ペースメーカーを装着されて、日常生活が大きく変わったという方も多いのではないでしょうか。「重いものが持てなくなった」「疲れやすくなった」「仕事での配慮が必要になった」など、以前とは違う生活を送る中で、経済的な不安を感じている方もいらっしゃると思います。
実は、ペースメーカーを装着された方は、障害年金を受給できる可能性があります。原則として3級(年額約58万円)に該当し、条件によっては2級(年額78万円以上)に認定されることもあります。「まだ働いているから無理では?」「手続きが複雑そう」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、働きながらでも受給は可能ですし、専門家のサポートを受けることで申請の負担を軽減できます。
この記事では、ペースメーカー装着で障害年金を受給するために知っておくべき情報を、障害年金専門の社会保険労務士が分かりやすく解説します。
この記事で分かること:
- ペースメーカー装着で受給できる障害年金の種類と金額
- 働きながらでも受給できる理由と実際の事例
- 3級と2級の認定基準の違いと、それぞれの条件
- 国民年金加入者が2級を目指すための方法
- 障害年金を受給するための3つの必須要件
- 申請手続きの具体的な流れと必要書類
- 社労士に依頼するメリットと費用の考え方
- 更新時の注意点と等級を維持する方法
当事務所は神戸を拠点に、「諦めない障害年金」をコンセプトとして、障害年金申請のサポートを専門に行っています。ペースメーカーを装着された方の申請実績も多数あり、「国民年金だから無理だと思っていた」という方が2級を受給できたケースや、「手続きが複雑で諦めかけていた」という方を支援してきた経験があります。
社会保険労務士として、制度の仕組みを正確にお伝えするとともに、一人ひとりの状況に寄り添ったサポートを心がけています。
障害年金の申請について、少しでもご不安な点やご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。お電話(050-7124-5884)、メール(mail@srkobe.com)、またはお問い合わせフォームからご連絡いただけます。
ペースメーカー装着で障害年金は受給できる
結論から申し上げますと、ペースメーカーを装着された方は、障害年金を受給できます。心疾患の障害認定基準において、ペースメーカーやICD(植込み型除細動器)を装着した場合は、原則として障害等級3級以上に該当すると明確に定められています。
「まだ働いているから無理ではないか」「そこまで重症ではないから対象外では」と思われる方もいらっしゃいますが、ペースメーカーの場合は装着の事実そのものが重視されるため、就労状況に関わらず受給できる可能性が高いのです。
ペースメーカー装着は障害年金の認定対象
国民年金・厚生年金保険の障害認定基準では、心疾患による障害について次のように定められています。
心臓ペースメーカー、又はICD(植込み型除細動器)を装着したものは、障害等級3級と認定する。CRT(心臓再同期医療機器)、CRT-D(除細動器機能付き心臓再同期医療機器)を装着したものは、障害等級2級と認定する。
つまり、ペースメーカーを装着した時点で、原則として障害年金の対象になるということです。これは他の多くの疾患とは異なる特徴で、症状の重さだけでなく、医療機器の装着という客観的な事実が認定の基準となっています。
房室ブロック、洞不全症候群、心房細動(心不全を合併している場合)など、ペースメーカー装着が必要となった疾患の種類に関わらず、装着の事実があれば認定対象となります。
働きながらでも受給できる理由
障害年金と聞くと「仕事ができないほど重症でないと受給できない」と思われる方が多いのですが、ペースメーカー装着の場合、就労の有無や程度は基本的に問われません。
なぜなら、ペースメーカーは心臓の重要な機能を補助する医療機器であり、装着していること自体が日常生活に一定の制限があることを意味するからです。実際に、フルタイムで勤務されながら障害年金を受給されている方も数多くいらっしゃいます。
ただし、CRT・CRT-Dを装着された方の場合は、更新時(1〜2年後)に症状の安定度が評価されます。この場合でも、就労していることが直ちに不利になるわけではありませんが、職場での配慮事項や日常生活での制限を診断書にしっかり記載してもらうことが大切です。
営業職で外回りをされている方でも「重い荷物は持てない」「階段の昇降で息切れがする」「時差出勤で満員電車を避けている」といった具体的な制限や配慮があれば、それらを診断書や申立書に記載することで、適切な評価を受けることができます。
受給できる金額の目安
ペースメーカー装着で受給できる障害年金の金額は、等級と加入している年金制度によって異なります。
3級の場合(通常のペースメーカー、ICD):
- 障害厚生年金のみ:年額約58万円(最低保障額)※報酬比例で増額される場合あり
- 初診日に国民年金加入の場合:3級では受給不可(2級以上が必要)
2級の場合(CRT、CRT-D、または上位等級認定):
- 障害基礎年金:年額約78万円
- 障害厚生年金:報酬比例の年金額が上乗せ
- 配偶者加給年金:年額約22万円(生計維持している65歳未満の配偶者がいる場合)
例えば、2級で配偶者がいる場合、障害基礎年金78万円+障害厚生年金(報酬による)+配偶者加給年金22万円で、年額100万円以上を受給できるケースも珍しくありません。
下の表で、等級ごとの受給額をまとめましたので、ご参照ください。
【重要】障害等級と受給額の目安(令和6年度)
| 障害等級 | 年金の種類 | 年額(目安) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1級 | 障害基礎年金 | 約97万円 | 2級の1.25倍 |
| 障害厚生年金 | 報酬比例×1.25 | 基礎年金に上乗せ | |
| 2級 | 障害基礎年金 | 約78万円 | 国民年金でも受給可 |
| 障害厚生年金 | 報酬比例の年金額 | 基礎年金に上乗せ | |
| 配偶者加給年金 | 約22万円 | 条件を満たす配偶者がいる場合 | |
| 3級 | 障害厚生年金のみ | 約58万円〜 | 初診日に厚生年金加入が必須 |
※金額は令和6年度の基準です。毎年度改定されますので、最新情報は日本年金機構のウェブサイトでご確認ください。
※障害厚生年金の報酬比例部分は、加入期間と平均報酬額によって個人差があります。
※配偶者加給年金は、生計維持関係にある65歳未満の配偶者がいる場合に加算されます(配偶者の年収が850万円未満など条件あり)。
ペースメーカーの種類と障害等級の関係
ペースメーカーと一口に言っても、実はいくつかの種類があり、装着する機器の種類によって認定される障害等級が異なります。ここでは、各機器の特徴と、それぞれに対応する障害等級について詳しく解説します。
特に、初診日に国民年金に加入されていた方にとっては、3級では受給できないため、2級に該当するかどうかが重要なポイントとなります。
通常型ペースメーカー・ICD【原則3級】
通常型ペースメーカーは、心臓の拍動が遅くなる徐脈性不整脈の治療に使用される医療機器です。心臓が適切なリズムで拍動しない場合に、電気刺激を送って心拍を調整します。
主な対象疾患:
- 完全房室ブロック(心房と心室の電気信号が途絶える状態)
- 高度房室ブロック
- 洞不全症候群(心臓の電気信号を出す部分の機能低下)
- 徐脈性心房細動
ICD(植込み型除細動器)は、心室頻拍や心室細動といった危険な頻脈性不整脈を治療する機器です。ペースメーカー機能に加えて、致命的な不整脈が起きた際に電気ショックを与えて正常なリズムに戻す機能を持っています。
主な対象疾患:
- 心室頻拍
- 心室細動
- ブルガダ症候群
- 心筋梗塞後の不整脈
- 肥大型心筋症
これらの機器を装着した場合、障害認定基準では原則として3級に該当します。したがって、初診日に厚生年金に加入していた方は、障害厚生年金3級として年額約58万円以上を受給できます。
ただし、初診日に国民年金に加入していた方(自営業、専業主婦など)の場合、障害基礎年金には3級がないため、この段階では受給対象となりません。しかし、後述するように、条件を満たせば2級以上に認定される可能性があります。
CRT・CRT-D【原則2級】
CRT(心臓再同期医療機器)は、重症心不全に対する治療法として用いられる特殊なペースメーカーです。通常のペースメーカーが心拍数を調整するのに対し、CRTは心臓のポンプ機能そのものを改善することを目的としています。
心不全が進行すると、左心室と右心室の収縮のタイミングがずれてしまい、心臓のポンプ効率が低下します。CRTは両方の心室に電気刺激を送ることで、収縮のタイミングを同期させ、心臓のポンプ機能を向上させます。
主な対象疾患:
- 拡張型心筋症(心臓が拡大し、ポンプ機能が低下)
- 陳旧性心筋梗塞(心筋梗塞の後遺症による心不全)
