、検査数値や症状の程度により総合的に判断されます。
【化学療法・放射線療法の副作用の評価】
肺がんの治療による副作用も、障害認定において重要な評価ポイントです。以下のような症状が日常生活に著しい支障をきたしている場合、認定の対象となります。
- 著しい倦怠感:1日のほとんどをベッドで過ごさざるを得ない状態
- 食欲不振と体重減少:治療前と比べて10kg以上の体重減少、栄養状態の悪化
- 吐き気・嘔吐:食事摂取が困難な状態
- 下痢:日常生活に支障をきたす頻度と程度
- 末梢神経障害:手足のしびれ、痛みによる生活動作の制限
- 貧血:輸血が必要な程度
- 感染症への易感染性:免疫力低下による頻繁な感染
これらの副作用が複数重なり、入浴や着替え、食事、移動などの基本的な日常生活動作に介助が必要な状態であれば、障害年金の対象となる可能性が高くなります。
【転移や再発の影響】
がんの転移や再発により、全身状態が悪化している場合も評価の対象となります。診断書には以下の情報が重要です。
- 転移の有無と部位
- 病期(ステージ)
- 治療歴(手術、化学療法、放射線療法の実施状況)
- 現在の治療方針(積極的治療か緩和ケアか)
- 予後の見通し
転移がある場合の認定
肺がんが他の臓器に転移している場合、転移先の障害も含めて総合的に評価されます。これにより、より重い等級が認定される可能性があります。
【転移部位別の評価】
脳転移がある場合
脳転移により、運動麻痺、言語障害、高次脳機能障害、けいれん発作などが生じている場合、「肢体の障害」や「精神の障害」としても評価されます。複数の診断書を提出することで、より適切な等級認定につながります。
骨転移がある場合
骨転移による痛みや骨折により、歩行困難や運動機能の制限がある場合、「肢体の障害」としても評価されます。特に脊椎転移により下肢の麻痺がある場合は重視されます。
肝転移がある場合
肝機能の低下により、黄疸、腹水、意識障害などが生じている場合、全身状態の悪化として評価されます。
【複数の診断書を使用する場合】
肺がんそのものによる呼吸機能障害や全身状態の悪化に加えて、転移による局所的な障害がある場合、複数の診断書様式を使用することがあります。
- 呼吸器疾患・全身状態:「血液・造血器・その他の障害用」診断書
- 脳転移による神経症状:「肢体の障害用」または「精神の障害用」診断書
- 骨転移による運動障害:「肢体の障害用」診断書
【併合認定の考え方】
複数の障害がある場合、「併合認定」という方法で等級が決定されます。例えば、それぞれが単独では3級程度の障害であっても、2つ以上の障害を併合することで2級に認定される場合があります。
ただし、併合認定の判断は複雑ですので、専門家である社会保険労務士に相談されることをお勧めします。
【障害等級の目安】
| 障害等級 | 呼吸機能障害 | 全身状態(一般状態区分) | 具体的な状態の例 |
|---|---|---|---|
| 1級 | 著しい呼吸困難、常時酸素療法が必要で動作がほとんどできない | オ(終日就床) | 身のまわりのことができず常に介助が必要。ほぼ寝たきりの状態。 |
| 2級 | 高度の呼吸困難、室内の歩行でも息切れ | ウ・エ(日中50%以上起居または就床) | 歩行や身のまわりのことはできるが、しばしば介助が必要。家庭内の軽い活動に制限される。 |
| 3級 | 中等度の呼吸困難、平地歩行は可能だが制限あり | イ(軽労働可能) | 歩行や軽労働はできるが、それ以上の活動は制限される。在宅酸素療法実施中など。 |
※障害厚生年金には3級がありますが、障害基礎年金(国民年金)には3級がなく、1級または2級のみです。
[要確認: 障害等級の具体的な基準については、日本年金機構の最新の「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」で確認してください]
認定基準は複雑で、個々のケースによって判断が異なります。ご自身の症状が基準に該当するかどうか不安な場合は、障害年金専門の社会保険労務士にご相談されることをお勧めします。
肺がん障害年金の申請方法と流れ
障害年金の申請は、必要な書類を揃えて年金事務所に提出するという流れになります。ここでは、肺がんで障害年金を申請する際の具体的な手順を、ステップごとに詳しく解説します。
申請の全体の流れ
障害年金の申請は、大きく分けて5つのステップで進みます。
【申請から受給までの流れ】
| STEP 1 | 初診日の確認と証明書の取得 → 受診状況等証明書を初診病院で取得 |
| ↓ | |
| STEP 2 | 診断書の作成依頼 → 主治医に障害年金用診断書の作成を依頼 |
