「夫が若年性認知症と診断されて、仕事も辞めざるを得なくなった。これからの生活費や介護費用のことを考えると、不安で眠れない」「認知症でも障害年金がもらえると聞いたけれど、本当なのだろうか」——このような悩みを抱えていませんか?
認知症、特に65歳未満で発症する若年性認知症は、働き盛りの時期に発症するため、収入の減少や途絶が家計に深刻な影響を与えます。医療費や介護費用の負担も重なり、経済的な不安は日に日に大きくなっていくでしょう。さらに、ご家族は日々の介護に追われ、心身ともに疲弊している方も少なくありません。
しかし、認知症でも障害年金を受給できる可能性があります。障害年金は、病気やケガで日常生活や仕事に支障が出た場合に受け取れる公的な年金制度です。若年性認知症も障害年金の対象疾患であり、一定の要件を満たせば、月額6万円〜8万円程度(障害基礎年金2級の場合)の年金を受給できます。
ただし、認知症の障害年金申請には、いくつかの難しさがあることも事実です。「いつから症状が始まったのか分からない」という初診日の問題や、本人に病識がないために医師が日常生活の実態を把握しきれないという問題などです。また、申請書類の準備には多くの時間と労力が必要で、介護と並行して行うのは大きな負担となります。
この記事では、認知症で障害年金を受給するために必要な情報を、社会保険労務士が分かりやすく解説します。具体的には、以下の内容をお伝えします。
- 認知症で障害年金を受給できる3つの条件
- 障害等級(1級・2級・3級)の認定基準と受給額の目安
- 申請の流れと必要書類の準備方法
- 初診日が不明確な場合や、本人に病識がない場合の対処法
- 65歳以上の方が例外的に申請できるケース
- 社労士に依頼するメリットと、当事務所のサポート内容
認知症の障害年金申請は、確かに簡単ではありません。しかし、専門家のサポートを受けることで、複雑なケースでも受給できる可能性が高まります。経済的な不安を少しでも軽減し、ご本人とご家族が安心して生活できるよう、この記事が参考になれば幸いです。
申請について不安な点やご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。清水総合法務事務所では、「諦めない障害年金」をコンセプトに、認知症の障害年金申請を専門的にサポートしています。初診日の証明が難しいケースや、複雑な状況にも対応いたしますので、まずは無料相談からお問い合わせください。
認知症でも障害年金は受給できる
「認知症で障害年金がもらえるなんて知らなかった」という声をよく耳にします。実は、認知症は障害年金の対象疾患であり、一定の条件を満たせば受給することができます。まずは、障害年金の基本的な仕組みと、認知症がどのように対象となるのかを確認していきましょう。
障害年金とは
障害年金は、病気やケガによって日常生活や仕事に支障が出た場合に、国から支給される公的な年金制度です。多くの方は「年金=老後にもらうもの」というイメージをお持ちかもしれませんが、障害年金は年齢に関わらず受給できる制度です(ただし、原則として65歳未満での申請が必要です)。
障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があります。病気やケガで初めて医療機関を受診した日(初診日)に、どの年金制度に加入していたかによって、受け取れる年金の種類が決まります。
- 障害基礎年金: 初診日に国民年金に加入していた場合(自営業、学生、無職の方など)
- 障害厚生年金: 初診日に厚生年金に加入していた場合(会社員、公務員など)
障害厚生年金は、障害基礎年金に上乗せして支給されるため、会社員として働いていた方は、より手厚い保障を受けられます。また、障害厚生年金には3級という等級もあり、比較的軽度の障害でも受給できる可能性があります。
認知症が対象になる理由
認知症は、国の定める障害認定基準において「症状性を含む器質性精神障害」という分類に該当します。これは、脳の器質的な障害によって精神機能に支障が生じる疾患を指します。
障害年金では、病名そのものではなく、「日常生活能力がどの程度低下しているか」が認定の判断基準となります。認知症の場合、記憶障害、見当識障害(時間や場所が分からなくなる)、判断力の低下などによって、食事、入浴、金銭管理、服薬管理といった日常生活の基本的な行動に支障が出ます。このような日常生活能力の低下が一定の基準を満たせば、障害年金の支給対象となるのです。
認知症の種類は問いません。アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など、いずれの認知症であっても、日常生活への支障の程度によって認定されます。
若年性認知症と障害年金の関係
若年性認知症とは、65歳未満で発症した認知症のことを指します。認知症というと高齢者の病気というイメージが強いかもしれませんが、実際には40代、50代で発症する方も少なくありません。厚生労働省の調査によると、若年性認知症の発症平均年齢は51歳とされています。
若年性認知症の最大の問題は、働き盛りの時期に発症するため、経済的な影響が極めて大きいことです。症状が進行すると仕事を続けることが難しくなり、収入が途絶えます。その一方で、住宅ローンの返済や子どもの教育費など、人生で最もお金がかかる時期と重なることが多いのです。さらに、医療費や介護費用の負担も加わり、家計は急速に逼迫します。
このような状況において、障害年金は生活を支える重要な制度となります。月額6万円〜8万円程度の障害基礎年金2級を受給できれば、デイサービスや訪問介護などの介護サービスの利用にも充てることができ、ご家族の介護負担の軽減にもつながります。
ただし、障害年金を受給するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。次のセクションでは、その具体的な受給要件について詳しく解説していきます。