- 重症心不全(NYHA心機能分類クラスⅢ〜Ⅳ)
CRT-D(除細動器機能付き心臓再同期医療機器)は、CRTにICD(除細動器)の機能を組み合わせたものです。心臓再同期療法に加えて、致命的な不整脈が起きた際に電気ショックを与える機能も備えています。
これらの機器を装着した場合、障害認定基準では原則として2級に該当します。CRTやCRT-Dは重症心不全の患者さんに使用される治療法であり、通常のペースメーカーよりも重度の心疾患を対象としているため、認定等級も高くなるのです。
2級に認定されれば、初診日の年金加入状況に関わらず、障害基礎年金(年額約78万円)を受給できます。厚生年金加入中だった方は、これに障害厚生年金も上乗せされます。
ただし、CRT・CRT-Dには注意点があります。認定基準には「術後は2級に認定するが、1〜2年程度経過観察したうえで症状が安定しているときは、臨床症状、検査成績、一般状態区分表を勘案し、障害等級を再認定する」という規定があります。つまり、更新時に症状の改善が見られると、3級に下がる可能性があるということです。これについては、後ほど「更新時の注意点」で詳しく解説します。
上位等級に認定される可能性
ここまで、「通常型ペースメーカー・ICDは原則3級」「CRT・CRT-Dは原則2級」とお伝えしてきましたが、「原則」という言葉がポイントです。実は、通常型ペースメーカーやICDを装着した場合でも、条件によっては2級以上に認定される可能性があります。
障害認定基準には、次のように記載されています。
ペースメーカー又はICDを装着した場合は、原則として障害等級を3級と認定するが、ペースメーカー等を装着した後も、なお、主要症状、検査成績、一般状態区分表等により、さらに上位等級に認定することもある。
つまり、ペースメーカー装着後も心疾患の症状が続いており、日常生活に著しい制限がある場合には、2級や1級に認定される可能性があるということです。
上位等級に認定されるための主な条件は次の2つです:
1. 異常検査所見があること
以下のような検査で異常値が確認されることが重要です:
- BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)が200pg/ml以上
- 左室駆出率(EF)が40%以下
- 心電図で重症な不整脈所見
- 心エコー図で中等度以上の心機能低下
- 胸部X線で心拡大(心胸郭係数60%以上)
2. 日常生活に著しい制限があること
一般状態区分表で「ウ」「エ」「オ」のいずれかに該当することが必要です:
- ウ:歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
- エ:身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
- オ:身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの(1級相当)
例えば、ペースメーカーを装着しても、息切れや動悸が続き、少し歩くだけで疲れてしまう、家事の多くに家族の手助けが必要、といった状態であれば、2級に認定される可能性があります。
特に、初診日に国民年金に加入していた方にとっては、2級に認定されるかどうかが受給の可否を分ける重要なポイントとなります。「ペースメーカーを装着したけれど、国民年金だから諦めていた」という方も、症状や検査結果によっては2級に該当する可能性がありますので、諦めずに確認されることをお勧めします。
下の表で、ペースメーカーの種類と障害等級の関係をまとめましたので、ご参照ください。
【重要】ペースメーカーの種類と障害等級
| 機器の種類 | 主な対象疾患 | 原則の等級 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 通常型ペースメーカー | 完全房室ブロック 洞不全症候群 徐脈性心房細動 |
3級 | 条件により2級以上も可能 |
| ICD (植込み型除細動器) |
心室頻拍 心室細動 ブルガダ症候群 心筋梗塞後不整脈 |
3級 | 条件により2級以上も可能 |
| CRT (心臓再同期医療機器) |
拡張型心筋症 陳旧性心筋梗塞 重症心不全 |
2級 | 更新時に症状安定で3級になる可能性あり |
| CRT-D (除細動器機能付きCRT) |
拡張型心筋症 重症心不全 不整脈合併 |
2級 | 更新時に症状安定で3級になる可能性あり |
※上位等級(2級・1級)に認定されるには、異常検査所見と日常生活の制限度合いの両方が考慮されます。
※初診日に国民年金加入の場合、3級では受給できないため、2級以上への認定が必要です。
障害年金を受給するための3つの要件
ペースメーカーを装着すれば自動的に障害年金を受給できるわけではありません。障害年金を受給するためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。どんなに症状が重くても、これらの要件を満たしていなければ受給できませんので、必ず確認してください。
特に「初診日要件」は最も重要で、初診日がいつなのか、その日にどの年金制度に加入していたかによって、受給できる年金の種類や金額が大きく変わります。
初診日要件【最重要】
初診日とは、ペースメーカー装着の原因となった心疾患で、初めて医師の診療を受けた日のことです。この初診日に、国民年金または厚生年金に加入している必要があります(20歳前や60歳以上65歳未満の場合は、未加入でも対象となる場合があります)。
初診日の確認で注意すべきポイントがいくつかあります。
健康診断で異常を指摘された場合
会社の健康診断や人間ドックで不整脈や心疾患の疑いを指摘され、その後精密検査を受けた場合、精密検査を受けた日が初診日となります。健康診断そのものは診療行為ではないため、初診日にはなりません。
例えば:
- 2024年6月15日:会社の健康診断で不整脈を指摘
- 2024年7月10日:循環器内科で精密検査を受ける ← これが初診日
- 2024年8月20日:ペースメーカー装着
この場合、2024年7月10日が初診日となり、この日に厚生年金に加入していれば障害厚生年金の対象となります。
過去に同じ病気で受診していた場合
以前に動悸や息切れなどで内科を受診し、その後いったん治療を中断していたが、再び症状が悪化してペースメーカー装着に至った場合、最初に受診した日が初診日となります。
例えば、10年前に不整脈で受診したことがあり、その後放置していて、最近になって悪化してペースメーカーを装着した場合、10年前の受診日が初診日になる可能性があります。初診日が古くなると、その当時の年金加入状況が問題になりますので、注意が必要です。
初診日の証明が必要
障害年金を申請する際には、初診日を証明する書類が必要です。具体的には、初診の医療機関に「受診状況等証明書」という書類を作成してもらいます。
ただし、初診から長期間が経過している場合、カルテの保存期間(法定では5年)を過ぎていてカルテが廃棄されていることがあります。この場合は:
- 「受診状況等証明書が添付できない申立書」を提出
- 診察券、領収書、お薬手帳などの資料を添付
- 第三者証明(受診に同行した家族などの証明)
- 健康診断の記録
などの方法で初診日を証明します。初診日の証明が難しいケースでは、社労士などの専門家に相談することをお勧めします。
初診日により受給できる年金が決まる
初診日にどの年金制度に加入していたかで、受給できる年金の種類が変わります:
- 厚生年金加入中:障害厚生年金(1級〜3級)+ 障害基礎年金(1級・2級の場合)
- 国民年金加入中:障害基礎年金のみ(1級・2級のみ。3級はなし)
- 20歳前:20歳前障害による障害基礎年金(所得制限あり)
ペースメーカー装着で原則3級の場合、初診日に厚生年金に加入していなければ受給できません。しかし、2級以上に認定されれば、初診日が国民年金でも受給可能です。
保険料納付要件
初診日の前日において、次のいずれかの条件を満たしている必要があります。初診日の「前日」時点で判定されることに注意してください。初診日以降に保険料を納付しても、この要件は満たせません。
原則(3分の2要件)
初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上あること。
簡単に言えば、年金加入期間の3分の2以上、きちんと保険料を納めているか、免除を受けていれば大丈夫ということです。逆に言うと、未納期間が3分の1を超えていると、この要件を満たせません。
特例(直近1年要件)
初診日が2026年4月1日前にある場合は、初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないことで、この要件を満たすことができます。
こちらの特例の方が条件が緩いため、多くの方はこちらで要件を満たします。直近1年間さえ未納がなければ、それ以前に多少の未納期間があっても問題ありません。
20歳前や60歳以上65歳未満の場合