| ↓ | |
| STEP 3 | 病歴・就労状況等申立書の作成 → ご自身で発病から現在までの経過を記載 |
| ↓ | |
| STEP 4 | 必要書類の準備と提出 → 年金事務所に申請書類一式を提出 |
| ↓ | |
| STEP 5 | 審査と結果通知 → 約3〜4ヶ月後に年金証書が届く |
申請から決定までの期間は、通常3〜4ヶ月程度かかります。ただし、書類に不備がある場合や、審査に時間がかかる場合は、それ以上かかることもあります。
また、障害認定日に遡って請求する「遡及請求」の場合、障害認定日時点と現在時点の2つの診断書が必要となるため、さらに時間がかかることがあります。
STEP1:初診日の確認と証明書の取得
申請の第一歩は、初診日を正確に特定することです。前述のとおり、初診日は受給できる年金の種類を決める重要な日ですので、慎重に確認する必要があります。
【初診日の特定方法】
まず、ご自身の記憶や診察券、お薬手帳などから、肺がんに関連する症状で最初に医療機関を受診した日を特定します。健康診断で異常が見つかった場合は、その結果を持って初めて医療機関を受診した日が初診日となります。
【受診状況等証明書の取得】
初診日が特定できたら、初診の医療機関で「受診状況等証明書」を作成してもらいます。この証明書は、年金事務所で用紙をもらうか、日本年金機構のホームページからダウンロードできます。
証明書の作成には、通常2週間〜1ヶ月程度の時間がかかります。また、作成料として3,000円〜5,000円程度の文書料がかかることが一般的です。
【初診病院がカルテを保存していない場合】
初診から5年以上経過している場合、カルテが破棄されていることがあります。この場合は、以下の方法で初診日を証明します。
- 2番目、3番目に受診した医療機関の診療録で証明
- 診察券、領収書、お薬手帳などの資料
- 第三者証明(家族や同僚など複数名の証言)
初診日の証明が困難な場合は、専門家である社会保険労務士に相談されることをお勧めします。
STEP2:診断書の作成依頼
障害年金の申請で最も重要なのが医師の診断書です。診断書の内容によって、認定されるかどうか、どの等級が認定されるかが大きく左右されます。
【使用する診断書様式】
肺がんの場合、基本的には「血液・造血器・その他の障害用」の診断書を使用します。ただし、以下のような場合は別の診断書も必要になります。
- 呼吸機能障害が主な障害の場合:「呼吸器疾患の障害用」診断書も検討
- 脳転移により運動麻痺がある場合:「肢体の障害用」診断書を併用
- 骨転移により歩行困難がある場合:「肢体の障害用」診断書を併用
どの診断書を使用すべきかは、症状によって異なりますので、年金事務所または社会保険労務士に相談されることをお勧めします。
【診断書作成依頼のタイミング】
診断書は、障害認定日以降の症状を記載してもらう必要があります。在宅酸素療法を開始している場合は開始日以降、そうでない場合は初診日から1年6ヶ月経過した日以降に作成を依頼します。
事後重症請求の場合は、請求する時点での症状を記載してもらいます。診断書に記載する日(現症日)は、作成を依頼する日から3ヶ月以内である必要があります。
【診断書作成に必要な期間と費用】
診断書の作成には、通常2週間〜1ヶ月程度の時間がかかります。病院によってはさらに時間がかかることもありますので、余裕を持って依頼することが大切です。
診断書料は、病院によって異なりますが、5,000円〜10,000円程度が一般的です。
【診断書依頼時の重要なポイント】
主治医に診断書を依頼する際は、以下の点を伝えることが重要です。
- 障害年金の申請であること
- 日常生活でどのような支障があるか(具体的に)
- 治療の副作用による症状(倦怠感、食欲不振など)
- 転移の有無と部位
- 就労状況の変化(休職中、退職など)
がんの診断書を初めて書く医師も多いため、障害年金の認定基準を理解していない場合があります。可能であれば、認定基準の資料や日常生活状況をまとめたメモを提供すると、より適切な診断書を作成してもらえる可能性が高まります。
STEP3:病歴・就労状況等申立書の作成
「病歴・就労状況等申立書」は、請求者ご自身が作成する書類です。発病から現在までの経過、日常生活や就労の状況を時系列で記載します。
【申立書の役割】
この申立書は、診断書の内容を補足し、請求者の生の声を審査担当者に伝える重要な書類です。診断書だけでは伝わりにくい日常生活の具体的な困難さを記載します。
【記載のポイント】
- 発病時の症状と受診のきっかけ
