がん患者の病歴・就労状況等申立書|失敗しない書き方5つのポイント

がん患者の病歴・就労状況等申立書|失敗しない書き方5つのポイント

がん治療中の経済的不安、一人で抱えていませんか?

がんの治療を続けながら、「いつまで働き続けられるだろうか」「収入が減って、家族の生活を支えられるだろうか」という不安を抱えていませんか?抗がん剤の副作用による倦怠感や、手足のしびれ、食欲不振など、治療の影響で以前のように働くことが難しくなった方も多いのではないでしょうか。

実は、がん治療中の方でも、症状や治療の影響によっては障害年金の対象となる可能性があります。障害年金は、病気やケガによって日常生活や仕事に制限が生じた場合に受給できる公的年金制度です。人工肛門の造設など目に見える障害だけでなく、抗がん剤の副作用による倦怠感や末梢神経障害など、客観的にはわかりにくい症状でも、日常生活に支障があれば受給の可能性があります。

障害年金の申請には、診断書や受診状況等証明書とともに、「病歴・就労状況等申立書」の提出が必要です。この申立書は、診断書では伝えきれない日常生活の困難や就労状況を、ご自身の言葉で審査機関に伝えることができる重要な書類です。

しかし、多くの方がこの申立書の作成で行き詰まってしまいます。「抗がん剤の副作用のつらさをどう書けばいいのか」「働きながら受給を申請していいのか」「診断書と内容がズレたら不利になるのでは」といった不安から、申請そのものを諦めてしまうケースも少なくありません。

当事務所では、神戸・兵庫県でがん患者の方々の障害年金申請を多数サポートしてきました。病歴・就労状況等申立書の作成は、確かに簡単ではありません。しかし、ポイントを押さえれば、ご自身でも作成できますし、専門家のサポートを受けることで、より確実に申請を進めることができます。

この記事では、がん患者の方が病歴・就労状況等申立書を作成する際の5つのポイントを、具体的な記入例とともに解説します。倦怠感や副作用など客観化が難しい症状の書き方、診断書との整合性の取り方、就労継続中の記載方法など、がん特有の課題に焦点を当てています。

「諦めない障害年金」。申請の壁となっている申立書の作成を、一緒に乗り越えましょう。

[参考記事: がんで障害年金を受給できる?認定基準と申請のポイント]

がんによる障害年金申請をお考えの方、まずはお気軽にご相談ください。神戸の障害年金専門社労士が、あなたの状況を丁寧にお伺いします。

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目次

病歴・就労状況等申立書とは?がん患者が知っておくべき基本

障害年金の申請を進める前に、まず病歴・就労状況等申立書がどのような書類で、なぜ重要なのかを理解しておきましょう。

病歴・就労状況等申立書の役割と重要性

病歴・就労状況等申立書は、障害年金の請求時に必ず提出する書類の一つです。この申立書では、発病から現在までの経過、通院・治療の状況、日常生活や仕事への影響などを、請求者本人(またはご家族)の視点で記載します。

診断書は医師が医学的な観点から障害の状態を評価しますが、短い診察時間では患者さんの日常生活の細かな困難までは把握しきれません。そこで、病歴・就労状況等申立書が診断書を補完する役割を果たすのです。

審査では、診断書とこの申立書を照らし合わせながら、障害の全体像を把握します。そのため、申立書の内容は審査結果に大きく影響する可能性があります。特にがんの場合、抗がん剤の副作用による倦怠感や末梢神経障害など、客観的に評価しにくい症状については、申立書での具体的な記載が重要になります。

診断書との違い・補完関係

障害年金の申請には、主に以下の3つの書類が必要です。それぞれの役割を理解しておくことで、申立書に何を書くべきかが明確になります。

書類名 作成者 主な内容 重要度
診断書 医師 病名、医学的所見、障害の程度、日常生活能力の評価 ★★★★★
受診状況等証明書 初診医療機関の医師 初診日の証明(初診の医療機関と診断書作成医療機関が異なる場合) ★★★★☆
病歴・就労状況等申立書 本人/家族/社会保険労務士 発病から現在までの経過、日常生活の困難、就労状況の具体例 ★★★★☆

診断書は医学的評価が中心ですが、申立書では「実際の生活でどのように困っているか」を具体的に伝えることができます。たとえば、診断書に「倦怠感あり」と記載されていても、それが日常生活にどう影響しているかまでは詳しく書かれていないことがあります。

そこで申立書に「抗がん剤投与後3日間は倦怠感が強く、起き上がることもできず、食事や入浴に配偶者の介助が必要」と具体的に記載することで、診断書の内容を補完し、審査機関に障害の実態をより正確に伝えることができるのです。

次のセクションでは、がん患者の方が申立書を作成する際に直面する特有の課題について解説します。

がん患者特有の課題|なぜ病歴・就労状況等申立書の作成が難しいのか

病歴・就労状況等申立書は、診断書や受診状況等証明書と異なり、ご自身で作成する必要があります。しかし、がん患者の方にとって、この申立書の作成には特有の困難があります。ここでは、多くの方が直面する3つの課題を見ていきましょう。

見えにくい症状(倦怠感・副作用)の客観化が難しい

がんの治療、特に抗がん剤治療では、倦怠感、末梢神経障害(手足のしびれ)、食欲不振、下痢、吐き気など、さまざまな副作用が現れます。これらの症状は本人にとって非常につらいものですが、外見からはわかりにくく、客観的に表現することが難しいという特徴があります。

「とてもつらい」「苦しい」といった主観的な表現では、審査機関に症状の深刻さが十分に伝わりません。かといって、「どのように書けば客観的になるのか」がわからず、筆が進まないというケースが非常に多いのです。