初診日が20歳前の場合や、60歳以上65歳未満で日本国内に住んでいる方の場合は、年金に加入していなくても障害年金の対象になることがあります。この場合、保険料納付要件は問われません。
納付要件を満たしているか不安な場合
ご自身の納付状況が分からない場合は、お近くの年金事務所で「年金加入記録」を確認できます。窓口で「障害年金の申請を考えているので、保険料納付要件を満たしているか確認したい」と伝えれば、調べてもらえます。
年金事務所での確認には、年金手帳または基礎年金番号通知書、本人確認書類(運転免許証など)が必要です。
障害認定日要件
障害認定日とは、障害の程度を認定する日のことで、原則として「初診日から1年6ヶ月を経過した日」です。この日に障害等級に該当する状態であれば、障害年金を請求できます。
例えば、2024年1月10日が初診日であれば、2025年7月10日が障害認定日となり、この日以降に障害年金を請求できます。
ただし、ペースメーカーの場合は重要な特例があります。
ペースメーカー装着日が障害認定日になる特例
心疾患の障害認定基準には、次のように定められています:
心臓ペースメーカー、又はICD(植込み型除細動器)、又は人工弁を装着した場合の障害の程度を認定すべき日は、それらを装着した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。
つまり、初診日から1年6ヶ月以内にペースメーカーを装着した場合、装着した日が障害認定日となり、1年6ヶ月を待たずに障害年金を請求できるということです。
例えば:
- 2024年6月15日:初診日
- 2024年8月20日:ペースメーカー装着 ← この日が障害認定日
- 2024年9月以降:障害年金を請求可能
通常であれば2025年12月15日まで待たなければならないところを、装着後すぐに請求できるため、早期に年金を受給できる大きなメリットがあります。
認定日請求と事後重症請求
障害年金の請求方法には、主に2つの方法があります:
認定日請求:障害認定日の時点で障害等級に該当していたとして請求する方法。認定されれば、障害認定日の翌月分から年金が支給されます(最大5年分の遡及が可能)。
事後重症請求:障害認定日の時点では等級に該当しなかったが、その後症状が悪化して等級に該当するようになった場合の請求方法。請求した月の翌月分から年金が支給されます(遡及なし)。
ペースメーカーの場合、装着日が障害認定日となり、装着した時点で原則3級以上に該当するため、通常は「認定日請求」を行います。装着後数ヶ月〜数年経ってから申請する場合でも、装着日まで遡って年金を受給できる可能性があります(ただし最大5年まで)。
そのため、ペースメーカーを装着された方は、できるだけ早く申請されることをお勧めします。装着から時間が経つほど、遡及して受給できる期間が短くなってしまいます。
下のチェックリストで、ご自身が要件を満たしているか確認してみてください。
【重要】障害年金受給要件チェックリスト
以下のすべての項目にチェックが入れば、障害年金を受給できる可能性があります:
- ☑ 初診日要件
- ペースメーカーの原因疾患で初めて医師の診療を受けた日が特定できる
- その初診日に、国民年金または厚生年金に加入していた(または20歳前、60-65歳で国内在住)
- 初診日を証明する書類(受診状況等証明書など)を取得できる、または代替手段がある
- ☑ 保険料納付要件
- 初診日の前日時点で、年金加入期間の3分の2以上、保険料を納付または免除されている
- または、初診日の前日時点で、直近1年間に保険料の未納がない
- (20歳前や60-65歳の場合は不要)
- ☑ 障害認定日要件
- 初診日から1年6ヶ月を経過している、またはペースメーカーを装着している
- 障害認定日(ペースメーカー装着日)に障害等級(3級以上)に該当する状態である
- ☑ 等級要件
- ペースメーカー装着により原則3級以上に該当(初診日が厚生年金なら3級で受給可)
- または、症状・検査結果により2級以上に該当(初診日が国民年金でも受給可)
※このチェックリストはあくまで目安です。実際の受給可否は個別の状況によって異なりますので、詳しくは年金事務所または社会保険労務士にご相談ください。
※要件を満たしているか不安な場合、特に初診日の証明や保険料納付状況に不安がある場合は、お早めに専門家にご相談されることをお勧めします。
3級と2級の認定基準の違い
ペースメーカーを装着した場合、原則として3級に該当しますが、心疾患の状態や日常生活の制限の程度によっては、2級や1級に認定される可能性があります。特に初診日に国民年金に加入していた方にとっては、2級以上に認定されるかどうかが受給の可否を分ける重要なポイントとなります。
ここでは、各等級の認定基準について、具体的な症状や検査数値を交えて詳しく解説します。
3級の認定基準
障害等級3級は、「労働に著しい制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」と定義されています。
ペースメーカー・ICDを装着した場合、装着の事実をもって原則3級に該当します。具体的には次のような状態が想定されています:
- 軽度の症状があり、肉体労働には制限を受けるが、歩行や軽労働、座業はできる
- 重いものを持つことや激しい運動は制限されるが、デスクワークなどは可能
- ペースメーカーの定期的な管理が必要である
- 日常生活は概ね自立しているが、一部配慮が必要
一般状態区分表では、「ア」または「イ」に該当する状態です:
- ア:無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
- イ:軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの(例:軽い家事、事務など)
3級に該当する場合、障害厚生年金のみが支給対象となります。初診日に国民年金に加入していた方(自営業、専業主婦など)は、3級では障害年金を受給できません。
2級の認定基準
障害等級2級は、「日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」と定義されています。
CRT・CRT-Dを装着した場合は原則2級に該当しますが、通常型ペースメーカーやICDを装着した場合でも、以下の条件を満たせば2級に認定される可能性があります。
2級認定の条件(2つの要素の組み合わせ)
2級として認定されるためには、次の2つの要素が必要です:
1. 異常検査所見があること
以下の検査項目のうち、該当するものがあることが重要です:
| 検査項目 | 異常所見の基準 |
|---|---|
| A. 心電図 | 0.2mV以上のSTの低下、または0.5mV以上の深い陰性T波がある |
| B. 負荷心電図 | 6Mets未満相当で明らかな心筋虚血所見がある |
| C. 胸部X線 | 心胸郭係数60%以上、または肺静脈性うっ血所見・間質性肺水腫がある |
| D. 心エコー図 | 中等度以上の左室肥大と心拡大、弁膜症、収縮能の低下、拡張能の制限、先天性異常がある |
| E. 心電図(不整脈) | 重症な頻脈性または徐脈性不整脈所見がある |
| F. 左室駆出率(EF) | 40%以下 |
| G. BNP | BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)が200pg/ml相当を超える |
上記のうち、Eの重症不整脈所見がある場合、またはA・B・C・D・F・Gのうち2つ以上の異常所見があり、かつ病状をあらわす臨床所見が5つ以上ある場合に、2級の可能性が高まります。
病状をあらわす臨床所見には次のようなものがあります:
- 動悸(心臓がドキドキする感覚)
- 呼吸困難(息苦しさ)
- 息切れ(少し動くと息が切れる)
- 胸痛(胸の痛みや圧迫感)
- 咳(心不全による咳)
- 痰
- 失神(意識を失う)
- チアノーゼ(唇や爪が青紫色になる)
- 浮腫(むくみ、特に足のむくみ)
- 頸静脈怒張(首の静脈が浮き出る)
- ばち状指(指先が太鼓のばちのように膨らむ)
- 尿量減少
- 器質的雑音(心臓の雑音)
2. 一般状態区分表で「ウ」または「エ」に該当すること
日常生活の制限の程度として、次のいずれかに該当する必要があります:
- ウ:歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
- エ:身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
具体的な日常生活の制限例(2級相当)
「ウ」に該当する状態の具体例:
- 家の中の移動はできるが、階段の昇降で息切れがひどく、休憩が必要
- 入浴は一人でできるが、疲れやすく家族に見守ってもらっている
- 食事の準備など簡単な家事はできるが、掃除や洗濯は家族に手伝ってもらう
- 買い物に行けるが、重い荷物は持てないので家族に頼む