認知症で障害年金を受給できる3つの条件
障害年金を受給するためには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。それぞれの条件について、認知症特有の注意点も含めて詳しく解説していきます。
初診日の要件(最重要)
初診日とは、認知症の症状によって初めて医療機関を受診した日のことです。この初診日は、障害年金の申請において最も重要な要素の一つです。なぜなら、初診日によって以下のことが決まるからです。
- どの年金制度(国民年金または厚生年金)に加入していたか
- 保険料納付要件を満たしているか
- 障害基礎年金と障害厚生年金のどちらを受給できるか
- 障害認定日(初診日から1年6ヶ月後)がいつになるか
初診日に国民年金または厚生年金に加入していることが、障害年金を受給するための大前提となります。
認知症特有の問題として、初診日の特定が非常に難しいケースが多くあります。なぜなら、認知症は徐々に進行する病気であり、「いつから症状が始まったのか」を本人も家族も明確に覚えていないことが多いためです。
例えば、以下のようなケースがよくあります。
【よくある初診日の問題】
- 最初は「年のせいだろう」と思い、受診しなかった
- 最初に内科や健康診断で相談したが、「加齢によるもの」と言われた
- その後、物忘れがひどくなり、専門医(神経内科や物忘れ外来)を受診して認知症と診断された
このような場合、最初に内科を受診した日が初診日なのか、それとも専門医を受診した日が初診日なのかが問題となります。原則として、認知症に関連する症状で初めて医療機関を受診した日が初診日となりますが、判断が難しいケースも少なくありません。
初診日の証明には、医療機関が発行する「受診状況等証明書」という書類が必要です。しかし、古いカルテが既に廃棄されている場合や、当時の診療録が残っていない場合には、証明が困難になることもあります。このような場合の対処法については、後ほど詳しく解説します。
保険料納付要件
障害年金を受給するためには、初診日の前日時点で、一定期間の年金保険料を納付していることが必要です。これを「保険料納付要件」と呼びます。
具体的には、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
原則:
初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上あること。
特例(令和8年4月1日前に初診日がある場合):
初診日において65歳未満であり、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納期間がないこと。
多くの方は、この特例を満たすことで保険料納付要件をクリアできます。つまり、初診日の前々月までの1年間、きちんと保険料を納めていれば大丈夫ということです。
ただし、この要件は「初診日の前日」時点で判定されます。そのため、初診日が判明してから慌てて保険料を納付しても、要件を満たすことはできません。日頃から年金保険料をきちんと納付しておくことが重要です。
なお、学生納付特例制度や納付猶予制度を利用していた期間は、保険料免除期間として扱われるため、要件を満たす期間に含まれます。
障害状態の要件
3つ目の要件は、障害の状態が国の定める基準に該当することです。認知症の場合、日常生活能力がどの程度低下しているかが判断のポイントとなります。
障害の状態は、原則として「障害認定日」時点で判定されます。障害認定日とは、初診日から1年6ヶ月が経過した日、または1年6ヶ月以内に症状が固定した日のことです。認知症の場合、多くは初診日から1年6ヶ月後が障害認定日となります。
ただし、障害認定日の時点では障害の程度が軽く、その後症状が悪化した場合には、「事後重症による請求」を行うことができます。これは、現在の障害状態で申請する方法です。認知症は進行性の疾患であるため、事後重症請求を行うケースも少なくありません。
障害年金には、障害の程度に応じて1級・2級・3級(障害厚生年金のみ)の等級があります。認知症の場合、以下のような状態が各等級の目安となります。
- 1級: 日常生活のほとんどの場面で常時援助が必要。食事、排泄、着替え、入浴などに介助が必要で、外出時は常に付き添いが必要。
- 2級: 日常生活に著しい制限があり、援助が必要。食事や排泄は一部自立しているが、金銭管理や服薬管理ができず、外出には見守りが必要。
- 3級: 労働に著しい制限がある。日常生活は概ね自立しているが、仕事を続けることが困難。
具体的な認定基準と受給額については、次のセクションで詳しく解説します。
以下の表で、3つの受給要件をチェックしてみましょう。
【重要】3つの受給要件チェックリスト
| 要件 | 内容 | あなたの状況 |
|---|---|---|
| 初診日要件 | 認知症で初めて受診した日が明確で、その日に国民年金または厚生年金に加入していたか | ☑チェック |
| 保険料納付要件 | 初診日の前日時点で、一定期間の保険料を納付していたか(直近1年間未納なし、または全期間の2/3以上納付) | ☑チェック |
| 障害状態要件 | 障害認定日または現在の時点で、日常生活に支障が出ているか(1級・2級・3級の基準に該当) | ☑チェック |
※すべての要件を満たす必要があります。判断が難しい場合は、専門家にご相談ください。
これら3つの要件をすべて満たすことで、障害年金を受給できる可能性があります。特に初診日の特定は認知症の場合に困難なケースが多いため、早めに専門家に相談することをおすすめします。
認知症の障害認定基準と等級
障害年金には、障害の程度に応じて1級・2級・3級の等級があり、等級によって受給できる金額が変わります。このセクションでは、認知症の場合にどのような状態が各等級に該当するのか、具体的な認定基準と受給額について解説します。