治療スケジュールと就労状況の記載が複雑

がん治療は、手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤)など、複数の治療を組み合わせて長期間にわたって行われることが一般的です。また、2週間に1回の通院で抗がん剤投与を受け、投与後数日間は副作用で動けないといった周期的な症状の変動もあります。

このような複雑な治療スケジュールと、それに伴う日常生活や就労への影響を、限られたスペースの申立書にどう整理して記載するかで悩む方が多くいらっしゃいます。特に、働きながら治療を続けている場合、「就労状況」の欄に何をどう書くべきか、迷われる方が少なくありません。

診断書との整合性への不安と心理的負担

申立書は診断書を補完する書類です。しかし、診断書の内容と申立書の内容に矛盾があると、審査に悪影響を及ぼす可能性があります。「診断書にはこう書いてあるけれど、実際の生活はもっと大変」「診断書と違うことを書いたら不利になるのでは」という不安から、申立書の作成が進まなくなることがあります。

また、がん患者の方の中には、「まだ働けているのに障害年金を申請していいのか」という罪悪感や、「周囲に迷惑をかけている」という心理的負担を抱えている方も多くいらっしゃいます。こうした心理的な壁も、申立書作成を難しくする要因の一つです。

次のセクションでは、これらの課題を乗り越えるための具体的な方法、「失敗しない書き方5つのポイント」を詳しく解説します。

がん患者の病歴・就労状況等申立書|失敗しない書き方5つのポイント

ここからは、がん患者の方が病歴・就労状況等申立書を作成する際の具体的なポイントを解説します。これらのポイントを押さえることで、審査機関に障害の実態を正確に伝え、適切な評価を受けることができます。

ポイント1|がん特有の症状を「客観的事実」で記載する

がん治療の副作用、特に倦怠感や末梢神経障害は、外見からはわかりにくい症状です。しかし、障害年金の審査では、こうした症状が日常生活にどの程度影響しているかを、客観的な事実として伝える必要があります。

主観的な表現ではなく、客観的事実を記載する

審査する側は、あなたの生活を直接見ることができません。そのため、「とてもつらい」「非常に苦しい」といった感情的・主観的な表現では、症状の深刻さが伝わりにくいのです。

重要なのは、「いつ」「どのような状態になるか」「それによって何ができなくなるか」を具体的に記載することです。以下の例を参考にしてください。

❌ NG例(主観的):
「抗がん剤の副作用がとてもつらく、毎日苦しんでいます。」

✅ 推奨例(客観的):
「2週間に1回の抗がん剤投与(FOLFOX療法)を受けており、投与後3日間は強い倦怠感で起き上がることができません。この間、食事の準備や入浴は配偶者の介助が必要で、トイレへの移動も手すりにつかまりながらやっとの状態です。投与4日目以降は徐々に回復しますが、次の投与までの間も午後3時を過ぎると倦怠感が強まり、横になる必要があります。」

このように、治療の周期、症状が出る具体的なタイミング、できなくなること、援助の必要性を明記することで、審査機関に正確に伝わります。

数値や頻度を使って具体化する

末梢神経障害(手足のしびれ)の場合も、単に「手足がしびれる」ではなく、それによってどのような困難が生じているかを具体的に記載します。

✅ 推奨例:
「抗がん剤治療開始から6ヶ月が経過し、両手足の末梢神経障害が出現しました。シャツのボタンをかける、箸を持つ、ペンで字を書くなどの細かい作業ができなくなり、仕事ではキーボード入力に時間がかかるようになりました(以前の2倍以上)。また、階段の昇降時に足の感覚が鈍く、手すりにつかまらないと転倒の危険があります。」

ポイント2|治療の経過と日常生活の変化を時系列で整理する

がん治療は長期にわたり、手術、化学療法、放射線治療など複数の治療が段階的に行われます。申立書では、発病から現在までの経過を時系列で整理し、各段階で日常生活や就労状況がどう変化したかを明確に記載します。

3〜5年ごとに区切って記載する

病歴・就労状況等申立書は、通常3〜5年を一区切りとして記載します。ただし、がんの場合は、診断時、手術後、化学療法開始後など、治療の節目ごとに区切って記載する方が、症状の変化がわかりやすくなります。

記載例:

【令和○年○月〜令和○年○月】(初診〜診断確定)
「令和○年○月頃から下血があり、近所の内科クリニックを受診。大腸の精密検査が必要と言われ、○○総合病院を紹介されました。大腸内視鏡検査とCT検査の結果、大腸がん(ステージIII)と診断されました。診断後、手術に向けた準備を進めました。この時点では、仕事は通常通り継続していました。」

【令和○年○月〜令和○年○月】(手術〜術後回復)
「令和○年○月に○○総合病院で手術(大腸切除術)を受け、2週間入院しました。退院後は自宅療養となり、3ヶ月間休職しました。体力の回復に時間がかかり、家事や買い物などは家族に頼る状態でした。」

【令和○年○月〜現在】(化学療法中)
「令和○年○月から術後化学療法(FOLFOX療法)を開始し、現在も2週間に1回通院しています。抗がん剤投与後3日間は強い倦怠感で起き上がれず、その後も疲れやすい状態が続いています。会社には時短勤務(9時〜16時)で復職しましたが、通院日は有給休暇を取得し、体調が悪い日は在宅勤務にしてもらっています。」

障害認定日前後の状態を重点的に記載する

障害年金の審査では、「障害認定日」(原則として初診日から1年6ヶ月を経過した日)の時点での障害の状態が重要です。障害認定日前後の期間については、特に詳しく記載しましょう。