- 治療の経過(手術、化学療法、放射線療法など)
- 日常生活での具体的な困難(入浴、着替え、食事、移動など)
- 就労状況の変化(休職、退職、勤務時間の短縮など)
- 家族の介助の状況
- 治療の副作用による生活への影響
重要なのは、診断書の内容と整合性を持たせることです。診断書に記載されている症状について、より詳しく説明するというイメージで作成します。
例えば、診断書に「化学療法による倦怠感あり」と記載されている場合、申立書には「抗がん剤治療後は著しい倦怠感があり、1日のほとんどをベッドで横になって過ごしている。起き上がるのも辛く、トイレに行くのにも休憩が必要な状態」というように、具体的に記載します。
STEP4:必要書類の準備と提出
診断書と申立書が揃ったら、その他の必要書類を準備して年金事務所に提出します。
【必要書類一覧】
| 書類名 | 取得先・作成者 | 注意点 |
|---|---|---|
| 年金請求書 | 年金事務所 | 障害基礎年金用または障害厚生年金用 |
| 診断書 | 主治医 | 現症日が請求日から3ヶ月以内 |
| 受診状況等証明書 | 初診病院 | 初診病院と診断書作成病院が異なる場合のみ |
| 病歴・就労状況等申立書 | 請求者本人 | 発病から現在までの経過を記載 |
| 年金手帳または基礎年金番号通知書 | 本人保管 | 紛失時は年金事務所に相談 |
| 戸籍謄本または戸籍抄本 | 市区町村役場 | 発行から6ヶ月以内のもの |
| 住民票 | 市区町村役場 | 世帯全員分、発行から6ヶ月以内 |
| 預金通帳のコピー | 本人保管 | 口座情報が確認できるページ |
| 所得証明書 | 市区町村役場 | 障害基礎年金(20歳前傷病)の場合のみ |
| レントゲンフィルム | 主治医 | 呼吸器疾患の診断書の場合必要 |
※配偶者や子どもがいる場合は、追加の書類(戸籍謄本、世帯全員の住民票、子どもの収入証明など)が必要になります。詳細は年金事務所でご確認ください。
書類が揃ったら、お住まいの地域を管轄する年金事務所に提出します。郵送での提出も可能ですので、体調が優れない場合は郵送をご利用ください。
STEP5:審査と結果通知
申請書類を提出すると、日本年金機構の審査部門で書類審査が行われます。審査は書類のみで行われ、面接や診察はありません。
審査期間は通常3〜4ヶ月程度ですが、申請が集中する時期や、書類に不備がある場合はさらに時間がかかることがあります。
審査が完了すると、認定の場合は「年金証書」と「年金決定通知書」が、不支給の場合は「不支給決定通知書」が郵送されます。
認定された場合、年金は請求した月の翌月分から支給されます(遡及請求の場合を除く)。実際の振込は、年金証書到着後、最初の支給月(偶数月の15日)に行われます。
当事務所では、診断書作成のサポートから書類準備、申請手続きまで一貫してサポートしています。肺がんをはじめとする複雑なケースにも対応した実績がございます。医師への説明資料の作成や、診断書の内容確認、申立書の作成支援など、受給の可能性を高めるための専門的なサポートを提供いたします。
申請手続きでお悩みの方、ご自身での申請に不安がある方は、まずは無料相談をご利用ください。あなたの状況に応じて、最適な申請方法をご提案いたします。
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診断書作成で押さえるべき重要ポイント
障害年金の審査は書類のみで行われるため、医師が作成する診断書の内容が認定の可否を左右します。しかし、がんの診断書を書いた経験がない医師も多く、障害年金の認定基準を十分に理解していない場合があります。ここでは、適切な診断書を作成してもらうための重要なポイントを解説します。
肺がんの診断書は「血液・造血器・その他の障害用」を使用
障害年金の診断書には8種類の様式があり、障害の種類によって使い分けます。肺がんの場合、基本的には「血液・造血器・その他の障害用」の診断書を使用します。
この診断書では、以下の内容を記載してもらいます。
- 悪性新生物の種類と部位(肺がんの組織型、ステージ)
- 転移の有無と部位
- 治療の経過(手術、化学療法、放射線療法の実施状況)
- 現在の症状と治療状況
- 一般状態区分(ア・イ・ウ・エ・オのいずれか)
- 日常生活動作の状況
- 予後の見通し
【局所障害がある場合は別の診断書も併用】
肺がんによる局所的な障害がある場合は、追加で別の診断書様式を使用することがあります。
- 呼吸機能障害が主な障害:呼吸器疾患の診断書も検討(動脈血ガス分析値、スパイロメトリー検査結果などを記載)