1級・2級・3級の認定基準
認知症を含む精神障害の認定基準は、日常生活能力の程度と、日常生活能力の判定を総合的に評価して決定されます。単に「認知症がある」というだけでなく、「日常生活にどの程度の支障が出ているか」が重要な判断ポイントとなります。
各等級の基準は以下の通りです。
1級(最も重度)
高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明なため、常時の援助を必要とするもの。具体的には以下のような状態です。
- 食事、排泄、着替え、入浴などの日常生活動作に常時介助が必要
- 外出する際は常に付き添いが必要で、一人では外出できない
- 金銭管理が全くできず、家族が完全に管理している
- 服薬管理ができず、家族が管理・介助している
- 火の扱いなど身辺の安全管理ができず、常時見守りが必要
- 意思疎通がほとんどできない、または著しく困難
2級(中等度)
認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの。具体的には以下のような状態です。
- 食事や排泄は一部自立しているが、声かけや見守りが必要な場合がある
- 着替えや入浴に声かけや一部介助が必要
- 外出には付き添いや見守りが必要(一人で外出すると道に迷う)
- 金銭管理ができず、買い物で間違いが多い
- 服薬管理ができず、飲み忘れや誤飲の危険がある
- 日付や場所が分からなくなることが多い
- 簡単な家事はできるが、複雑な作業はできない
3級(軽度〜中等度)※障害厚生年金のみ
認知障害、人格変化は著しくないが、これらがあり、労働が著しい制限を受けるもの。具体的には以下のような状態です。
- 日常生活は概ね自立している
- 簡単な日常生活はできるが、社会的な手続きや複雑な作業に支障がある
- 就労の継続が困難、または職種が大幅に限定される
- 仕事でのミスが多くなり、以前のように働けない
なお、障害基礎年金には3級がなく、1級または2級のみです。障害厚生年金の場合は、比較的軽度の状態でも3級として認定される可能性があります。
以下の表で、各等級の違いを比較してみましょう。
【重要】障害等級と認定基準の比較
| 障害等級 | 日常生活の状態 | 援助の必要度 | 主な具体例 |
|---|---|---|---|
| 1級 | 日常生活に著しい制限 常時援助が必要 |
常時介助 | 食事・排泄・着替え・入浴に介助必要 外出時は常に付き添い必要 金銭管理・服薬管理が全くできない |
| 2級 | 日常生活に著しい制限 援助が必要 |
頻繁な援助 | 食事・排泄は一部自立 外出には見守り必要 金銭管理・服薬管理が困難 |
| 3級 (厚生年金のみ) |
日常生活は概ね自立 労働に著しい制限 |
部分的援助 | 日常生活は概ね自立 就労継続が困難 複雑な作業に支障 |
※障害基礎年金には3級がありません。厚生年金加入者のみ3級の対象となります。
日常生活能力の判定項目
障害年金の診断書には、日常生活能力を判定する7つの項目があり、それぞれについて4段階で評価されます。この評価は、認定において非常に重要な判断材料となります。
7つの判定項目と評価基準は以下の通りです。
日常生活能力の判定項目と評価基準
| 判定項目 | 評価内容 |
|---|---|
| 1. 適切な食事 | 配膳などの準備も含めて、適当量をバランスよく摂ることができるか |
| 2. 身辺の清潔保持 | 洗面、洗髪、入浴などの身体の衛生保持や着替えができるか。また自室の清掃や片付けができるか |
| 3. 金銭管理と買い物 | 金銭を独力で適切に管理し、やりくりができるか。また一人で買い物が可能で、計画的な買い物ができるか |
| 4. 通院と服薬 | 規則的に通院や服薬を行い、病状等を主治医に伝えることができるか |
| 5. 他人との意思伝達及び対人関係 | 他人の話を聞く、自分の意思を伝える、集団に参加するなどができるか |
| 6. 身辺の安全保持及び危機対応 | 事故などの危険から身を守る能力があるか。通常と異なる事態となったときに、他人に援助を求めるなどを含めて適正に対応することができるか |
| 7. 社会性 | 銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が一人で可能か。また社会生活に必要な手続きが行えるか |
これらの項目について、以下の4段階で評価されます。
- できる: 適切にできる、または概ねできる
- 自発的にできるが時には援助が必要: 概ねできるが時には助言や指導が必要
- 自発的かつ適正に行うことはできないが援助があればできる: 常に助言や指導が必要
- できない: 助言や指導をしてもできない、または行わない
7つの項目のうち、多くの項目で「援助が必要」または「できない」という評価になる場合、2級または1級に該当する可能性が高くなります。
認知症の方の場合、特に「3. 金銭管理と買い物」「4. 通院と服薬」「6. 身辺の安全保持及び危機対応」の項目で支障が出やすい傾向があります。
受給額の目安
障害年金の受給額は、等級と加入していた年金制度(国民年金または厚生年金)によって異なります。以下に、令和7年度(2025年度)の金額をご紹介します。
【重要】障害等級別の年金額(令和7年度/2025年度)
| 等級 | 年金の種類 | 年額 | 月額(目安) |
|---|---|---|---|
| 1級 | 障害基礎年金 | 1,039,620円 | 約86,635円 |
| 2級 | 障害基礎年金 | 831,700円 | 約69,308円 |
| 3級 | 障害厚生年金 | 623,800円 (最低保障額) |
約51,983円 |
| – | 障害厚生年金 (1級・2級) |
上記に加えて 報酬比例部分 |
人によって異なる |
※令和7年度(2025年度)は、前年度から1.9%引き上げられています。