ポイント3|就労継続中でも「配慮・援助」を明記する

「働いているから障害年金はもらえない」と誤解されている方がいますが、これは正しくありません。障害年金は、働きながらでも受給できる可能性があります。重要なのは、「どのような配慮や援助を受けながら働いているか」を明確に記載することです。

時短勤務、配置転換、業務量調整などを具体的に

がん治療中の方の多くは、会社からさまざまな配慮を受けながら働いています。これらの配慮は、「援助が必要な状態である」ことの証拠になりますので、必ず記載してください。

✅ 記載すべき配慮・援助の例:

  • 勤務時間の短縮(フルタイムから時短勤務へ)
  • 配置転換(現場作業からデスクワークへ、営業から内勤へ)
  • 業務量の調整(担当業務の削減、ノルマの免除)
  • 通院日の有給休暇取得
  • 在宅勤務の許可
  • 同僚による業務のサポート
  • 重いものを持つ作業の免除

記載例:
「現在、時短勤務(9時〜16時、週5日)で働いています。以前はフルタイム(9時〜18時)で現場の管理業務も担当していましたが、体力的に難しくなり、デスクワーク中心の内勤に配置転換してもらいました。2週間に1回の通院日は有給休暇を取得し、抗がん剤投与後の体調が悪い日は在宅勤務にしてもらっています。業務量も以前の7割程度に減らしてもらい、重要な案件は同僚に引き継いでもらいました。」

「なぜ働いているのか」の理由も記載する

経済的な理由で働かざるを得ない状況がある場合は、それも記載することで、「働けている」のではなく「配慮を受けながらなんとか働いている」状態であることが伝わります。

記載例:
「子供の教育費と住宅ローンの支払いがあるため、経済的に働かざるを得ない状況です。会社の配慮で時短勤務を認めてもらっていますが、毎日帰宅後はすぐに横になる状態で、家事や育児を手伝うこともできません。」

ポイント4|診断書との整合性を必ず確認する

病歴・就労状況等申立書は、診断書の内容を補完する書類です。両者の内容に大きな矛盾があると、審査機関は「どちらが正しいのか」と疑問を持ち、不利に働く可能性があります。

診断書の「日常生活能力」欄と申立書の対応を確認

診断書には、日常生活動作(ADL)や就労状況について記載する欄があります。申立書を作成する際は、診断書のこれらの欄の内容と矛盾しないように注意してください。

たとえば、診断書に「家事はできない」と記載されているのに、申立書に「週末は料理をしている」と書くと矛盾が生じます。もし実際に時々料理をしているのであれば、「体調の良い日は簡単な料理を作ることもありますが、ほとんどの日は配偶者に任せています」といった形で、正確に記載しましょう。

診断書作成前に医師に伝えるべきこと

診断書と申立書の整合性を保つためには、診断書を医師に依頼する際に、日常生活の困難をしっかりと伝えておくことが重要です。医師は診察時の様子しか見ていないため、自宅での生活状況を詳しく知らないことがあります。

診断書依頼時には、以下のような情報を医師に伝えましょう:

  • 抗がん剤投与後の倦怠感の程度と期間
  • 日常生活で介助が必要な場面
  • 就労上の配慮や制限
  • 症状の日内変動や周期的変動

これらを口頭で伝えるだけでなく、メモにして渡すと、医師も診断書に反映しやすくなります。

ポイント5|NG表現を避け、認定基準を意識する

障害年金の審査は、「障害認定基準」に基づいて行われます。認定基準には、障害の程度を判断する際の基準が示されており、その中には「一般状態区分表」という、日常生活の制限度を5段階で評価する表があります。

「できる/できない」を明確にする

認定基準では、「何ができて、何ができないか」が重要な判断材料になります。曖昧な表現ではなく、明確に記載しましょう。

❌ NG例:
「体調が悪くて、いろいろなことが大変です。」

✅ 推奨例:
「入浴は週2回が限度で、それ以外の日は体を拭くだけです。買い物は妻に頼み、自分では行けません。階段の昇降は手すりにつかまりながらゆっくりとしかできず、外出時は常に疲労感があります。」

感情表現よりも事実を優先する

気持ちの面でつらいことは当然ですが、申立書では感情的な表現よりも、客観的な事実を優先して記載してください。感情表現が多いと、かえって信頼性が低く見られる可能性があります。

以下の表で、NG表現と推奨表現を比較してみましょう。

NG表現(主観的・感情的) 推奨表現(客観的・具体的)
抗がん剤の副作用がとてもつらくて、毎日苦しんでいます 抗がん剤投与後3日間は強い倦怠感で起き上がれず、食事・入浴に配偶者の介助が必要です
仕事がとても大変で、毎日疲れ果てています 時短勤務(9-16時)で週5日勤務。通院日は有給取得、抗がん剤投与翌日は在宅勤務。業務量は以前の7割程度に調整してもらっています
手足がしびれて困っています 末梢神経障害により、シャツのボタンをかける、箸を持つなどの細かい作業が困難。階段昇降時は手すりが必須で、転倒の危険があります
食欲がなくて体重が減りました 抗がん剤治療開始前68kgあった体重が、現在は56kgまで減少(12kg減)。1日2食が限度で、食事量は以前の半分程度です
家事ができなくて申し訳なく思っています 炊事・洗濯・掃除は配偶者が行っています。買い物も配偶者に依頼し、私は自宅で休んでいます

このように、主観的な表現を客観的事実に置き換えることで、審査機関に正確に伝わる申立書になります。

当事務所では、このような複雑なケースにも対応しています

  • がん特有の症状(倦怠感・副作用)の効果的な記載方法のアドバイス
  • 診断書作成前の医師への情報提供サポート
  • 病歴・就労状況等申立書の作成代行
  • 診断書と申立書の整合性チェック
  • 不支給決定後の再申請・審査請求