- 脳転移による運動麻痺や言語障害:「肢体の障害用」または「精神の障害用」診断書
- 骨転移による歩行困難:「肢体の障害用」診断書
- 声帯麻痺や嚥下障害:「そしゃく・嚥下・言語機能の障害用」診断書
どの診断書を使用すべきかは、症状によって異なりますので、事前に年金事務所や社会保険労務士に相談されることをお勧めします。
医師に正確に伝えるべき症状
診断書を依頼する際、医師に正確に症状を伝えることが非常に重要です。医師は診察時の様子から判断しますが、短い診察時間では日常生活の全体像を把握しきれないことがあります。
特に以下の点について、具体的に伝えることが大切です。
【呼吸困難の具体的な程度】
- どのような動作で息切れがするか(階段昇降、平地歩行、室内移動、着替えなど)
- 何段の階段で休憩が必要か
- 平地を何メートル歩くと息切れがするか
- 会話や食事でも息切れがあるか
- 夜間の呼吸困難で目が覚めることがあるか
【日常生活動作の制限】
- 入浴:一人でできるか、介助が必要か、シャワーのみか
- 着替え:一人でできるか、休憩が必要か
- 食事:自分で食べられるか、食事の準備はできるか
- トイレ:一人で行けるか、間に合わないことがあるか
- 移動:室内・屋外の移動はどの程度可能か
- 家事:炊事、洗濯、掃除はできるか
【化学療法・放射線療法の副作用】
- 倦怠感:1日のうち何時間くらい横になっているか
- 食欲不振:1日の食事量、体重の変化(治療前と比べて何kg減少)
- 吐き気・嘔吐:頻度と程度、食事が取れない日があるか
- 下痢:1日の回数、外出への影響
- 手足のしびれ:物を落とす、つまずく、ボタンがかけられないなど
- 痛み:部位、程度、日常生活への影響
【就労状況の変化】
- 発病前の就労状況(職種、勤務時間、業務内容)
- 現在の就労状況(休職中、退職、在宅勤務、時短勤務など)
- 働けなくなった理由や時期
- 職場での配慮や制限
診断書記載の際に医師と共有すべき情報
がんの診断書を初めて書く医師も多いため、障害年金の認定基準について情報を共有することが、適切な診断書作成につながります。
【認定基準の資料提供】
日本年金機構のホームページから「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」をダウンロードし、悪性新生物の認定基準のページ(特に一般状態区分表)をコピーして、医師にお渡しすることをお勧めします。
また、社会保険労務士に依頼している場合は、社労士から医師への依頼文書や説明資料を作成してもらえることがあります。
【日常生活状況をまとめたメモの提供】
日常生活でどのような困難があるかを、時系列や項目別にまとめたメモを作成し、診察時に医師に提出すると良いでしょう。特に以下の内容を記載します。
- 1日の生活の流れ(起床時刻、活動できる時間、就寝時刻)
- できないこと、困っていること
- 家族の介助が必要なこと
- 発病前との変化
【検査データの確認】
診断書には、動脈血ガス分析、スパイロメトリー検査、画像検査などの結果を記載する欄があります。これらの検査を最近受けていない場合は、診断書作成前に検査を受けることができないか、主治医に相談してみましょう。
診断書作成で陥りがちな失敗例
適切な診断書が作成されないと、本来は認定されるべき状態であっても不支給となってしまうことがあります。以下のような失敗例に注意が必要です。
【失敗例1】症状が軽く記載されてしまう
医師は診察室での様子から判断するため、「普通に歩いて来院している」「会話ができている」ことから、日常生活の困難さを過小評価してしまうことがあります。診察時の様子と、自宅での日常生活の状態は大きく異なる場合があることを、しっかり伝えましょう。
【失敗例2】転移の記載が不十分】
転移の有無と部位は、障害の程度を判断する重要な情報です。「他臓器転移あり」だけでなく、具体的な部位(脳、骨、肝臓など)と、それによる症状を詳しく記載してもらう必要があります。
【失敗例3】一般状態区分の記載が実態と合わない】
診断書には「一般状態区分」を記載する欄があり、ア〜オの5段階で評価します。この区分は障害等級の判断に大きく影響しますが、医師が実態と異なる軽い区分を選んでしまうことがあります。日常生活の状況を詳しく伝え、適切な区分を選んでもらいましょう。
【失敗例4】検査データの添付漏れ】
呼吸器疾患の診断書の場合、レントゲンフィルムや画像データ、動脈血ガス分析の結果などの添付が必要です。これらが添付されていないと、審査が遅れたり、追加資料を求められたりすることがあります。
【失敗例5】治療の副作用が十分に記載されていない】