- 仕事はデスクワーク中心で、重労働は不可能
- 通勤時は満員電車を避けるため時差出勤を利用
- 日中は起きているが、疲れやすく午後は横になることが多い
「エ」に該当する状態の具体例:
- 入浴や着替えに家族の手助けが頻繁に必要
- トイレには一人で行けるが、それ以外は介助が必要なことが多い
- 家事はほとんどできず、家族に依存している
- 一人での外出は困難で、通院も家族の付き添いが必要
- 日中の半分以上はベッドや布団で横になっている
- 就労は不可能な状態
2級に認定されれば、初診日が国民年金でも障害基礎年金(年額約78万円)を受給できます。厚生年金加入中だった方は、さらに障害厚生年金が上乗せされます。
1級の認定基準
障害等級1級は、「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」と定義されており、2級よりもさらに重度の状態です。
心疾患で1級に認定されるのは、次のような場合です:
病状が重篤で、安静時においても常時心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表の「オ」に該当するもの
- オ:身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの
具体的には:
- ベッドから離れることがほとんどできない
- 食事、排泄、入浴など身のまわりのことすべてに介助が必要
- 安静にしていても息苦しさや動悸がある
- 活動範囲がベッド周辺のみに限定される
1級に認定されれば、障害基礎年金は2級の1.25倍(年額約97万円)、障害厚生年金も1.25倍となります。
ペースメーカーを装着した方で1級に該当するケースは多くありませんが、装着後も重度の心不全症状が継続している場合などに認定される可能性があります。
診断書に記載してもらうべきポイント
ペースメーカー装着後も症状が続いており、2級以上を目指す場合、診断書の記載内容が非常に重要になります。医師は診察時の様子や検査結果をもとに診断書を作成しますが、日常生活での困りごとや制限は、患者さんが伝えなければ医師も把握できません。
診察時に医師に伝えるべきこと
- 自覚症状の詳細
- 動悸、息切れ、胸痛、疲労感などの頻度と程度
- 「階段を2階まで登ると息が切れて5分休憩が必要」など具体的に
- 症状が出るのはどんな時か(歩行時、入浴時、家事の時など)
- 日常生活での具体的な制限
- できないこと、制限されていること
- 「掃除機をかけると息切れがして途中で休む必要がある」
- 「重い買い物袋は持てないので家族に頼んでいる」
- 「入浴後は疲れて横にならないといけない」
- 家族の介助や配慮の内容
- 「妻が重い荷物を全部持ってくれる」
- 「入浴時は家族が見守っている」
- 「家事のほとんどを家族がやっている」
- 就労時の配慮事項
- 「時短勤務で1日6時間に短縮している」
- 「営業の外回りは午前中のみにしてもらっている」
- 「重い荷物を運ぶ作業は同僚に代わってもらっている」
- 「時差出勤で満員電車を避けている」
- 「疲れた時は休憩室で横になることを許可されている」
- ペースメーカー装着後も改善しない症状
- 「ペースメーカーを入れたが、依然として疲れやすい」
- 「装着後も動悸や息切れが続いている」
診断書作成時の注意点
診断書には「日常生活能力の判定」や「日常生活能力の程度(一般状態区分表)」を記載する欄があります。ここに医師がどう記載するかで、等級が大きく変わる可能性があります。
- 診察時には、普段より体調が良いことがあります。「今日は調子がいい」と言ってしまうと、診断書にも「症状は安定している」と記載される可能性があります
- 普段の一番つらい時の状態も含めて、正直に伝えましょう
- 「できる」と言うのではなく、「時間がかかる」「休憩が必要」「家族の手伝いが必要」など、制限の内容を具体的に伝えましょう
診断書ができあがったら、受け取る前に医師に内容を確認させてもらうことをお勧めします。もし実際の状態と異なる記載があれば、訂正をお願いすることもできます。
下の表で、一般状態区分表と等級の関係をまとめましたので、ご参照ください。
【重要】一般状態区分表と障害等級の関係
| 区分 | 日常生活の状態 | 対応する等級(目安) |
|---|---|---|
| ア | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの | 3級程度 (軽度) |
| イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例:軽い家事、事務など |
3級程度 (軽度〜中等度) |
| ウ | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの | 2級程度 (中等度) |
| エ | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの | 2級程度 (中等度〜重度) |
| オ | 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの | 1級程度 (重度) |
※この区分だけで等級が決まるわけではなく、検査所見や臨床症状なども総合的に判断されます。
※心疾患の場合、ペースメーカー装着の事実、異常検査所見、一般状態区分などを総合的に評価して等級が決定されます。
※2級認定には、一般状態区分が「ウ」または「エ」であることに加えて、異常検査所見があることが重要です。
国民年金加入者が2級を目指すために
「ペースメーカーを装着したけれど、初診日が国民年金だから障害年金はもらえない」と諦めてしまっている方はいませんか。確かに、原則3級では障害基礎年金の対象にはなりませんが、2級以上に認定されれば、国民年金加入者でも障害年金を受給できます。
ここでは、国民年金加入者の方が2級認定を目指すための具体的な方法をお伝えします。
国民年金でも2級なら受給可能
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類がありますが、障害基礎年金には1級と2級しかなく、3級はありません。
| 初診日の年金加入状況 | 3級の場合 | 2級以上の場合 |
|---|---|---|
| 厚生年金加入中 (会社員、公務員など) |
○ 受給可能 障害厚生年金3級 (年額約58万円〜) |
○ 受給可能 障害基礎年金+障害厚生年金 (年額100万円以上も) |
| 国民年金加入中 (自営業、専業主婦など) |
× 受給不可 3級は障害厚生年金のみのため |
○ 受給可能 障害基礎年金 (年額約78万円) |
つまり、初診日に国民年金に加入していた方は、2級以上に認定されることが受給の絶対条件となります。そのため、「ペースメーカーは原則3級だから国民年金では無理」と考えて諦めてしまう方が多いのですが、実際には2級に認定される可能性があります。
前のセクションで説明したように、ペースメーカー装着後も次のような状態が続いている場合、2級に該当する可能性があります:
- BNPが200pg/ml以上、または左室駆出率(EF)が40%以下などの異常検査所見がある
- 動悸、息切れ、疲労感などの症状が5つ以上継続している
- 日常生活に著しい制限があり、一般状態区分表で「ウ」または「エ」に該当する
「自分は該当するかもしれない」と思われた方は、諦めずに一度確認してみることをお勧めします。
2級認定を得るための具体的アプローチ
国民年金加入者が2級認定を得るためには、ペースメーカー装着後も継続している症状や日常生活の制限を、診断書と申立書にしっかりと反映させることが重要です。
1. 医師への診察時の伝え方
診断書を作成する医師は、診察時の様子と検査結果をもとに記載します。日常生活での困りごとは、患者さんから伝えなければ分かりません。
診察時には次のようなことを具体的に伝えましょう:
- 「階段を登ると息が切れて、途中で休憩が必要です」
- 「掃除機をかけると疲れてしまい、1日に10分程度しかできません」
- 「買い物に行くと疲れるので、週に1回、短時間だけにしています」
- 「重い物は全く持てないので、荷物は家族に頼んでいます」
- 「入浴後は必ず横になって休まないといけません」
- 「ペースメーカーを入れる前より楽にはなりましたが、疲れやすさは続いています」
「できる・できない」だけでなく、「どの程度なら可能か」「どんな工夫や配慮が必要か」を具体的に伝えることがポイントです。
2. 病歴・就労状況等申立書の重要性
病歴・就労状況等申立書は、ご自身または社労士が作成する書類で、発病から現在までの経過、日常生活の状況、就労状況などを詳しく記載します。
この申立書では、診断書だけでは伝わりにくい日常生活の具体的な様子を記載できます:
- ペースメーカー装着前と装着後の生活の変化
- 家事や買い物など、具体的にできないこと
- 家族からどのような介助や配慮を受けているか