神戸・兵庫県で多数のがん患者の方の申請をサポートしてきた実績があります。詳しくはこちら

実践編|がん患者の病歴・就労状況等申立書の具体的な記入方法

ここからは、病歴・就労状況等申立書の実際の記入方法を、様式に沿って解説します。前のセクションで学んだ5つのポイントを意識しながら、具体的に書き進めていきましょう。

記入前の準備|必要な情報を整理する

申立書をスムーズに作成するためには、事前に必要な情報を整理しておくことが重要です。以下のチェックリストを参考に、手元に資料を揃えておきましょう。

準備するもの 確認すべき内容
診察券・お薬手帳 通院歴、医療機関名、診察の頻度
診断書(既に取得している場合) 診断名、治療内容、日常生活能力の評価
治療スケジュールのメモ 抗がん剤投与の頻度、入院・手術の時期
就労証明書・給与明細 勤務時間の変更、休職期間、収入の変化
日常生活の記録 症状の日記、できなくなったこと、援助の内容

特に、症状の日記をつけている場合は非常に役立ちます。「抗がん剤投与後○日間は動けない」「週に○回は家事ができない」といった具体的な情報が、申立書の説得力を高めます。

「発病から現在まで」の書き方(がん特有の注意点)

病歴・就労状況等申立書の表面には、「発病から現在まで」の欄があります。この欄には、通院歴、入院歴、治療内容、症状の経過などを時系列で記載します。

がん特有のポイント

1. 初診から確定診断までの経過を明確に

がんの場合、最初に受診した医療機関(例:近所の内科クリニック)と、がんと診断された医療機関(例:総合病院)が異なることがよくあります。初診日がどこになるかは非常に重要なので、最初に症状が出て受診した日と医療機関名を正確に記載してください。

記載例:
「令和○年○月頃から下血があり、○月×日に○○クリニック(内科)を初めて受診。大腸の精密検査が必要と言われ、同月△日に□□総合病院を紹介受診。大腸内視鏡検査、CT検査の結果、令和○年○月に大腸がん(ステージIII)と確定診断されました。」

2. 治療の節目ごとに区切る

がん治療は、診断→手術→化学療法というように複数の段階があります。3〜5年で一区切りにするのが基本ですが、がんの場合は治療の節目で区切ると、症状の変化がわかりやすくなります。

区切り方の例:

  • 【令和○年○月〜○年○月】初診〜診断確定
  • 【令和○年○月〜○年○月】手術・入院〜術後回復
  • 【令和○年○月〜現在】化学療法中

3. 治療内容と副作用を具体的に

抗がん剤の種類(例:FOLFOX療法、TC療法)、投与の頻度(例:2週間に1回)、副作用の内容と程度を記載します。

記載例:
「令和○年○月から術後化学療法(FOLFOX療法)を開始。2週間に1回、□□総合病院で抗がん剤投与を受けています。投与後3日間は強い倦怠感、吐き気、下痢があり、ほとんど動けません。4日目以降は徐々に回復しますが、次の投与までの間も午後は倦怠感が強く、横になる必要があります。また、治療開始から6ヶ月後に手足の末梢神経障害(しびれ)が出現し、現在も継続しています。」

「日常生活の状況」の書き方(倦怠感・副作用の表現)

申立書の裏面には、「日常生活の状況」を記載する欄があります。ここでは、症状が日常生活にどのように影響しているかを具体的に記載します。

がん特有のポイント

1. 周期的な症状の変動を明記する

抗がん剤治療を受けている場合、投与直後と投与から数日後では症状が大きく異なります。この変動を明記することで、「良い時だけを見て判断される」ことを防ぎます。

記載例:
「2週間に1回の抗がん剤投与を受けており、投与後3日間は強い倦怠感で起き上がることもできず、食事の準備、入浴は配偶者の介助が必要です。トイレへの移動も手すりにつかまりながらやっとの状態です。投与4日目以降は徐々に症状が軽減しますが、午後3時を過ぎると倦怠感が強まり、横になる必要があります。買い物や外出は配偶者に頼み、自分では行けません。」

2. 家族の援助を具体的に記載する

配偶者や家族がどのような援助をしているかを明記することで、「一人では日常生活が困難」であることを示せます。

記載例:
「炊事、洗濯、掃除は配偶者が行っています。買い物も配偶者に依頼し、私は自宅で休んでいます。抗がん剤投与後3日間は、食事の準備、入浴の介助を配偶者に頼んでいます。以前は家族の夕食を作ることもありましたが、現在は全くできません。」

3. 「できなくなったこと」を明確に

治療前と比較して、できなくなったことを具体的に記載します。

記載例:
「治療前は週末に家族でドライブや買い物に出かけていましたが、現在は疲労感が強く、外出は通院以外ほとんどできません。以前は趣味で登山をしていましたが、体力が低下し、現在は階段の昇降も手すりにつかまりながらゆっくりとしかできません。」

「就労状況」の書き方(配慮・援助の具体例)

就労状況の欄には、現在の勤務状況と、会社からどのような配慮を受けているかを記載します。

がん特有のポイント

1. 配置転換・業務内容の変更を明記

記載例:
「○○株式会社に勤務しています。診断前はフルタイム(9時〜18時)で製造現場の管理業務を担当していましたが、診断後3ヶ月休職し、復職後は時短勤務(9時〜16時)に変更してもらいました。また、体力的に現場作業が困難なため、デスクワーク中心の内勤に配置転換してもらっています。」