化学療法の副作用による倦怠感、食欲不振、下痢などは、がんそのものによる症状と同様に評価されます。しかし、これらの副作用症状が診断書に十分に記載されないことがあります。副作用の具体的な内容と日常生活への影響を、必ず医師に伝えましょう。
【医師に伝えるべき症状チェックリスト】
【呼吸困難について】
- ☑ 階段を何段昇ると息切れするか
- ☑ 平地を何メートル歩けるか
- ☑ 室内の移動でも息切れがあるか
- ☑ 会話や食事で息切れするか
- ☑ 在宅酸素療法を使用しているか(常時 or 労作時)
【日常生活について】
- ☑ 入浴は一人でできるか
- ☑ 着替えに介助が必要か
- ☑ 食事の準備はできるか
- ☑ トイレは一人で行けるか
- ☑ 1日のうち何時間ベッドで過ごしているか
- ☑ 外出はどの程度可能か
- ☑ 家事(炊事、洗濯、掃除)はできるか
【治療の副作用について】
- ☑ 倦怠感の程度と持続時間
- ☑ 体重の変化(治療前から何kg減少)
- ☑ 食事量(1日何回、どの程度食べられるか)
- ☑ 吐き気・嘔吐の頻度
- ☑ 下痢の回数(1日何回)
- ☑ 手足のしびれによる生活への支障
- ☑ 痛みの部位と程度
【転移・病状について】
- ☑ 転移の有無と部位
- ☑ 転移による症状(痛み、麻痺など)
- ☑ ステージ(病期)
- ☑ 現在の治療方針
【就労状況について】
- ☑ 現在の就労状況(休職中、退職、在宅勤務など)
- ☑ 働けなくなった時期と理由
- ☑ 発病前の職種と業務内容
- ☑ 職場での配慮や制限
※このチェックリストを参考に、診察前にメモを作成しておくと、医師に漏れなく伝えることができます。
診断書の内容は、障害年金の認定に直結する非常に重要なものです。ご自身での対応に不安がある場合は、障害年金専門の社会保険労務士に相談し、医師への説明資料の作成や診断書内容の確認をサポートしてもらうことをお勧めします。
受給できる障害年金の金額
障害年金を受給すると、実際にいくらもらえるのでしょうか。受給額は、障害等級と加入していた年金の種類(国民年金か厚生年金か)によって異なります。ここでは、具体的な金額の目安をご説明します。
障害基礎年金の金額
障害基礎年金は、国民年金に加入している方が受給できる年金です。初診日に国民年金に加入していた方、または20歳前に初診日がある方が対象となります。
[要確認: 以下の金額は令和7年度(2025年度)の基準額です。最新の金額は日本年金機構のホームページでご確認ください]
【令和7年度の障害基礎年金額】
- 1級:年額約1,020,000円(月額約85,000円)
- 2級:年額約816,000円(月額約68,000円)
※障害基礎年金には3級がありません。1級または2級のみです。
【子の加算額】
障害基礎年金を受給している方に18歳到達年度の末日までの子ども(障害がある場合は20歳未満)がいる場合、子の人数に応じて加算があります。
- 第1子・第2子:各年額約234,800円
- 第3子以降:各年額約78,300円
例えば、2級の障害基礎年金を受給している方に18歳未満の子どもが2人いる場合、年額約1,285,600円(約816,000円 + 約234,800円 × 2)となります。
障害厚生年金の金額
障害厚生年金は、初診日に厚生年金に加入していた方が受給できる年金です。障害基礎年金に上乗せして支給されるため、受給額は障害基礎年金よりも高くなります。
【障害厚生年金の構成】
- 1級・2級:障害基礎年金 + 障害厚生年金(報酬比例部分)
- 3級:障害厚生年金(報酬比例部分)のみ
【報酬比例部分とは】
障害厚生年金の報酬比例部分は、厚生年金加入期間中の平均給与(標準報酬月額)と加入期間に基づいて計算されます。そのため、個人によって金額が異なります。
一般的に、以下のような傾向があります。
- 加入期間が長いほど年金額が多い
- 平均給与が高いほど年金額が多い
- ただし、加入期間が短い場合(初診日までの期間が短い場合)でも、300月(25年)の最低保障があります
【障害厚生年金3級の最低保障額】
障害厚生年金3級には最低保障額が設けられており、報酬比例部分が最低保障額を下回る場合でも、最低保障額が支給されます。
[要確認: 令和7年度の3級最低保障額は約612,000円です。最新の金額は日本年金機構のホームページでご確認ください]
【配偶者加給年金額】
障害厚生年金の1級または2級を受給している方に、65歳未満の配偶者がいる場合、配偶者加給年金額が加算されます。
配偶者加給年金額:年額約234,800円