※障害厚生年金の報酬比例部分は、加入期間や報酬額によって異なります。
障害基礎年金の加算
障害基礎年金には、以下の加算があります。
- 子の加算: 18歳到達年度の末日までの子、または20歳未満で障害等級1級・2級の子がいる場合、1人目・2人目は各234,800円/年、3人目以降は各78,300円/年が加算されます。
障害厚生年金の加算
障害厚生年金には、以下の加算があります。
- 配偶者加給年金: 1級・2級の場合で、65歳未満の配偶者がいるときは234,800円/年が加算されます。
- 報酬比例部分: 厚生年金加入期間中の平均報酬や加入期間によって計算され、人によって金額が異なります。
例えば、障害厚生年金2級を受給する方で、配偶者がいる場合は、障害基礎年金2級(831,700円)+配偶者加給年金(234,800円)+報酬比例部分=年額1,066,500円以上(月額約88,875円以上)となります。
この受給額は、デイサービスや訪問介護などの介護サービス費用に充てることができ、ご家族の経済的・精神的負担の軽減につながります。
次のセクションでは、実際に障害年金を申請する具体的な流れと、必要書類について解説していきます。
認知症で障害年金を申請する流れ
障害年金の申請には、いくつかのステップがあります。このセクションでは、申請の全体像から具体的な手続きまで、順を追って解説していきます。事前に流れを把握しておくことで、スムーズに準備を進めることができます。
申請の全体像(フローチャート)
障害年金の申請は、以下のような流れで進めます。初診日の確認から結果通知まで、通常3〜4ヶ月程度かかります。
【申請の流れ】
| STEP 1 | 初診日の確認 認知症で初めて医療機関を受診した日を確認します。診察券、領収書、お薬手帳などを探してみましょう。 |
| ↓ | |
| STEP 2 | 受診状況等証明書の取得 初診の医療機関で「受診状況等証明書」を取得します。初診の病院と現在の病院が同じ場合は不要です。 |
| ↓ | |
| STEP 3 | 診断書の作成依頼 現在通院中の医療機関に、障害年金用の診断書(精神の障害用)の作成を依頼します。 |
| ↓ | |
| STEP 4 | その他必要書類の準備 年金請求書、病歴・就労状況等申立書、戸籍謄本、住民票、年金手帳などを準備します。 |
| ↓ | |
| STEP 5 | 年金事務所へ提出 すべての書類が揃ったら、年金事務所または市区町村役場に提出します(郵送も可能)。 |
| ↓ | |
| STEP 6 | 審査(3〜4ヶ月) 日本年金機構で審査が行われます。必要に応じて追加資料の提出を求められることもあります。 |
| ↓ | |
| STEP 7 | 結果通知 年金証書が届けば認定です。不支給の場合は、審査請求(不服申立て)を検討できます。 |
認知症の場合、特にSTEP 1の初診日の確認とSTEP 3の診断書作成が難しいケースが多くあります。これらについては、後ほど詳しく解説します。
必要書類の準備
障害年金の申請には、多くの書類が必要です。以下に主な必要書類をまとめましたので、一つずつ確認しながら準備を進めましょう。
【重要】必要書類チェックリスト
| 書類名 | 取得先 | 備考 |
|---|---|---|
| 年金請求書 | 年金事務所、市区町村役場 | 障害基礎年金または障害厚生年金用の請求書を使用 |
| 診断書(精神の障害用) | 現在通院中の医療機関 | 作成に2週間〜1ヶ月程度かかる。費用は5,000円〜10,000円程度 |
| 受診状況等証明書 | 初診の医療機関 | 初診と現在の病院が同じ場合は不要。初診日を証明する重要書類 |
| 病歴・就労状況等申立書 | 自分で作成 | 発症から現在までの経過を詳しく記載。認定の重要な判断材料 |
| 年金手帳 (または基礎年金番号通知書) |
本人が保管 | 基礎年金番号の確認に必要 |
| 戸籍謄本 | 市区町村役場 | 提出日から6ヶ月以内のもの |
| 住民票 | 市区町村役場 | 世帯全員分。提出日から6ヶ月以内のもの |
| 預金通帳のコピー | 本人が保管 | 年金の振込先口座。本人名義の口座 |
| その他(該当者のみ) | – | 配偶者や子がいる場合は追加書類が必要 |
※初診日や請求の種類によって、必要書類が異なる場合があります。事前に年金事務所で確認することをおすすめします。
これらの書類の中で、特に重要なのが診断書と病歴・就労状況等申立書です。
診断書は、医師が記載する書類で、現在の障害の状態を医学的に証明するものです。日常生活能力の判定項目についても医師が評価しますので、診断書の内容が認定に大きく影響します。
病歴・就労状況等申立書は、ご本人やご家族が記載する書類で、発症から現在までの経過、受診歴、日常生活の状況、就労状況などを詳しく記載します。この申立書によって、診断書では伝わりにくい日常生活の実態を補足することができます。
診断書の作成依頼
診断書は、障害年金申請において最も重要な書類の一つです。認知症の場合、主治医に「精神の障害用」の診断書を依頼します。
診断書作成の流れ
- 主治医への依頼: 通院時に、障害年金の診断書作成を依頼します。「障害年金を申請したいので、診断書をお願いできますか」と伝えましょう。
- 診断書用紙の入手: 年金事務所または日本年金機構のホームページから「精神の障害用」の診断書用紙を入手し、医療機関に提出します。
- 作成期間: 診断書の作成には通常2週間〜1ヶ月程度かかります。余裕を持って依頼しましょう。
- 費用: 診断書作成の費用は、医療機関によって異なりますが、5,000円〜10,000円程度が一般的です。
認知症の診断書作成で重要なポイント
認知症の方の場合、本人に病識がないことが多く、診察時に「大丈夫です」「できます」と答えてしまうことがあります。その結果、医師が日常生活の実態を正確に把握できず、診断書の内容が実際よりも軽く記載されてしまうケースがあります。