2. 通院・治療のための休暇取得を記載

記載例:
「2週間に1回の通院日(抗がん剤投与)は有給休暇を取得しています。投与翌日も体調が悪いため、在宅勤務にしてもらっています(月2〜3回)。」

3. 業務量の調整・同僚のサポートを記載

記載例:
「業務量は以前の7割程度に減らしてもらい、重要な案件は同僚に引き継ぎました。体調が悪い日は、同僚に業務をサポートしてもらっています。以前は残業もありましたが、現在は定時で帰宅しています。」

4. 経済的理由で働かざるを得ない状況も記載

記載例:
「子供の教育費(大学の学費年120万円)と住宅ローン(月8万円)の支払いがあり、経済的に働かざるを得ない状況です。会社の配慮で時短勤務を認めてもらっていますが、帰宅後はすぐに横になる状態で、家事や育児を手伝うこともできません。」

次のセクションでは、診断書との整合性を確保するための具体的な方法を解説します。

診断書との整合性を確保する方法

病歴・就労状況等申立書と診断書の内容に矛盾があると、審査機関は「どちらが正しいのか」と疑問を持ち、審査に悪影響を及ぼす可能性があります。ここでは、診断書との整合性を確保するための具体的な方法を解説します。

診断書依頼前に医師に伝えるべきこと

診断書と申立書の整合性を保つ最も効果的な方法は、診断書を医師に依頼する段階で、日常生活の困難を正確に伝えておくことです。

医師が知らない情報を伝える

医師は診察時の様子しか見ていないため、自宅での生活状況や、抗がん剤投与後の数日間の状態を詳しく知らないことがあります。以下のような情報を、診断書依頼時に必ず伝えましょう。

医師に伝えるべき情報のリスト:

  • 抗がん剤投与後の症状:投与後何日間、どのような症状があるか(倦怠感、吐き気、下痢など)
  • 日常生活での困難:入浴、食事、外出など、何に介助が必要か
  • 家族の援助内容:配偶者が炊事・洗濯・買い物を行っているなど
  • 就労上の配慮:時短勤務、配置転換、業務量の調整など
  • 症状の日内変動・周期的変動:午後に悪化する、投与後3日間は動けないなど

メモにして渡すと効果的

口頭で伝えるだけでなく、これらの情報をメモにまとめて医師に渡すと、診断書に反映してもらいやすくなります。以下のような形式でまとめましょう。

メモの例:

日常生活の状況について

  • 抗がん剤投与(FOLFOX療法、2週間に1回)後3日間は、強い倦怠感で起き上がれず、食事・入浴に妻の介助が必要
  • 投与4日目以降も午後は倦怠感が強く、横になる必要あり
  • 炊事・洗濯・買い物は妻が行い、私は自宅で休んでいる
  • 外出は通院以外ほとんどできない
  • 時短勤務(9-16時)で週5日勤務、通院日は有給取得

診断書と申立書の「ズレ」を防ぐチェックポイント

診断書を受け取ったら、申立書を作成する前に、以下のチェックポイントで内容を確認しましょう。

チェック項目 確認すべきこと
日常生活能力 診断書の「日常生活能力の判定」欄と、申立書の「日常生活の状況」の記載が一致しているか
就労状況 診断書の「現症時の就労状況」欄と、申立書の「就労状況」の記載が一致しているか
治療内容 診断書の「治療内容」欄と、申立書の「通院・治療の状況」が一致しているか
症状の程度 診断書の「症状」欄と、申立書の「日常生活への影響」の記載が矛盾していないか
介助の必要性 診断書に「介助が必要」と記載されている場合、申立書に具体的な介助内容が記載されているか

矛盾がある場合の対処法

もし診断書と申立書の内容に矛盾が見つかった場合は、以下の対処を検討してください。

  • 医師に再度説明する:診断書の内容が実態と異なる場合、医師に再度説明し、訂正してもらえるか相談する
  • 申立書で補足する:診断書の記載が簡潔な場合、申立書で詳しく補足する(ただし矛盾しないように)
  • 社会保険労務士に相談する:判断が難しい場合は、障害年金に詳しい社労士に相談する

診断書と申立書は「補完関係」

重要なのは、診断書と申立書が完全に同じ内容である必要はないということです。診断書は医学的評価、申立書は生活上の困難の具体例を記載するもので、「補完関係」にあります。診断書に書かれていない生活上の困難を申立書で詳しく説明することは、むしろ推奨されます。ただし、基本的な事実(就労状況、治療内容など)は一致している必要があります。

次のセクションでは、自分で申立書を書くべきか、専門家に依頼すべきかの判断ポイントを解説します。

自分で書く?専門家に依頼する?判断のポイント

病歴・就労状況等申立書は、ご自身で作成することも、社会保険労務士などの専門家に依頼することもできます。どちらを選ぶべきかは、ご自身の状況や、申請の複雑さによって異なります。ここでは、判断の際のポイントを解説します。

自分で書ける場合・専門家に依頼すべき場合

以下のチェックリストで、ご自身の状況を確認してみましょう。

【自分で作成できる可能性が高いケース】

  • ✅ 治療の経過がシンプルで、転院や中断がない
  • ✅ 初診日が明確で、初診の医療機関のカルテが残っている
  • ✅ 診断書の内容が実態を正確に反映している
  • ✅ 文章を書くことに抵抗がなく、時間的余裕がある
  • ✅ この記事の内容を参考に、具体的な記載ができる
  • ✅ 体調が安定しており、書類作成に集中できる

【専門家に依頼した方が良いケース】

  • ❌ 初診日の証明が困難(初診の医療機関が廃院、カルテ廃棄など)
  • ❌ 複数のがん種、または他の疾患も併発している
  • ❌ 診断書の内容が実態と異なる、または不十分
  • ❌ 過去に不支給決定を受けたことがある
  • ❌ 障害認定日の遡及請求を希望している
  • ❌ 抗がん剤の副作用で集中力が続かない、書類作成が困難
  • ❌ 申請に不安があり、確実に進めたい