※配偶者自身が老齢厚生年金(加入期間20年以上)や障害年金を受給している場合は、加給年金額は支給されません。
具体的な受給額のシミュレーション
実際の受給額のイメージがつかめるよう、いくつかのケースでシミュレーションしてみます。
【ケース1】厚生年金加入・2級認定・配偶者あり・子ども2人
50代男性、平均的な給与(生涯平均月収40万円程度)、厚生年金加入期間25年の場合
- 障害基礎年金2級:約816,000円
- 障害厚生年金2級(報酬比例部分):約700,000円(推定)
- 配偶者加給年金額:約234,800円
- 子の加算(2人):約469,600円
- 合計:年額約2,220,000円(月額約185,000円)
【ケース2】国民年金加入・2級認定・単身
60代女性、自営業で国民年金に加入していた場合
- 障害基礎年金2級:約816,000円
- 合計:年額約816,000円(月額約68,000円)
【ケース3】厚生年金加入・3級認定・単身
50代男性、平均的な給与(生涯平均月収35万円程度)、厚生年金加入期間20年の場合
- 障害厚生年金3級(報酬比例部分):約650,000円(推定)
- 合計:年額約650,000円(月額約54,000円)
※報酬比例部分の金額は個人の給与や加入期間によって大きく異なりますので、あくまで目安としてご参考ください。正確な金額は、年金事務所でねんきん定期便や年金記録をもとに試算してもらうことができます。
その他の経済的メリット
障害年金を受給することで、年金そのもの以外にも経済的なメリットがあります。
【遡及請求による一時金】
障害認定日に既に基準を満たしていたにもかかわらず、その時点で申請していなかった場合、「遡及請求」により最大5年分の年金を遡って一時金として受け取ることができます。
例えば、2級で年額150万円の場合、5年分で750万円が一時金として支給されます。これは、経済的に困窮している方にとって大きな支えとなります。
【国民年金保険料の免除】
障害年金(1級または2級)を受給している間は、国民年金保険料の納付が法定免除となります。届出をすることで、保険料の支払いが免除され、その期間も将来の老齢年金の受給資格期間に算入されます。
※免除期間は年金額の計算では2分の1として計算されます。将来の年金額を増やしたい場合は、免除を受けずに納付することも選択できます。
【障害者控除の適用】
障害年金を受給していることで、所得税や住民税の障害者控除を受けられる場合があります。また、各自治体によっては、医療費助成や公共交通機関の割引などの制度が利用できることもあります。
【年金生活者支援給付金】
障害年金(1級または2級)を受給している方で、前年の所得が一定額以下の場合、「年金生活者支援給付金」が支給されます。
- 1級:月額約6,638円(年額約79,656円)
- 2級:月額約5,310円(年額約63,720円)
[要確認: 上記の金額は令和7年度の基準です。最新の金額と所得制限については日本年金機構のホームページでご確認ください]
【障害等級別の年金額一覧(令和7年度・目安)】
| 等級 | 障害基礎年金 (国民年金) |
障害厚生年金 (厚生年金) |
加算額 |
|---|---|---|---|
| 1級 | 年額約102万円 (月額約8.5万円) |
基礎年金 + 報酬比例部分×1.25倍 ※報酬比例部分は個人差あり |
子の加算:第1子・第2子 各約23.5万円/年、第3子以降 各約7.8万円/年 配偶者加給年金:約23.5万円/年(厚生年金のみ) |
| 2級 | 年額約81.6万円 (月額約6.8万円) |
基礎年金 + 報酬比例部分 ※報酬比例部分は個人差あり |
子の加算:第1子・第2子 各約23.5万円/年、第3子以降 各約7.8万円/年 配偶者加給年金:約23.5万円/年(厚生年金のみ) |
| 3級 | 支給なし | 報酬比例部分のみ 最低保障額:約61.2万円/年 ※報酬比例部分は個人差あり |
加算なし |
※報酬比例部分は、厚生年金加入期間中の平均給与(標準報酬月額)と加入期間によって個人ごとに異なります。
※上記の金額は令和7年度の基準です。年度によって変動しますので、最新情報は日本年金機構のホームページでご確認ください。
受給できる金額は個人の状況によって大きく異なります。ご自身の場合にいくら受給できるかを知りたい方は、年金事務所で試算してもらうか、障害年金専門の社会保険労務士にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
肺がんで障害年金を申請される方から、よく寄せられる質問にお答えします。
働きながらでも受給できますか?