これを防ぐために、以下の対応をおすすめします。
- 家族が診察に同席する: 診断書作成を依頼する際は、ご家族が同席し、日常生活の実態を医師に直接伝えましょう。
- 日常生活の状況を文書にまとめる: 具体的なエピソードを記載したメモや介護日誌を医師に渡すと、より正確な診断書を作成してもらえます。
- 「できる日」と「できない日」のバラつきを伝える: 認知症の症状は日によって変動することがあります。良い日だけを見て判断されないよう、困難な状況も具体的に伝えましょう。
診断書作成時の詳しいポイントについては、「H2-5. 認知症特有の申請の難しさと対処法」で更に詳しく解説します。
申請書類の提出
すべての書類が揃ったら、年金事務所または市区町村役場の年金窓口に提出します。
提出先
- 障害基礎年金: 市区町村役場の国民年金窓口、または年金事務所
- 障害厚生年金: 年金事務所
提出は窓口への持参だけでなく、郵送でも可能です。ただし、初めての申請の場合は、書類に不備がないか確認してもらうため、窓口で提出することをおすすめします。
提出後の流れ
- 受付: 年金事務所で書類を確認し、受付印を押した控えを受け取ります。
- 審査: 日本年金機構の本部で審査が行われます。通常3〜4ヶ月程度かかります。初診日の調査が必要な場合は、更に時間がかかることもあります。
- 追加資料の提出: 審査の過程で、追加の資料提出を求められる場合があります。速やかに対応しましょう。
- 結果通知: 認定された場合は「年金証書」が届きます。年金は請求月の翌月分から支給され、認定された月から遡って受け取ることができます(障害認定日請求の場合)。
不支給となった場合でも、3ヶ月以内であれば審査請求(不服申立て)を行うことができます。専門家に相談して、再審査を検討しましょう。
次のセクションでは、認知症特有の申請の難しさとその対処法について、より詳しく解説していきます。
認知症特有の申請の難しさと対処法
認知症の障害年金申請には、他の疾患にはない特有の難しさがあります。しかし、それぞれの問題には対処法がありますので、諦める必要はありません。このセクションでは、認知症の申請で直面しやすい3つの課題と、その具体的な解決策について解説します。
初診日が不明確なケースへの対応
認知症の障害年金申請において、最も大きな壁となるのが初診日の特定です。なぜなら、認知症は徐々に進行する疾患であり、「いつから症状が始まったのか」を明確に特定することが非常に難しいからです。
認知症特有の初診日の問題
以下のようなケースが非常に多く見られます。
【よくある初診日の問題例】
- 「数年前から物忘れが気になっていたが、年のせいだと思って受診しなかった」
- 「最初は内科や健康診断で相談したが、『加齢によるもの』と言われ、特に治療は受けなかった」
- 「その後、家族が心配して専門医(神経内科や物忘れ外来)を受診し、そこで初めて認知症と診断された」
- 「いつ、どの病院を最初に受診したのか、本人も家族も正確に覚えていない」
- 「初診の病院のカルテが既に廃棄されていて、受診状況等証明書が取得できない」
このような場合、「内科を受診した日が初診日なのか」「専門医を受診した日が初診日なのか」という判断が難しくなります。また、何年も前のことでカルテが残っていないこともあります。
初診日が証明できない場合の対処法
初診日が不明確な場合でも、以下の方法で証明できる可能性があります。
【初診日証明の方法】
| 証明方法 | 具体的な内容 | 有効性 |
|---|---|---|
| 受診状況等証明書 | 初診の医療機関から取得する正式な証明書 | 最も確実 |
| 診察券・領収書 | 初診時の診察券や領収書が残っていれば、受診日の証明になる | 有効 |
| お薬手帳 | 初診時に処方された薬の記録があれば、受診日の参考になる | 有効 |
| 健康診断の記録 | 会社の健康診断で認知機能の低下が指摘されていた記録 | 参考資料 |
| 介護保険の記録 | 介護認定の申請書類や主治医意見書に受診歴が記載されている場合 | 参考資料 |
| 第三者証明 | 家族、ケアマネジャー、民生委員などによる証明書。「○年○月頃から症状があり、○年○月頃に受診した」という内容 | 補完的 |
| 複数医療機関への照会 | いくつかの医療機関に受診歴の照会を行い、最も古い受診日を特定する | 有効 |
実際の対応例
例えば、以下のような手順で初診日を特定していきます。
- 本人・家族の記憶を整理: 「いつ頃から物忘れが気になったか」「最初にどこの病院に行ったか」を思い出し、時系列で整理します。
- 医療機関への照会: 思い当たる医療機関すべてに連絡し、受診歴の有無を確認します。カルテが残っていれば、受診状況等証明書を取得できます。
- 関連資料の収集: 診察券、領収書、お薬手帳、健康診断の記録、介護保険の書類などを探します。
- 第三者証明の準備: どうしても医療機関からの証明が取れない場合は、家族やケアマネジャーなどによる第三者証明を用意します。
初診日の特定が難しい場合は、社労士などの専門家に相談することを強くおすすめします。専門家は、初診日調査のノウハウを持っており、複数の医療機関への照会や第三者証明の取りまとめなどをサポートしてくれます。
本人に病識がない場合の診断書作成
認知症の方の多くは、自分の症状を正確に認識していない(病識がない)という特徴があります。これは認知症という病気の性質上、避けられないことです。しかし、この病識の欠如が、診断書作成において大きな問題となります。
なぜ問題となるのか
診断書を作成する際、医師は診察室での本人の様子や本人からの聞き取りをもとに判断します。しかし、認知症の方は診察室では以下のような反応を示すことがあります。
- 「特に困っていることはありません」
- 「自分で何でもできます」
- 「大丈夫です」