判断フローチャート

以下のフローチャート形式でも確認できます。

質問 YES → 次の質問へ / NO → 専門家依頼を検討
初診日は明確ですか? YES → 次へ / NO → 専門家依頼推奨
診断書は実態を反映していますか? YES → 次へ / NO → 専門家依頼推奨
治療経過はシンプルですか? YES → 次へ / NO → 専門家依頼を検討
文章作成に時間を取れますか? YES → 次へ / NO → 専門家依頼を検討
体調は書類作成に耐えられますか? YES → 自分で作成可能 / NO → 専門家依頼を検討

社会保険労務士サポートの具体的内容と費用対効果

社会保険労務士に依頼した場合、以下のようなサポートを受けることができます。

当事務所のサポート内容

  • 初診日の調査・証明:初診の医療機関が廃院している場合の調査、代替証明の検討
  • 診断書作成前のアドバイス:医師に伝えるべき情報の整理、診断書依頼時のサポート
  • 病歴・就労状況等申立書の作成代行:ヒアリングに基づき、認定基準を意識した申立書を作成
  • 診断書と申立書の整合性チェック:矛盾がないか専門的にチェック
  • 提出書類の総合確認:記入漏れ、添付書類の不備がないか確認
  • 不支給時の再申請・審査請求:不支給決定後のサポート

費用対効果の考え方

社会保険労務士への報酬は、一般的に着手金と成功報酬で構成されます。当事務所では、初回相談は無料で承っており、費用についても明確にご説明いたします。

障害年金は、認定されれば年額数十万円から百万円以上の受給が見込めます。また、障害認定日での遡及請求が認められれば、最大5年分の年金を一括で受け取ることも可能です。専門家に依頼することで受給の可能性が高まるのであれば、費用対効果は十分にあると言えるでしょう。

「諦めない」ことが何より重要

自分で作成する場合も、専門家に依頼する場合も、最も大切なのは「諦めない」ことです。申立書の作成は確かに簡単ではありませんが、この記事のポイントを参考にすれば、ご自身でも作成は可能です。もし途中で不安になったり、行き詰まったりした場合は、いつでも専門家に相談することができます。

次のセクションでは、実際にがんで障害年金を受給された方の事例をご紹介します。

がん患者の障害年金受給事例3選

ここでは、当事務所でサポートさせていただいた、がん患者の方々の障害年金受給事例をご紹介します。それぞれ異なる状況でしたが、適切な申立書の作成と専門的なサポートにより、受給が実現しました。

※以下の事例は、個人情報保護のため、内容を一部変更した架空の事例です。

事例1:大腸がん・術後化学療法中・時短勤務(障害厚生年金2級)

【背景】

Aさん(50代男性、神戸市在住)は、製造業の管理職として勤務していましたが、50歳の時に下血があり、近所のクリニックを受診。精密検査の結果、大腸がん(ステージIII)と診断されました。手術後、術後化学療法(FOLFOX療法)を2週間に1回受けており、抗がん剤の副作用で倦怠感、末梢神経障害(手足のしびれ)、食欲不振などの症状が続いていました。

妻と大学生の長男、高校生の長女の4人家族。住宅ローンと教育費の支払いがあり、経済的に働かざるを得ない状況でしたが、フルタイムでの勤務は困難になっていました。会社の配慮で時短勤務(9時〜16時)に変更し、デスクワーク中心の業務に配置転換してもらっていましたが、それでも帰宅後はすぐに横になる状態でした。

【困難だった点】

Aさんが最も悩んでいたのは、病歴・就労状況等申立書の書き方でした。「倦怠感がつらい」という主観的な感覚を、どのように客観的に表現すればいいのかがわからず、何度も書き直しては挫折していました。また、「まだ働けているのに障害年金を申請していいのか」という罪悪感もあり、申請を躊躇していました。

妻の勧めで、当事務所に相談に来られました。

【サポート内容】

当事務所では、まずAさんとご家族から詳しくヒアリングを行いました。抗がん剤投与後の3日間の状態、投与後4日目以降の日常生活、就労上の配慮内容などを丁寧にお聞きし、それを客観的な事実として整理しました。

特に以下の点を申立書に明記しました:

  • 抗がん剤投与後3日間は起き上がれず、食事・入浴に妻の介助が必要
  • 投与4日目以降も午後は倦怠感が強く、横になる必要がある
  • 時短勤務、配置転換、業務量の調整など、会社から多くの配慮を受けている
  • 経済的理由で働かざるを得ないが、帰宅後は家事・育児を一切手伝えない
  • 末梢神経障害で細かい作業が困難(キーボード入力に時間がかかる)

また、診断書作成前に、主治医に伝えるべき情報をメモにまとめ、Aさんに渡しました。診断書にも日常生活の困難が反映され、申立書との整合性が取れた形で提出できました。

【結果】

申請から約3ヶ月後、障害厚生年金2級の認定を受けることができました。年額約130万円(月額約11万円)の受給が決定し、Aさんご家族の経済的不安は大きく軽減されました。

【ご本人の声】

「自分で申立書を書こうとしましたが、何度も挫折していました。社労士の先生に相談して本当に良かったです。『働きながらでも受給できる』『配慮を受けているのは援助が必要だからだ』という言葉に救われました。諦めなくて良かったです。」

事例2:乳がん・再発転移・初診日証明困難ケース(障害基礎年金2級)