- 仕事を休職・退職した経緯や、仕事内容の変更
- 一日の生活パターン(起床時間、活動時間、休息の必要性など)
例えば:
「ペースメーカー装着後、店舗の営業は継続していますが、以前のように一人で店を切り盛りすることはできなくなりました。重い商品の陳列は夫に手伝ってもらい、立ち仕事が続くと息切れがするため、椅子を用意してもらい座りながら接客することが多くなっています。以前は1日8時間営業していましたが、現在は疲労のため6時間に短縮しており、それでも夕方には疲れ果てて横にならないといけません」
このように具体的に記載することで、審査する側も実際の状態を理解しやすくなります。
3. 家族の協力
日常生活の制限や家族の介助について、本人は「これくらいは自分でできている」と思いがちですが、客観的に見ると実は家族のサポートがなければ成り立っていないことがあります。
家族から見た日常生活の様子を聞き取り、それを申立書に反映させることも有効です:
- 「本人は『大丈夫』と言うが、実際には重い物を持つことは一切できず、全て家族が代わっている」
- 「入浴時は倒れないか心配なので、家族が必ず見守るようにしている」
- 「疲れやすく、午後はほとんど横になっている」
このような客観的な情報も、等級判定の重要な材料となります。
4. 定期的な検査結果の保管
BNP、左室駆出率(EF)、心電図などの検査結果は、診断書作成時に必要になります。通院の際に検査を受けたら、その結果を保管しておくことをお勧めします。
特に、症状が重かった時期の検査結果は重要な資料となります。診断書作成時点で症状が落ち着いていても、過去の検査結果から症状の重さを証明できる場合があります。
諦めかけている方へのメッセージ
「一度インターネットで調べて、国民年金だから無理だと思って諦めた」という方の声をよく聞きます。確かに、ペースメーカーは原則3級で、国民年金加入者は3級では受給できません。しかし、それは「原則」であって、「絶対」ではありません。
当事務所にご相談にいらっしゃった方の中にも、次のようなケースがありました:
- 「自営業で国民年金だから無理だと思っていたが、検査結果と日常生活の状況から2級に認定され、年78万円を受給できるようになった」
- 「ペースメーカーを装着して2年経ってから相談に来られ、遡及請求で過去の分も含めて受給できた」
- 「『働いているから無理』と思っていたが、実際には時短勤務で配慮を受けており、その状況を診断書に記載してもらうことで認定された」
障害年金の制度は複雑で、インターネットの情報だけでは判断が難しいことも多くあります。「自分は該当しないだろう」という自己判断で諦めてしまう前に、一度専門家に相談してみることをお勧めします。
もし受給要件を満たしていれば、月に約6万5千円、年間で約78万円の収入増となります。これは生活の大きな支えになるはずです。可能性がゼロではない限り、諦めずに確認してみる価値は十分にあります。
当事務所は「諦めない障害年金」をコンセプトに、一人ひとりの状況に寄り添ったサポートを行っています。国民年金加入者の方が2級を目指すための診断書作成サポート、医師との連携、病歴・就労状況等申立書の作成など、きめ細かい支援を提供しています。
実際に、「諦めていた」という方が当事務所のサポートで障害年金を受給できるようになったケースは少なくありません。初回相談は無料ですので、まずは現在の状況をお聞かせください。
ご相談方法:
- お電話:050-7124-5884(平日9:00〜17:00)
- メール:mail@srkobe.com(24時間受付)
- お問い合わせフォーム:https://nenkin.srkobe.com/contact/
神戸・兵庫エリアを中心に、障害年金申請を専門にサポートしている社会保険労務士が、あなたの状況を丁寧にお伺いし、受給の可能性を判断いたします。諦める前に、まずはご相談ください。
障害年金申請の具体的な手順
ペースメーカーを装着して障害年金を申請すると決めたら、次は実際の手続きに入ります。障害年金の申請は書類が多く複雑に感じるかもしれませんが、手順を一つずつ進めていけば大丈夫です。ここでは、申請の流れを5つのステップに分けて、具体的に解説します。
なお、手続きに不安がある場合や、仕事が忙しくて時間が取れない場合は、社会保険労務士に依頼することも可能です(後ほど詳しく説明します)。
STEP1 初診日の確認と証明
障害年金申請の最初のステップは、初診日を特定し、それを証明する書類を取得することです。初診日は受給の可否を決める最重要ポイントですので、慎重に確認しましょう。
初診日を特定する
まず、ペースメーカー装着の原因となった心疾患で、最初に医師の診療を受けた日を確認します:
- 健康診断で異常を指摘され、精密検査を受けた → 精密検査を受けた日が初診日
- 動悸や息切れで内科を受診した → その受診日が初診日
- 救急搬送された → 救急搬送された日が初診日
過去に同じ症状で別の医療機関を受診していた場合は、その最も古い受診日が初診日となる可能性があります。
受診状況等証明書を取得する
初診日を証明するために、初診の医療機関で「受診状況等証明書」を発行してもらいます。これは障害年金申請用の専用書式で、年金事務所や日本年金機構のウェブサイトから入手できます。
医療機関に依頼する際の流れ:
- 初診の医療機関の窓口(医事課など)に「障害年金申請のため、受診状況等証明書を発行してほしい」と依頼
- 必要事項を記入した書式を提出
- 数日〜2週間程度で発行される(医療機関により異なる)
- 費用は医療機関により異なりますが、3,000円〜5,000円程度が一般的
初診の医療機関とペースメーカーを装着した医療機関が同じ場合は、受診状況等証明書は不要です。診断書だけで初診日を証明できます。
カルテが残っていない場合の対応
初診から5年以上経過していると、カルテの保存期間を過ぎていて証明書が取れないことがあります。この場合:
- 「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成
- 次の資料を添付:
- 診察券(あれば)
- お薬手帳の記録
- 領収書
- 健康診断の記録
- 2番目以降に受診した医療機関の証明書
- 第三者証明(受診に同行した家族などによる証明)
初診日の証明が難しいケースでは、社労士などの専門家に相談することをお勧めします。
STEP2 年金事務所での相談
初診日が確認できたら、次はお住まいの地域を管轄する年金事務所で相談します。事前に予約してから訪問することをお勧めします(予約なしでも相談できますが、待ち時間が長くなる可能性があります)。
年金事務所で確認すること
- 年金加入記録の確認
- 初診日にどの年金制度に加入していたか
- 国民年金か厚生年金か
- 保険料納付要件の確認
- 納付要件を満たしているかどうか
- 未納期間がある場合、特例(直近1年要件)で要件を満たせるか
- 必要書類の説明を受ける
- 年金請求書(障害給付)の用紙をもらう
- その他必要書類のリストを受け取る
- 記入方法の説明を受ける
持参するもの
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 受診状況等証明書(取得済みの場合)
年金事務所での相談は無料です。分からないことがあれば、遠慮なく質問しましょう。
STEP3 診断書の作成依頼
診断書は障害年金申請の中で最も重要な書類です。ペースメーカーを管理している主治医(循環器内科医など)に作成を依頼します。
診断書の用紙を入手する
障害年金用の診断書は疾患ごとに様式が異なります。ペースメーカーの場合は「心疾患の障害用」の診断書を使用します。用紙は年金事務所または日本年金機構のウェブサイトから入手できます。
医師に依頼するタイミング
ペースメーカー装着から3ヶ月以内の診断書が必要です(障害認定日から3ヶ月以内)。装着後できるだけ早く依頼することをお勧めします。
ただし、装着直後で症状が安定していない場合は、主治医と相談して適切なタイミングを決めましょう。
依頼時に医師に伝えるべきこと
- 「障害年金を申請したいので、診断書をお願いします」と明確に伝える
- 日常生活での具体的な制限や症状を詳しく説明する(前述の「診断書に記載してもらうべきポイント」を参照)
- 就労している場合は、職場での配慮事項も伝える
診断書作成の期間と費用
- 作成期間:通常1〜2ヶ月程度(医療機関により異なる)
- 費用:5,000円〜10,000円程度(医療機関により異なる)
診断書を受け取ったら必ず内容を確認する
診断書ができあがったら、提出前に内容を確認しましょう:
- 日常生活の制限が適切に記載されているか
- 一般状態区分表の記載が実際の状態と合っているか
- 検査数値が正確に記載されているか
- 就労状況や配慮事項が記載されているか(該当する場合)
もし実際の状態と異なる記載があれば、医師に修正をお願いすることもできます。
STEP4 病歴・就労状況等申立書の作成