このように、本人が自分の症状を過小評価して医師に伝えてしまうため、医師が日常生活の実態を把握しきれず、診断書の内容が実際よりも軽く記載されてしまうことがあります。その結果、本来であれば認定されるべき状態であるにもかかわらず、不支給となってしまうケースがあるのです。
対処法
この問題を解決するためには、以下の対応が非常に重要です。
1. 家族が診察に同席する
診断書作成を依頼する際、また、診断書作成のための診察時には、必ずご家族が同席し、日常生活の実態を医師に直接伝えましょう。以下のようなポイントを具体的に伝えることが重要です。
- 食事の準備や片付けができない
- 入浴を嫌がる、または入浴方法が分からなくなっている
- 服薬管理ができず、飲み忘れや重複服用がある
- 金銭管理ができず、同じものを何度も買ってくる
- 外出すると道に迷い、帰ってこられない
- 火の扱いが危険(コンロをつけたまま忘れる)
- 日付や曜日が分からない
- 家族の名前を忘れることがある
2. 日常生活の状況を文書にまとめて医師に渡す
診察の限られた時間では、すべてを口頭で伝えきれないこともあります。そのため、日常生活の具体的な状況を文書にまとめ、医師に渡すことをおすすめします。
【医師に伝えるべき日常生活の具体例】
- 記憶障害: 「朝食を食べたことを忘れ、『まだ食べていない』と言う」「同じことを何度も繰り返し聞く」
- 見当識障害: 「今日の日付が分からない」「自宅のトイレの場所が分からず迷う」
- 判断力の低下: 「季節に合わない服を着ようとする(夏に厚手のコートなど)」「賞味期限切れの食品を食べようとする」
- 実行機能障害: 「料理の手順が分からなくなった」「洗濯機の使い方を忘れた」
- 危険行動: 「鍋を火にかけたまま忘れ、焦がした」「道に迷い、警察に保護された」
- 生活リズムの乱れ: 「昼夜逆転している」「深夜に起きて外に出ようとする」
これらの具体的なエピソードを記載した「介護日誌」や「生活状況のメモ」を作成し、診察時に医師に渡しましょう。
3. 「できる日」と「できない日」のバラつきを伝える
認知症の症状は、日によって変動することがあります。調子の良い日は比較的しっかりしているように見えることもありますが、調子の悪い日は何もできないこともあります。
診察日がたまたま調子の良い日だった場合、医師は「それほど重度ではない」と判断してしまう可能性があります。そのため、「良い日」だけでなく「悪い日」の状態もしっかり伝えることが重要です。
医師への日常生活実態の伝え方
前項でも触れましたが、医師に日常生活の実態を正確に伝えることは、適切な診断書作成のために非常に重要です。ここでは、より具体的な伝え方のポイントをまとめます。
伝え方のポイント
1. 具体的なエピソードで伝える
「物忘れがひどい」という抽象的な表現ではなく、「いつ、どこで、何があったか」を具体的に伝えましょう。
- 悪い例: 「物忘れがひどいです」
- 良い例: 「先週、デイサービスに行く日を忘れて、迎えの車が来たときに『どこに行くんだ』と混乱していました」
2. 頻度を伝える
その症状や問題行動がどのくらいの頻度で起こるのかを伝えましょう。
- 「毎日のように同じことを聞いてくる」
- 「週に2〜3回は道に迷って帰れなくなる」
- 「ほぼ毎晩、夜中に起きて外に出ようとする」
3. 家族の介助の程度を伝える
家族がどの程度援助しているかを具体的に伝えることで、日常生活能力の低下の程度が伝わります。
- 「食事の準備は全て家族が行っています。本人は配膳されたものを食べるだけです」
- 「入浴は声かけをしないと入ろうとせず、洗髪や体を洗うのも見守りが必要です」
- 「服薬は家族が毎回確認し、手渡ししないと飲み忘れます」
- 「外出時は必ず家族が付き添っています。一人では帰ってこられません」
4. 介護日誌をつける
日々の介護の中で起こった出来事や本人の様子を記録しておくと、診察時に具体的に伝えることができます。また、診断書作成だけでなく、病歴・就労状況等申立書の作成にも役立ちます。
介護日誌には、以下のような内容を記録しましょう。
- 日付と時刻
- 起こった出来事(具体的なエピソード)
- 本人の様子や言動
- 家族の対応
認知症の障害年金申請では、診断書の内容が認定を大きく左右します。医師に日常生活の実態を正確に伝えることで、より適切な診断書を作成してもらうことができます。そのためにも、家族の診察同席と具体的な情報提供が不可欠です。
もし、医師とのコミュニケーションに不安がある場合や、診断書の内容に疑問がある場合は、専門家である社労士に相談することをおすすめします。社労士は、医師への情報提供の方法や、診断書の記載内容の確認についてもアドバイスすることができます。
65歳以上の認知症と障害年金
「親が70歳で認知症と診断されたが、障害年金は受給できないのか」というご相談をよく受けます。このセクションでは、65歳以上の方と障害年金の関係について解説します。
原則65歳未満が対象
障害年金は、原則として65歳の誕生日の2日前までに申請する必要があります。これは、障害年金制度が「現役世代の生活保障」を目的としているためです。65歳以上の方には、基本的に老齢年金が支給されるという前提があります。
そのため、65歳以上で初めて認知症を発症し診断された場合は、原則として障害年金の対象外となります。認知症は高齢者に多い疾患ですが、65歳以上で発症した場合は、障害年金ではなく老齢年金や介護保険制度などで対応することになります。
逆に言えば、65歳未満で発症した若年性認知症が障害年金の主な対象ということになります。これが、若年性認知症の方にとって障害年金が重要な制度である理由です。
また、65歳前に障害年金の受給資格があったにもかかわらず申請せず、65歳を過ぎてから申請しようとしても、原則として認められません。障害年金は、気づいた時点でできるだけ早く申請することが重要です。