【背景】

Bさん(50代女性、兵庫県内在住)は、45歳の時に乳がんと診断され、手術と化学療法を受けました。一旦は寛解しましたが、50歳の時に肺とリンパ節への転移が見つかり、再度化学療法を開始しました。抗がん剤の副作用で全身倦怠感が強く、日常生活に大きな支障が出ていました。

Bさんは自営業(フリーランスのデザイナー)でしたが、仕事の継続が困難になり、収入が大幅に減少していました。

【困難だった点】

Bさんのケースで最も困難だったのは、初診日の証明でした。最初に乳がんの症状(しこり)に気づいて受診した個人クリニックが、すでに廃院しており、カルテが残っていませんでした。当時の診察券もなく、初診日を証明する書類がない状態でした。

また、自営業のため、仕事を完全に休んでいるわけではなく、体調の良い日に在宅で少しだけ仕事をしていました。「仕事をしていると言ったら不利になるのでは」という不安もありました。

【サポート内容】

初診日の証明については、当事務所で以下の代替資料を準備しました:

  • 当時の健康保険の被保険者記録(初診日の頃に医療費がかかっていることの証明)
  • ご家族の証言(受診状況申立書)
  • 当時の日記やメモ(症状や受診について記載があった)
  • 次に受診した総合病院の診療情報提供書(紹介元の記載から初診時期を推定)

これらの資料を組み合わせて、初診日を「相当因果関係」で証明する方針で進めました。

病歴・就労状況等申立書では、「体調の良い日に在宅で少し仕事をしているが、締め切りを守れず、収入は以前の3割以下に減少している」という実態を正確に記載しました。「仕事ができない状態である」ことを強調するのではなく、「仕事に大きな制限がある」という客観的事実を記載する方針としました。

【結果】

初診日の証明資料が功を奏し、無事に初診日が認められました。申請から約4ヶ月後、障害基礎年金2級の認定を受けることができました。年額約82万円(月額約6.8万円)の受給が決定しました。

【ご本人の声】

「初診のクリニックが廃院していて、もう無理だと諦めかけていました。でも、社労士の先生が『諦めないで、代替資料で証明できます』と言ってくださり、本当に助かりました。受給が決まって、治療に専念できる安心感が得られました。」

事例3:胃がん・不支給決定後の再申請で成功(障害厚生年金3級)

【背景】

Cさん(60代男性、神戸市在住)は、58歳の時に胃がんと診断され、胃の全摘出手術を受けました。術後は食事量が大幅に減少し、体重も15kg減少。ダンピング症候群(食後の冷や汗、動悸、めまい)や貧血の症状があり、日常生活に支障が出ていました。

会社員として勤務していましたが、体力的に以前のような働き方はできず、時短勤務で何とか働いていました。

【困難だった点】

Cさんは、最初は自分で障害年金を申請しましたが、不支給の決定を受けてしまいました。不支給理由は、「日常生活に著しい制限があるとは認められない」というものでした。

Cさんが自分で作成した申立書を拝見したところ、「胃を全摘出した」「体重が減った」という事実は書かれていましたが、それが日常生活にどう影響しているかの具体的な記載が不足していました。また、診断書にも日常生活の困難が十分に反映されていませんでした。

不支給決定を受けて落胆していたCさんでしたが、「もう一度挑戦したい」という強い希望があり、当事務所に相談に来られました。

【サポート内容】

再申請にあたり、当事務所では以下の対策を行いました:

1. 診断書の見直し
主治医に、日常生活の困難を改めて詳しく伝え、診断書の内容を充実させてもらいました。特に、ダンピング症候群の症状、食事の制限、体重減少の影響などを具体的に記載してもらいました。

2. 申立書の全面的な書き直し
前回の申立書では不足していた、以下の点を詳しく記載しました:

  • 食事は1日5〜6回に分けて少量ずつ摂る必要がある(1回の食事量は子供用茶碗1杯程度)
  • 食後30分以内にダンピング症候群の症状(冷や汗、動悸、めまい)が出現し、横になる必要がある
  • 貧血のため、階段昇降や長時間の立ち仕事ができない
  • 体力低下で、外出は通院と近所のコンビニ程度
  • 時短勤務(9時〜15時)で週4日勤務、重い物を持つ作業は免除、デスクワーク中心に配置転換

【結果】

再申請から約3ヶ月後、今度は障害厚生年金3級の認定を受けることができました。年額約60万円(月額約5万円)の受給が決定しました。不支給から一転、受給が認められたことで、Cさんは大変喜ばれました。

【ご本人の声】

「一度不支給になって、もうダメだと思っていました。でも、『諦めない障害年金』という言葉を信じて、もう一度挑戦して本当に良かったです。申立書の書き方で、こんなに結果が変わるとは思いませんでした。専門家の力を借りることの大切さを実感しました。」

以上の3つの事例から、がんによる障害年金の受給には、病歴・就労状況等申立書の内容が大きく影響することがお分かりいただけたと思います。症状を客観的に記載すること、診断書との整合性を保つこと、初診日の証明を適切に行うことが、受給への鍵となります。

次のセクションでは、よくある質問にお答えします。

よくある質問(Q&A)

がん患者の方から、病歴・就労状況等申立書や障害年金申請についてよくいただく質問にお答えします。

Q1: 働きながらでも障害年金は受給できますか?

A: はい、働きながらでも受給できる可能性があります。

障害年金は、「働いているかどうか」ではなく、「どの程度の障害があるか」「日常生活や就労にどの程度の制限があるか」で判断されます。時短勤務、配置転換、業務量の調整など、会社から配慮を受けながら働いている場合、それは「援助が必要な状態」の証拠になります。

申立書には、どのような配慮を受けているか、なぜ働いているのか(経済的理由など)を具体的に記載することが重要です。フルタイムで制限なく働けている場合は受給が難しくなりますが、配慮を受けながら何とか働いている状態であれば、受給の可能性は十分にあります。

Q2: 申立書は家族が代筆してもいいですか?