病歴・就労状況等申立書は、ご自身が作成する重要な書類です。発病から現在までの経過、日常生活の状況、就労状況などを時系列で記載します。
記載する主な内容
- 発病から初診までの経緯
- いつ頃から、どのような症状が出たか
- 症状が出てから受診するまでの経緯
- 受診してからペースメーカー装着までの経過
- 診断名と治療内容
- 症状の変化
- 入院の有無と期間
- ペースメーカー装着後の状態
- 装着後の症状の変化
- 現在も続いている症状
- 通院頻度
- 日常生活の状況
- できること、できないこと
- 家事や買い物の状況
- 家族の介助や配慮の内容
- 外出の頻度と範囲
- 就労状況
- 発病前の仕事内容
- 発病後の変化(休職、退職、仕事内容の変更など)
- 現在の就労状況(時短勤務、配慮事項など)
記載のポイント
- 具体的に記載する(「疲れやすい」ではなく「掃除機をかけると10分で疲れて休憩が必要」など)
- 時系列を整理する(いつ、何があったかを明確に)
- 日常生活での制限を詳しく書く
- 家族の協力や職場の配慮を具体的に記載する
この申立書の作成に不安がある場合は、社労士に依頼することもできます。
STEP5 必要書類を揃えて提出
すべての書類が揃ったら、年金事務所または市区町村の年金窓口に提出します。
提出する主な書類
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 年金請求書(障害給付) | 年金事務所でもらった用紙に記入 |
| 診断書(心疾患用) | 障害認定日から3ヶ月以内のもの |
| 受診状況等証明書 | 初診の医療機関で作成(初診と診断書作成医療機関が同じ場合は不要) |
| 病歴・就労状況等申立書 | 本人または代理人が作成 |
| 戸籍謄本または戸籍抄本 | 提出日から6ヶ月以内のもの |
| 世帯全員の住民票 | マイナンバー記載の場合は省略可能 |
| 年金手帳または年金証書 | 基礎年金番号が確認できるもの |
| 預金通帳のコピー | 年金の振込先口座(本人名義) |
| 所得証明書 | 20歳前障害の場合のみ |
※配偶者や子の加算がある場合は、追加で書類が必要になります。詳しくは年金事務所でご確認ください。
提出方法
- 年金事務所の窓口に持参(予約推奨)
- 郵送(書留やレターパックなど追跡可能な方法で)
窓口に持参する場合は、その場で書類の不備をチェックしてもらえるため安心です。
下の図で、申請手続きの全体の流れをまとめましたので、ご参照ください。
【重要】障害年金申請の流れ
| STEP 1 | 初診日の確認と証明 → 初診の医療機関で受診状況等証明書を取得 所要期間:1〜2週間 |
| ↓ | |
| STEP 2 | 年金事務所での相談 → 年金加入記録・納付要件の確認、必要書類の受け取り 所要期間:1日 |
| ↓ | |
| STEP 3 | 診断書の作成依頼 → 主治医に障害年金用診断書の作成を依頼 所要期間:1〜2ヶ月 |
| ↓ | |
| STEP 4 | 病歴・就労状況等申立書の作成 → 発病から現在までの経過、日常生活の状況を記載 所要期間:数日〜1週間 |
| ↓ | |
| STEP 5 | 必要書類を揃えて提出 → 年金事務所または市区町村の年金窓口に提出 所要期間:1日 |
| ↓ | |
| 審査 | 日本年金機構による審査 → 書類審査により障害等級を判定 所要期間:3〜4ヶ月 |
| ↓ | |
| 結果通知 | 年金証書の送付 → 認定されれば年金証書が届く 通知から約1〜2ヶ月後に初回入金 |
※所要期間はあくまで目安です。医療機関の混雑状況や審査の状況により変動します。
申請から受給までの期間
障害年金を申請してから実際に年金が振り込まれるまでの期間について説明します。
審査期間
書類を提出してから日本年金機構の審査が完了するまで、通常3〜4ヶ月程度かかります。ただし、これは目安であり、審査の混雑状況によっては5〜6ヶ月かかることもあります。
審査中に追加の書類提出を求められることもあります(例:初診日の証明が不十分な場合など)。その場合は速やかに対応しましょう。
結果通知
審査が終わると、認定・不認定にかかわらず結果が郵送で通知されます。
- 認定の場合:年金証書が送られてきます。等級、年金額、支払開始日などが記載されています
- 不認定の場合:不支給決定通知書が送られてきます。不服がある場合は、3ヶ月以内に審査請求(不服申立て)ができます
初回の振込
年金証書が届いてから1〜2ヶ月後に、初回の年金が振り込まれます。障害年金は偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)の15日に、前2ヶ月分がまとめて振り込まれます。
例えば:
- 9月に年金証書が届いた場合 → 10月15日に初回振込(障害認定日の翌月分から9月分までがまとめて振り込まれる)
遡及請求の場合
ペースメーカー装着から時間が経ってから申請した場合、装着日(障害認定日)まで遡って年金を受給できる可能性があります。ただし、遡及できるのは最大5年前までです。
例えば、2020年8月にペースメーカーを装着し、2025年10月に申請した場合、2020年9月分から2025年9月分までの5年分がまとめて振り込まれます(3級で年58万円として、約290万円)。
そのため、ペースメーカーを装着された方は、できるだけ早く申請されることをお勧めします。装着から時間が経つほど、遡及して受給できる期間が短くなってしまいます。
全体のスケジュール例
- 2024年8月:ペースメーカー装着
- 2024年9月:診断書作成依頼
- 2024年10月:診断書受け取り、申立書作成
- 2024年11月:書類を年金事務所に提出
- 2025年2月:年金証書が届く(審査期間3ヶ月)
- 2025年4月15日:初回振込(2024年9月分〜2025年3月分の7ヶ月分)
このように、申請から受給まで半年程度かかるのが一般的です。時間がかかることを念頭に置いて、早めに準備を始めることをお勧めします。
社労士に依頼するメリットと費用
障害年金の申請は、ご自身で行うことも、社会保険労務士(社労士)に依頼することもできます。「自分でやるべきか、専門家に頼むべきか」と迷われる方も多いと思います。ここでは、社労士に依頼するメリットと費用について、客観的にご説明します。
判断のポイントは、「時間と労力」「認定の確実性」「費用対効果」の3つです。
社労士に依頼するメリット
社会保険労務士は、年金制度の専門家として、障害年金申請のサポートを行います。具体的には次のようなメリットがあります。
1. 初診日の特定と証明のサポート
初診日は障害年金申請の最重要ポイントですが、証明が難しいケースも少なくありません:
- カルテが廃棄されている場合の対応
- 複数の医療機関を受診している場合、どれが初診日かの判断
- 健康診断で指摘された場合の初診日の特定
- 第三者証明の取り方
社労士は、このような複雑なケースでも、適切な方法で初診日を証明するノウハウを持っています。
2. 診断書の内容チェックと医師との調整
診断書は障害年金審査の最重要書類ですが、医師は障害年金の認定基準を必ずしも熟知しているわけではありません。社労士は:
- 診断書の記載内容が認定基準に照らして適切かチェック
- 不足している情報があれば、医師に追記や修正を依頼
- 日常生活の制限が適切に反映されているか確認
- 一般状態区分表の記載が実態と合っているか確認
特に、国民年金加入者が2級を目指す場合、診断書の記載が認定の可否を大きく左右するため、専門家のチェックが有効です。
3. 病歴・就労状況等申立書の作成代行
申立書は、発病から現在までの経過や日常生活の状況を詳しく記載する必要があり、作成に時間と労力がかかります。社労士は:
- ヒアリングに基づいて申立書を作成
- 認定に有利になるポイントを適切に記載
- 時系列を整理し、分かりやすい文章で記載
ご自身で書くよりも、審査する側に伝わりやすい申立書を作成できます。
4. 認定率の向上
社労士に依頼した場合の認定率は、自分で申請する場合よりも高い傾向があります。これは:
- 初診日の証明を適切に行える
- 診断書の記載を認定基準に沿って最適化できる
- 申立書で日常生活の制限を効果的に伝えられる
- 書類の不備や矛盾がない
といった理由によります。特に、複雑なケース(初診日が古い、国民年金で2級を目指す、過去に不認定になったなど)では、専門家のサポートが有効です。
5. 時間と労力の節約
障害年金の申請には、多くの時間と労力がかかります:
- 複数の医療機関や役所への訪問
- 書類の記入(慣れない専門用語や複雑な書式)
- 医師との調整
- 年金事務所とのやり取り
仕事をしながら、あるいは体調が優れない中でこれらをすべて行うのは大きな負担です。社労士に依頼すれば、これらの手続きを代行してもらえるため、ご本人の負担を大幅に軽減できます。
6. 不服申立てのサポート