さらに、老齢年金を繰り上げ受給した場合、その後に障害年金を請求することはできません。繰り上げ受給を検討している方は、将来障害年金が必要になる可能性も考慮して慎重に判断しましょう。
例外的に申請できるケース
ただし、65歳以上の方でも、以下のような例外的なケースでは障害年金を申請できる可能性があります。
【65歳以降でも申請できる例外ケース】
| ケース | 条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 1. 障害認定日請求 | 初診日が65歳の誕生日の2日前までにあり、障害認定日(初診日から1年6ヶ月後)の時点で障害状態に該当していた場合 | 最も多い例外ケース。65歳を過ぎてから請求しても、初診日が65歳前であれば可能 |
| 2. 65歳以降の任意加入 | 65歳以降も国民年金に任意加入しており、その期間中に初診日がある場合 | 任意加入は老齢年金の受給資格期間を満たすために行うもの |
| 3. 65歳以降の厚生年金加入 | 65歳以降も会社員として働いており、厚生年金に加入している期間中に初診日がある場合 | 65歳以降も働いている方が対象 |
| 4. はじめて2級請求 | 65歳以降でも、それぞれ単独では障害年金に該当しない複数の障害を併合して初めて2級以上になる場合 | 例:軽度の認知症+軽度の視覚障害など |
例外ケース1(障害認定日請求)の具体例
例えば、以下のようなケースです。
- 60歳の時に認知症の症状が出て、病院を受診(初診日)
- 61歳6ヶ月の時点(障害認定日)で、既に日常生活に著しい支障が出ていた
- しかし、障害年金の存在を知らず、申請しないまま時間が経過
- 68歳になってから障害年金の存在を知り、申請したいと考えた
このケースでは、68歳という年齢で申請することになりますが、初診日が60歳(65歳前)であり、障害認定日の時点で障害状態に該当していれば、障害認定日請求として申請可能です。認定されれば、障害認定日(61歳6ヶ月)まで遡って年金を受け取ることができます(ただし、時効により5年分が上限)。
このように、「今は65歳を過ぎているが、初診日は65歳前だった」という場合は、申請できる可能性があります。諦めずに、専門家に相談してみましょう。
例外ケース4(はじめて2級請求)について
「はじめて2級請求」は、それぞれ単独では障害年金に該当しない程度の障害が複数ある場合に、それらを併合して初めて2級以上に該当する場合に行う請求方法です。
例えば、軽度の認知症(単独では3級または該当せず)と軽度の視覚障害(単独では3級または該当せず)がある場合、これらを併合することで2級に該当する可能性があります。この場合、65歳以降でも請求できる例外となります。
老齢年金との関係
障害年金と老齢年金は、同時に両方を受給することはできません(選択制)。どちらか金額の高い方を選択して受給することになります。
選択のポイント
- 障害年金のメリット: 障害基礎年金2級は老齢基礎年金の満額とほぼ同額ですが、配偶者加給年金や子の加算がある場合は障害年金の方が有利なことが多い。また、障害年金は非課税です。
- 老齢年金のメリット: 厚生年金の加入期間が長く、報酬が高かった方は、老齢厚生年金の方が金額が高い場合があります。
実際にどちらを選択すべきかは、個々の状況によって異なります。年金事務所で両方の金額を試算してもらい、比較してから決定しましょう。
老齢年金の繰り上げ受給に注意
前述の通り、老齢年金を繰り上げ受給すると、その後に障害年金を請求することはできません。例えば、60歳で老齢年金の繰り上げ受給を開始した後、62歳で認知症を発症しても、障害年金を請求することはできなくなります。
繰り上げ受給は月々の年金額が減額されるだけでなく、将来の障害年金の受給権も失うことになるため、慎重に判断する必要があります。
次のセクションでは、社労士に依頼するメリットと、当事務所のサポート内容について詳しく解説します。
社労士に依頼するメリット
障害年金の申請は、ご自身で行うことも可能です。しかし、特に認知症の場合は、初診日の証明や診断書の内容など、申請における難しさが多くあります。このセクションでは、社労士に依頼することでどのようなメリットがあるのか、また当事務所のサポート内容について解説します。
申請代行で負担を軽減
障害年金の申請には、多くの書類の準備と複雑な手続きが必要です。認知症のご家族を介護しながら、これらの手続きをすべて行うことは、大きな負担となります。
自分で申請する場合の負担
- 年金事務所に何度も足を運ぶ必要がある(平日の日中のみ)
- 必要書類が多く、不備があると何度もやり直しになる
- 専門用語が多く、書類の書き方が分かりにくい
- 初診日の証明のために、複数の医療機関に問い合わせる必要がある
- 医師への診断書依頼時に、何をどう伝えればよいか分からない
- 病歴・就労状況等申立書の書き方に悩む
- 仕事や介護で時間が取れず、申請が遅れてしまう
社労士に依頼するメリット
社労士に依頼することで、以下のような負担を大幅に軽減できます。
- 書類作成の代行: 複雑な申請書類や病歴・就労状況等申立書の作成を代行します
- 年金事務所とのやり取りを代行: 提出や問い合わせなど、年金事務所との窓口業務を代行します
- 医療機関への照会: 初診日証明のための複数医療機関への照会を代行します
- 時間の節約: 平日に何度も年金事務所に行く必要がなくなります
- 精神的な負担の軽減: 「これで合っているのか」という不安から解放されます
特に、認知症のご家族を介護されている方は、日々の介護で心身ともに疲弊されています。障害年金の申請手続きを専門家に任せることで、介護に専念することができ、ご自身の負担も軽減できます。
認定率を高めるサポート
社労士に依頼する最大のメリットは、適切な申請によって認定される可能性が高まることです。申請書類の内容や提出方法によって、認定結果が大きく変わることがあります。