A: はい、家族による代筆は認められています。

病歴・就労状況等申立書は、本人が作成するのが基本ですが、体調が悪く自分で書けない場合は、家族が代筆することができます。その場合、申立書の最後の署名欄に「代筆者」として家族の氏名を記載してください。

ただし、内容は本人の状況を正確に反映したものである必要があります。家族が代筆する場合でも、本人からしっかりとヒアリングを行い、本人の言葉で伝えるように心がけてください。

また、抗がん剤の副作用で集中力が続かない、文章を書く体力がないという場合は、社会保険労務士に作成を依頼することも可能です。

Q3: 診断書と申立書の内容が少し違っても大丈夫ですか?

A: 基本的な事実が一致していれば、詳しさの違いは問題ありません。

診断書は医学的評価が中心で、申立書は日常生活の具体例を記載するものです。両者は「補完関係」にあるため、完全に同じ内容である必要はありません。

たとえば、診断書に「倦怠感あり」と簡潔に記載されている場合、申立書で「抗がん剤投与後3日間は倦怠感で起き上がれず、食事・入浴に配偶者の介助が必要」と詳しく説明することは、むしろ推奨されます。

ただし、基本的な事実(就労状況、治療内容、症状の有無など)に矛盾があると問題になります。たとえば、診断書に「フルタイム勤務」と書かれているのに、申立書に「休職中」と書くような矛盾は避けてください。

Q4: 抗がん剤の副作用はどのように書けばいいですか?

A: 「いつ」「どのような症状が出るか」「それによって何ができないか」を具体的に記載してください。

抗がん剤の副作用は、外見からはわかりにくく、客観的に表現するのが難しい症状です。以下のポイントを意識して記載しましょう:

  • 治療の周期を明記:「2週間に1回、FOLFOX療法の抗がん剤投与を受けている」
  • 症状が出るタイミング:「投与後3日間は」「投与翌日から1週間は」
  • 具体的な症状:「強い倦怠感で起き上がれない」「吐き気で食事がとれない」「手足のしびれで箸が持てない」
  • 援助の必要性:「配偶者の介助が必要」「横になる必要がある」
  • 生活への影響:「買い物に行けない」「家事ができない」「階段昇降が困難」

「つらい」「苦しい」という感情表現ではなく、客観的な事実として記載することが重要です。

Q5: 申立書の作成にどのくらい時間がかかりますか?

A: 個人差がありますが、準備を含めて数日から1週間程度が目安です。

申立書の作成には、以下の時間がかかります:

  • 情報の整理:通院歴、治療内容、症状の経過などを整理(半日〜1日)
  • 下書き:内容を考えながら下書きを作成(1〜2日)
  • 診断書との照合:診断書の内容と矛盾がないか確認(半日)
  • 清書:最終版を清書(半日)

ただし、がん治療中の方は、体調の良い日に少しずつ進めることになるため、実際には1〜2週間かかることもあります。無理をせず、体調に合わせて進めてください。

体調が悪く作成が困難な場合、または複雑なケースで不安がある場合は、社会保険労務士に依頼することで、負担を軽減できます。

まとめ|がん患者の病歴・就労状況等申立書作成を諦めない

がんの治療を続けながら、経済的な不安を抱えている方にとって、障害年金は大きな支えとなります。しかし、その申請の壁となっているのが、病歴・就労状況等申立書の作成です。

この記事では、がん患者の方が申立書を作成する際の5つのポイントをご紹介しました。改めて振り返ってみましょう。

【失敗しない書き方5つのポイント】

  1. がん特有の症状を「客観的事実」で記載する
    「つらい」ではなく、「いつ、どのような状態になるか、何ができないか」を具体的に
  2. 治療の経過と日常生活の変化を時系列で整理する
    治療の節目ごとに区切り、症状の変化を明確に
  3. 就労継続中でも「配慮・援助」を明記する
    時短勤務、配置転換などの配慮は「援助が必要な状態」の証拠
  4. 診断書との整合性を必ず確認する
    基本的な事実が一致しているか、矛盾がないかをチェック
  5. NG表現を避け、認定基準を意識する
    感情的な表現ではなく、「できる/できない」を明確に

これらのポイントを意識することで、審査機関に障害の実態を正確に伝え、適切な評価を受けることができます。

また、自分で作成する場合と、専門家に依頼する場合、それぞれにメリットがあります。ご自身の状況、申請の複雑さ、体調などを考慮して、最適な方法を選択してください。途中で不安になったり、行き詰まったりした場合は、いつでも専門家に相談することができます。

最も大切なのは、「諦めない」ことです。

申立書の作成は確かに簡単ではありません。抗がん剤の副作用で集中力が続かない、書き方がわからない、診断書との整合性が不安――そういった壁にぶつかることもあるでしょう。

しかし、がんで障害年金を受給している方は実際にいらっしゃいます。適切な申立書を作成し、必要な書類を揃えることで、受給の可能性は十分にあります。一度不支給になったとしても、再申請で成功した事例もあります。

あなたの権利を、私たちと一緒に守りましょう。

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がんによる障害年金申請は、専門的な知識と経験が必要です。当事務所では、初回相談を無料で承っております。あなたの状況に応じて、最適な申請方法をご提案いたします。

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[参考記事: がんで障害年金を受給できる?認定基準と申請のポイント]
[参考記事: 障害年金の初診日が証明できない場合の対処法]
[参考記事: 清水総合法務事務所について]

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