万一不認定になった場合でも、社労士は審査請求(不服申立て)の手続きをサポートできます。審査請求には専門的な知識が必要なため、社労士のサポートが有効です。
報酬の目安と考え方
社労士への報酬は事務所によって異なりますが、一般的には次のような体系が多く見られます。
報酬体系の一般的なパターン
- 着手金 + 成功報酬
- 着手金:3万円〜5万円程度
- 成功報酬:年金の2ヶ月分程度(認定された場合のみ)
- 成功報酬のみ
- 着手金なし
- 成功報酬:年金の2〜3ヶ月分程度(認定された場合のみ)
例えば、2級に認定されて年額78万円の障害基礎年金を受給できた場合、成功報酬(年金の2ヶ月分)は約13万円となります。
当事務所の料金体系
当事務所では、報酬体系を明確にし、透明性を重視しています:
- 初回相談:無料(まずは受給の可能性を確認します)
- 報酬額は個別の状況により異なりますので、相談時に明確にご説明します
- 認定されなかった場合の着手金の取り扱いについても、事前に明示します
料金について不明な点があれば、遠慮なくお尋ねください。契約前に、すべての費用を明確にご説明いたします。
費用対効果の考え方
社労士への報酬を「高い」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、費用対効果で考えると:
3級の場合(年額約58万円)
- 報酬(約10万円〜15万円)を支払っても、初年度から40万円以上のプラス
- 2年目以降は毎年58万円を受給
- 5年間で290万円の受給
2級の場合(年額約78万円)
- 報酬(約13万円〜20万円)を支払っても、初年度から55万円以上のプラス
- 2年目以降は毎年78万円を受給
- 5年間で390万円の受給
また、自分で申請して不認定になった場合、受給できるはずの年金を受け取れないという機会損失が発生します。確実に認定を得るための「投資」と考えることもできます。
こんな方は社労士への依頼をお勧めします
- 初診日が古く、カルテが残っていない
- 国民年金加入者で、2級認定を目指したい
- 過去に不認定になったことがある
- 仕事が忙しく、手続きに時間が取れない
- 体調が優れず、役所や医療機関に何度も足を運ぶのが困難
- 複雑な手続きに不安がある
- 確実に認定を得たい
自分で申請できる方
一方で、次のような場合は、ご自身で申請することも十分可能です:
- 初診日が明確で、証明書も問題なく取得できる
- 厚生年金加入中で、3級認定で十分
- 時間に余裕があり、丁寧に手続きできる
- 制度をよく理解しており、書類作成に自信がある
ただし、少しでも不安がある場合は、まず専門家に相談してみることをお勧めします。当事務所では初回相談を無料で行っていますので、「自分で申請できそうか」「社労士に依頼すべきか」を判断する材料として、お気軽にご利用ください。
相談の結果、ご自身で申請できると判断されれば、その旨お伝えします。無理に契約を勧めることはありませんので、ご安心ください。
更新時の注意点と等級維持の方法
障害年金は一度認定されたら永久にもらえるわけではありません。多くの場合、1〜5年ごとに診断書を提出し、障害の状態を再確認する「更新」があります。更新時には障害等級が見直されることがあり、場合によっては等級が下がったり、支給が停止されたりする可能性もあります。
特にCRT・CRT-Dを装着された方は、更新時に注意が必要です。ここでは、更新の仕組みと、等級を維持するためのポイントについて解説します。
障害年金は更新がある
障害年金を受給すると、年金証書に「次回診断書提出年月」が記載されています。この時期が近づくと、日本年金機構から「障害状態確認届(更新用診断書)」が送られてきます。
更新の頻度
更新の頻度は障害の種類や程度によって異なります:
- 1年後:症状の変動が予想される場合
- 2年後:比較的安定しているが経過観察が必要な場合
- 3年後:症状が安定している場合
- 5年後:長期的に安定している場合
- 有期認定なし(永久認定):症状の改善が見込めない場合
ペースメーカー装着の場合、多くは1〜3年後に最初の更新があります。
更新の手続き
更新時には、次の手続きが必要です:
- 日本年金機構から「障害状態確認届」が送られてくる(更新時期の3ヶ月前頃)
- 主治医に診断書(障害状態確認届)の作成を依頼
- 診断書ができたら、指定の期日までに提出
- 審査が行われ、等級の見直しが行われる
- 結果が通知される
更新の結果
更新時の審査により、次のいずれかの結果となります:
- 等級維持:現在の等級のまま継続
- 等級変更(上位等級):症状が悪化した場合、より上位の等級に変更
- 等級変更(下位等級):症状が改善した場合、下位の等級に変更
- 支給停止:障害等級に該当しなくなった場合、支給が停止される
等級が下がったり支給停止になったりした場合でも、不服があれば審査請求を行うことができます。
CRT・CRT-Dの更新時リスク
CRT・CRT-Dを装着した場合、原則として2級に認定されますが、更新時には特別な注意が必要です。
障害認定基準には、次のように記載されています:
CRT(心臓再同期医療機器)、CRT-D(除細動器機能付き心臓再同期医療機器)を装着した場合は、術後は次の障害等級に認定する。ただし、1〜2年程度経過観察したうえで症状が安定しているときは、臨床症状、検査成績、一般状態区分表を勘案し、障害等級を再認定する。
つまり、CRT・CRT-Dの場合、装着直後は2級に認定されるが、1〜2年後の更新時に症状が安定していると判断されれば、3級に下がる可能性があるということです。
「症状が安定している」と判断されるケース
更新時に3級に下がるリスクが高いのは、次のような場合です:
- 自覚症状(動悸、息切れ、疲労感など)がほとんどない、または軽度
- 検査数値が改善している(BNPが低下、左室駆出率が改善など)
- 一般状態区分表で「ア」または「イ」に該当する
- フルタイムで一般就労しており、特別な配慮を受けていない
- 日常生活に特別な制限がない
CRT・CRT-Dは心不全の治療効果が高く、装着後に症状が大きく改善することも多いため、更新時に「症状が安定している」と判断されやすい傾向があります。
2級から3級に下がると
初診日に厚生年金に加入していた方の場合、3級に下がっても障害厚生年金(年額約58万円)は継続して受給できます。ただし、障害基礎年金(年額約78万円)は支給停止となるため、年金額が大幅に減少します。
さらに深刻なのは、初診日に国民年金に加入していた方の場合、3級に下がると障害年金が全額支給停止になってしまうことです。
等級を維持するためのポイント
更新時に等級を維持するためには、日頃から準備が必要です。以下のポイントを意識しておきましょう。
1. 日常生活の制限を継続的に記録する
更新用の診断書を作成する際、医師は最近の診察時の様子と検査結果をもとに記載します。しかし、日常生活での細かな制限や困りごとは、患者さんから伝えなければ分かりません。
日頃から次のようなことを記録しておくと、更新時に役立ちます:
- できないこと、制限されていること(具体的に)
- 症状が出た時の状況(いつ、どんな時に、どの程度)
- 家族の介助や配慮の内容
- 仕事での配慮や制限
- 体調が悪かった日の記録
例えば、「○月○日、買い物に行ったが、重い荷物を持てないので夫に持ってもらった」「○月○日、階段を2階まで登ったら息切れがして5分休憩が必要だった」といった具体的な記録が有効です。
スマートフォンのメモ機能や日記アプリなどを活用すると、継続しやすいでしょう。
2. 定期的な検査結果を保管する
更新用の診断書には、最近の検査結果を記載する必要があります。通院時に行った検査の結果は、すべて保管しておきましょう:
- 心電図
- 心エコー図
- 胸部X線
- 血液検査(特にBNP、NT-proBNP)
- 心臓カテーテル検査(実施した場合)
- 負荷試験(実施した場合)
検査結果は、医療機関でコピーをもらうか、検査値を記録しておくことをお勧めします。
3. 就労時の配慮事項を明確にしておく
就労している場合、「働けているから症状が軽い」と判断されないよう、どのような配慮を受けているか、どのような制限があるかを明確にしておくことが重要です。
職場での配慮の例:
- 時短勤務(何時間に短縮しているか)
- 勤務内容の変更(重労働から軽作業へ、など)
- 休憩の配慮(疲れた時に休める、など)
- 通勤時の配慮(時差出勤、車通勤の許可、など)
- 業務量の調整(以前より軽減されている、など)
- 残業の免除
- 出張の免除
これらの配慮を受けていることを、更新用診断書の「就労状況」欄や、必要に応じて添付する書類に記載してもらいましょう。
また、職場に「就労状況に関する申立書」を作成してもらい、実際の勤務状況や配慮内容を証明してもらうことも有効です。
4. 更新用診断書の内容を確認する
医師が作成した更新用診断書を提出前に確認することは非常に重要です:
- 一般状態区分表の記載が実際の状態と合っているか
- 日常生活の制限が適切に記載されているか