はい、働きながらでも受給できる可能性があります。障害年金の認定は、就労の有無だけで判断されるわけではありません。障害の状態と日常生活の制限の程度が重要な判断基準となります。
例えば、以下のようなケースでは、就労していても障害年金が認定される可能性があります。
- 在宅勤務や時短勤務で、フルタイムでは働けない状態
- 職場の大幅な配慮(軽作業への配置転換、頻繁な休憩など)により何とか就労している
- 週に数日、短時間のみの勤務
- 自営業で自分のペースで仕事をしているが、収入は大幅に減少している
ただし、フルタイムで通常業務をこなせている場合は、認定が難しくなる傾向があります。就労状況と障害の程度の両方を総合的に評価されますので、詳しくは専門家にご相談ください。
治療中でも申請できますか?
はい、治療中でも申請できます。障害年金は、症状が完全に固定していなくても申請可能です。化学療法や放射線療法を継続中の方、症状が変動する方でも、申請することができます。
障害認定日(原則として初診日から1年6ヶ月後)の時点で基準を満たしていれば申請できますし、その時点で基準を満たしていなくても、「事後重症請求」という方法で現在の状態をもとに申請することができます。
むしろ、症状が重い時期を逃さず、適切なタイミングで申請することが大切です。
一度不支給になったら再申請できませんか?
いいえ、再申請は可能です。一度不支給になったとしても、その後症状が悪化した場合や、新たな障害が加わった場合は、再度申請することができます。
また、不支給決定に納得できない場合は、決定通知を受け取った日の翌日から3ヶ月以内に「審査請求」という不服申立てをすることもできます。
初回の申請で不支給になった理由を分析し、診断書の内容を改善したり、新たな検査データを追加したりすることで、再申請で認定される可能性があります。諦めずに、障害年金専門の社会保険労務士に相談されることをお勧めします。
申請から受給までどのくらいかかりますか?
通常、申請から結果通知まで3〜4ヶ月程度かかります。ただし、書類に不備がある場合や、審査に時間がかかる場合は、さらに長くなることがあります。
年金が認定された場合、実際の振込は年金証書が届いた後、最初の支給月(偶数月の15日)に行われます。年金は請求した月の翌月分から支給されますが、遡及請求の場合は障害認定日まで遡って支給されます。
できるだけ早く受給したい場合は、書類の不備がないよう慎重に準備することが大切です。
自分で申請するか社労士に依頼するか迷っています
それぞれにメリット・デメリットがあります。
【自分で申請する場合】
メリット:費用がかからない、自分のペースで進められる
デメリット:手続きが複雑で時間がかかる、診断書の内容が不十分になるリスクがある、認定基準を理解するのが難しい
【社労士に依頼する場合】
メリット:専門知識に基づく適切なサポート、医師への説明資料の作成、診断書内容の確認、認定率の向上が期待できる、手続きの負担軽減
デメリット:費用がかかる(成功報酬型が一般的)
特に以下のような場合は、専門家への依頼をお勧めします。
- 初診日の証明が困難
- 複数の障害がある(転移など)
- 過去に不支給になった経験がある
- 治療で体力・気力が消耗しており、手続きの負担を軽減したい
- 確実に受給したい
当事務所では初回相談無料ですので、まずはお気軽にご相談いただき、ご自身の状況に合った方法を一緒に検討させていただければと思います。
【よくある質問 一覧】
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 働きながらでも受給できますか? | はい、可能です。就労の有無だけでなく、障害の状態と日常生活の制限が総合的に評価されます。在宅勤務、時短勤務、職場の配慮を受けている場合なども認定される可能性があります。 |
| 治療中でも申請できますか? | はい、できます。症状が固定していなくても、化学療法や放射線療法の治療中でも申請可能です。事後重症請求という方法もあります。 |
| 一度不支給になったら再申請できませんか? | 再申請は可能です。症状が悪化した場合や新たな障害が加わった場合は再度申請できます。また、3ヶ月以内であれば審査請求(不服申立て)も可能です。 |
| 申請から受給までどのくらいかかりますか? | 通常3〜4ヶ月程度です。書類に不備があると長くなることがあります。年金は請求した月の翌月分から支給されます(遡及請求を除く)。 |
| 自分で申請するか社労士に依頼するか迷っています | 自分で申請すれば費用はかかりませんが、手続きが複雑です。社労士に依頼すると費用はかかりますが、専門的なサポートで認定率の向上が期待できます。初診日の証明が困難、複数の障害がある、過去に不支給になった経験がある場合は専門家への依頼をお勧めします。 |
| 障害年金を受給すると老齢年金は減りますか? | いいえ、減りません。障害年金と老齢年金は別の制度です。障害年金を受給しても、将来の老齢年金には影響しません。 |