- 就労時の配慮事項が記載されているか
- 自覚症状が記載されているか
もし実際の状態よりも軽く記載されている箇所があれば、医師に修正をお願いすることもできます。
特に、一般状態区分表が「ア」や「イ」になっていて、実際には「ウ」に該当する場合は、必ず医師に確認しましょう。この区分だけで等級が変わることもあります。
5. 医師への診察時の伝え方
更新用の診断書作成前の診察では、日常生活の状況を具体的に伝えましょう:
- 「階段を登ると息が切れて休憩が必要です」
- 「疲れやすく、午後は横になることが多いです」
- 「重い物は全く持てません」
- 「家事の多くは家族に手伝ってもらっています」
- 「仕事は時短勤務にしてもらっています」
「調子はどうですか?」と聞かれて「まあまあです」「普通です」と答えてしまうと、診断書にも「症状は安定している」と記載される可能性があります。良い時だけでなく、悪い時の状態も含めて正直に伝えることが大切です。
6. 症状が改善しても無理をしない
CRT・CRT-Dの治療効果により、症状が改善することは喜ばしいことです。しかし、調子が良いからといって無理をすると、かえって体調を崩す可能性があります。
また、更新時の審査では、「無理をせずに生活できる状態」と「無理をすれば何でもできる状態」は区別されるべきです。日常生活で配慮や制限が必要であれば、それは障害の程度を示すものですので、遠慮せず診断書に記載してもらいましょう。
7. 更新時も社労士のサポートを検討する
更新時の診断書作成についても、社労士のサポートを受けることができます:
- 診断書の内容チェック
- 医師への追記・修正依頼のサポート
- 必要に応じた添付書類の作成
- 等級が下がった場合の審査請求のサポート
特に、CRT・CRT-D装着者で初診日が国民年金の方は、3級に下がると全額支給停止になるため、更新時のサポートを検討する価値があります。
当事務所では、初回認定時だけでなく、更新時のサポートも行っています。更新が近づいてきたら、お気軽にご相談ください。
万一等級が下がってしまったら
更新の結果、等級が下がったり支給停止になったりした場合でも、諦める必要はありません。
結果に不服がある場合は、通知を受け取った日の翌日から起算して3ヶ月以内に「審査請求」を行うことができます。審査請求では、診断書や新たな医学的資料を提出し、再度審査を受けることができます。
審査請求の手続きは複雑なため、社労士に依頼することをお勧めします。
また、一度支給停止になっても、その後症状が悪化した場合は、改めて障害年金を申請することもできます(事後重症請求)。
まとめ:ペースメーカー装着で障害年金を受給するために
この記事では、ペースメーカー装着で障害年金を受給するための重要なポイントについて、詳しく解説してきました。最後に、要点をまとめます。
この記事の重要ポイント
- ペースメーカーを装着すれば、原則として障害年金を受給できます。通常型ペースメーカー・ICDは原則3級(年額約58万円〜)、CRT・CRT-Dは原則2級(年額約78万円以上)に認定されます
- 働きながらでも受給可能です。ペースメーカーの場合、装着の事実が重視されるため、就労していることが直ちに不利になることはありません。実際にフルタイムで勤務しながら受給されている方も多くいらっしゃいます
- 装着日から申請できます。通常は初診日から1年6ヶ月待つ必要がありますが、ペースメーカーには特例があり、装着日が障害認定日となるため、装着後すぐに申請可能です
- 国民年金加入者も諦めないでください。原則3級では受給できませんが、異常検査所見と日常生活の制限により2級に認定されれば、障害基礎年金(年額約78万円)を受給できます
- 受給には3つの要件を満たす必要があります。初診日要件、保険料納付要件、障害認定日要件のすべてを満たしていることが必須です。特に初診日の証明は重要です
- 診断書の記載が認定の鍵を握ります。日常生活の制限、自覚症状、就労時の配慮事項などを、医師に具体的に伝え、診断書に適切に記載してもらうことが大切です
- 更新時の等級維持に注意が必要です。特にCRT・CRT-D装着者は、1〜2年後の更新時に症状が安定していると判断されると、3級に下がる可能性があります。日頃から日常生活の制限を記録しておくことが重要です
「まだ若いから」「働いているから」と諦めないでください
障害年金の相談を受けていると、「まだ50代だから」「フルタイムで働いているから」と、ご自身で受給を諦めてしまっている方によくお会いします。
しかし、障害年金は年齢や就労状況だけで判断されるものではありません。ペースメーカーを装着しているという事実、検査結果、日常生活の制限度合いなど、総合的に判断されます。働いていても、時短勤務や配慮を受けていれば、それは障害の程度を示すものです。
「自分は該当しないだろう」という自己判断で諦めてしまうのは、もったいないことです。受給要件を満たしていれば、月に約5万円〜7万円、年間で60万円〜100万円以上の収入増となり、生活の大きな支えになります。
早めの申請をお勧めします
ペースメーカーを装着された方は、できるだけ早く申請されることをお勧めします。
理由は2つあります。第一に、障害認定日(装着日)まで遡って年金を受給できるのは最大5年前までです。装着から時間が経つほど、遡及して受給できる期間が短くなってしまいます。
第二に、装着から時間が経ってから申請すると、「症状が安定している」と判断されやすくなります。装着後早期に申請する方が、認定されやすい傾向があります。
「いつか申請しよう」と思っているうちに、受給できるはずの年金を受け取れない期間が長くなってしまいます。思い立ったら、まず情報を集めることから始めてみてください。
専門家への相談も選択肢の一つです
障害年金の申請は、ご自身で行うことも可能ですが、次のような場合は専門家への相談をお勧めします:
- 初診日が古く、カルテが残っていない
- 国民年金加入者で、2級認定を目指したい
- 手続きに不安があり、確実に認定を得たい
- 仕事や体調の関係で、手続きに時間が取れない
社会保険労務士は、年金制度の専門家として、申請手続きのサポートや、診断書の内容チェック、医師との調整などを行います。費用はかかりますが、確実に認定を得るための「投資」と考えることもできます。
「諦めない障害年金」のお手伝いをします
当事務所は、神戸を拠点に「諦めない障害年金」をコンセプトとして、障害年金申請のサポートを専門に行っている社会保険労務士事務所です。
ペースメーカーを装着された方の申請実績も多数あり、次のようなケースでも受給につなげてきました:
- 「国民年金だから無理だと思っていた」という方が、2級認定で年78万円を受給できた
- 「初診日が10年前でカルテがない」という方が、第三者証明で初診日を証明し受給できた
- 「手続きが複雑で諦めかけていた」という方が、当事務所のサポートで認定された
当事務所の特徴:
- 障害年金申請の専門家:障害年金に特化した社会保険労務士が対応します
- 地域密着型のサポート:神戸・兵庫エリアを中心に、きめ細かいサポートを提供します
- 「諦めない」姿勢:複雑なケースでも、可能性がある限り最善の方法を模索します
- 透明性のある料金体系:契約前に、すべての費用を明確にご説明します
- 初回相談無料:まずは受給の可能性を確認していただけます
まずは無料相談から始めてみませんか
「自分は受給できるのか知りたい」「手続きについて詳しく聞きたい」「社労士に依頼した場合の費用を知りたい」など、どんなことでも結構です。
初回相談は無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。相談の結果、ご自身で申請できると判断されれば、その旨お伝えします。無理に契約を勧めることはありませんので、ご安心ください。
ご相談・お問い合わせはこちら
お電話、メール、お問い合わせフォームのいずれかでご連絡ください。
- お電話:050-7124-5884
受付時間:平日9:00〜17:00
「ホームページを見て、ペースメーカーの障害年金について相談したい」とお伝えください - メール:mail@srkobe.com
24時間受付
お名前、ご連絡先、簡単な相談内容をお書きください。2営業日以内に返信いたします - お問い合わせフォーム:https://nenkin.srkobe.com/contact/
24時間受付
フォームに必要事項をご記入の上、送信してください
清水総合法務事務所
代表:社会保険労務士 清水 良訓
〒654-0143 兵庫県神戸市須磨区菅の台6-8-3
ホームページ:https://nenkin.srkobe.com/
ペースメーカーを装着されて、経済的な不安を感じていらっしゃる方、申請を諦めかけている方、手続きに不安を感じている方。障害年金は、あなたの生活を支える大切な制度です。
諦める前に、まずは一度ご相談ください。あなたの状況をお伺いし、受給の可能性を一緒に確認させていただきます。