| 家族に障害年金を受給していることを知られたくないのですが | 年金証書などの書類は本人宛に郵送されます。振込も本人名義の口座です。ただし、住民票や所得証明書で家族が確認する可能性はあります。 |
| 障害年金は課税されますか? | いいえ、障害年金は非課税です。所得税・住民税はかかりません。確定申告も不要です。 |
※その他のご質問がある場合は、お気軽に当事務所にお問い合わせください。
まとめ
この記事では、肺がんで障害年金を受給するために必要な情報を詳しく解説してきました。最後に、重要なポイントをまとめます。
肺がんでも障害年金は受給できます。在宅酸素療法を実施されている方、化学療法の副作用で日常生活に著しい支障がある方、呼吸機能が低下して思うように動けない方など、多くのケースで障害年金の対象となります。「肺がんだから無理」「まだ歩けるから対象外」と諦める必要はありません。
受給するためには、3つの要件(初診日要件・保険料納付要件・障害状態要件)をすべて満たすことが必要です。特に初診日の特定は、受給できる年金の種類を決める重要なポイントですので、早めに確認しておきましょう。
申請において最も重要なのは、医師が作成する診断書の内容です。がんの診断書を書いた経験がない医師も多いため、認定基準の資料を提供したり、日常生活の困難さを具体的に伝えたりすることで、より適切な診断書を作成してもらうことができます。呼吸困難の程度、化学療法の副作用、転移の状況、日常生活動作の制限などを、漏れなく医師に伝えましょう。
在宅酸素療法を開始している場合は、初診日から1年6ヶ月を待たずに申請できるという特例があります。また、事後重症請求という方法もありますので、障害認定日の時点で申請していなかった方も、諦めずに申請を検討してください。
受給額は、障害等級と加入していた年金の種類によって異なりますが、障害厚生年金の2級で年間150万円〜200万円程度、3級で年間60万円〜100万円程度が一般的な目安です。遡及請求により最大5年分を一時金として受け取れる場合もあります。
肺がんの治療は、身体的にも精神的にも、そして経済的にも大きな負担となります。治療費や生活費の不安を抱えながら、病気と向き合っていらっしゃる方も多いでしょう。障害年金は、あなたがこれまで納めてきた保険料に基づいて受け取る正当な権利です。決して遠慮する必要はありません。
私たち清水総合法務事務所は、「諦めない障害年金」をコンセプトに、神戸を中心に障害年金申請のサポートを行っています。「自分の症状では無理かもしれない」「申請が複雑で諦めていた」という方も、まずは一度ご相談ください。複雑なケースでも、適切な準備と専門知識があれば、受給の可能性は高まります。
経済的な負担を少しでも軽減し、治療に専念できる環境を整えること。それが障害年金制度の本来の目的です。情報を知ることが、希望への第一歩です。一人で悩まず、専門家にご相談ください。
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当事務所は、肺がんをはじめとする障害年金申請を専門的にサポートしています。
【当事務所の強み】
- 障害年金専門の社会保険労務士:年金制度に精通し、最新の認定基準を熟知しています
- 神戸・兵庫県内の地域密着:地域の医療機関や年金事務所との連携実績があり、対面でのご相談も可能です
- 複雑なケースへの対応実績:肺がんの転移による複数障害、初診日の証明が困難なケース、過去に不支給になった方の再申請など、難しいケースにも対応しています
- 診断書作成の充実したサポート:医師への説明資料の作成、診断書内容の確認、認定基準に沿った記載のアドバイスを行います
- 「諦めない障害年金」の理念:どんなに複雑なケースでも、可能性がある限り最善を尽くします
【このような方はお気軽にご相談ください】
- 自分の症状で障害年金が受給できるか知りたい
- 申請方法がわからない、何から始めればいいかわからない
- 医師への診断書依頼の仕方がわからない
- 自分で申請したが不支給になった
- 初診日の証明が難しい
- 転移があり複数の障害がある
- 治療で体力がなく、手続きの負担を軽減したい
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初回相談は無料です。お電話、メール、お問い合わせフォームのいずれかでご連絡ください。まずはあなたの状況をお聞かせいただき、受給の可能性や申請方法について丁寧にご説明いたします。
肺がんの治療と向き合いながら、経済的な不安を少しでも軽減したいとお考えの方、障害年金について詳しく知りたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。あなたの状況に応じて、最適な申請方法をご提案いたします。
清水総合法務事務所
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