社労士のサポート内容
1. 診断書の内容確認とアドバイス
診断書は認定において最も重要な書類です。社労士は診断書の記載内容を確認し、以下のようなアドバイスを行います。
- 日常生活の実態と診断書の記載内容に乖離がないか確認
- 診断書が実際より軽く記載されている場合、医師に追加情報を提供することを提案
- 診断書作成前に、医師に伝えるべき情報をまとめる
2. 医師への適切な情報提供のサポート
前述の通り、認知症の方は本人に病識がないため、医師が日常生活の実態を把握しきれないことがあります。社労士は、以下のサポートを行います。
- ご家族から詳しくヒアリングし、日常生活の状況を整理
- 医師に提出する「日常生活状況報告書」の作成をサポート
- 診察に同席する際のポイントをアドバイス
3. 病歴・就労状況等申立書の的確な作成
病歴・就労状況等申立書は、発症から現在までの経過や日常生活の状況を記載する重要な書類です。社労士は、ご家族からのヒアリングをもとに、認定に有利になるよう的確に作成します。
- 発症時期や受診歴を時系列で整理
- 日常生活の具体的な支障を分かりやすく記載
- 家族の介助の程度を適切に表現
4. 初診日証明のサポート
認知症の場合、初診日の特定が最も難しい問題の一つです。社労士は、初診日証明のために以下のサポートを行います。
- 複数の医療機関への照会を代行
- 診察券、領収書、お薬手帳などの資料を精査
- 第三者証明の作成をサポート
- 初診日が複数考えられる場合、どの日で申請するのが有利か判断
5. 不支給の場合の審査請求対応
万が一、不支給となった場合でも、審査請求(不服申立て)を行うことができます。社労士は、審査請求の手続きや追加資料の準備をサポートします。
実際に、初回申請で不支給となったケースでも、審査請求によって認定されることがあります。諦めずに専門家に相談することが重要です。
当事務所のサポート内容
清水総合法務事務所は、「諦めない障害年金」をコンセプトに、認知症の障害年金申請を専門的にサポートしています。
当事務所の強み
- 認知症の申請実績が豊富: 若年性認知症をはじめ、認知症の障害年金申請を多数サポートしてきた実績があります
- 複雑なケースにも対応: 初診日が不明確なケース、複数の医療機関を受診しているケース、過去に不支給となったケースなど、複雑な状況にも対応します
- 神戸・兵庫県の地域密着: 神戸市須磨区に事務所を構え、兵庫県内の方には対面でのご相談も可能です
- 丁寧なヒアリングと寄り添う姿勢: ご家族の状況や思いをしっかりとお聞きし、一人ひとりに合わせたサポートを行います
- 「諦めない」サポート: 難しいケースでも、可能性を探り、最善の方法を提案します
具体的なサポート内容
- 無料相談: まずはお気軽にご相談ください。受給の可能性や必要な手続きについて、分かりやすくご説明します
- 受給可能性の診断: 初診日、保険料納付状況、障害の状態などを確認し、受給の可能性を診断します
- 必要書類の準備サポート: どの書類が必要か、どこで取得するかなど、具体的にご案内します
- 医療機関への照会代行: 初診日証明のための受診状況等証明書の取得を代行します
- 診断書作成のサポート: 医師への情報提供資料の作成、診断書の内容確認などを行います
- 申請書類の作成・提出代行: 年金請求書、病歴・就労状況等申立書などの作成と、年金事務所への提出を代行します
- 審査請求対応: 不支給となった場合の審査請求手続きもサポートします
ご相談・お問い合わせ
認知症の障害年金申請について、少しでも不安や疑問がございましたら、お気軽にご相談ください。
清水総合法務事務所
社会保険労務士 清水 良訓
〒654-0143 兵庫県神戸市須磨区菅の台6-8-3
【お問い合わせ方法】
- お電話: 050-7124-5884(平日9:00〜18:00)
- メール: mail@srkobe.com
- お問い合わせフォーム: https://nenkin.srkobe.com/contact/
「認知症の障害年金について相談したい」とお伝えください。神戸・兵庫県内の方は、対面でのご相談も可能です。まずは無料相談から、お気軽にお問い合わせください。
次のセクションでは、よくある質問にお答えします。
よくある質問(Q&A)
認知症の障害年金申請について、よくいただく質問とその回答をまとめました。ここに記載されていない疑問や不安がございましたら、お気軽にご相談ください。
軽度でも申請できますか?
A: はい、軽度でも日常生活に支障があれば申請できる可能性があります。
障害年金の認定は、病名や診断そのものではなく、「日常生活能力がどの程度低下しているか」で判断されます。認知症が軽度であっても、金銭管理ができない、服薬管理ができない、外出時に迷う、仕事でミスが多くなり継続が困難などの状態であれば、障害年金の対象となる可能性があります。
特に、厚生年金加入中に初診日がある方は、3級という等級があるため、比較的軽度でも認定される可能性があります。
重要なのは、早めに受診し、初診日を確定させることです。MCI(軽度認知障害)の段階であっても、医療機関を受診しておくことで、将来症状が悪化した際に障害年金を申請できる可能性が残ります。「まだ軽度だから申請は早い」と考えず、まずは専門家に相談することをおすすめします。
働きながらでも受給できますか?
A: はい、働いていても受給できる可能性があります。
障害年金は、就労の有無だけで判断されるわけではありません。働いている場合でも、以下のような状況であれば受給できる可能性があります。
- 症状のため、勤務時間や仕事内容が大幅に制限されている
- 職場の配慮や援助を受けながら、何とか働いている
- 簡単な作業しかできず、以前のような仕事ができなくなった
- 欠勤が多く、就労の継続が危ぶまれる
特に、障害厚生年金3級は「労働に著しい制限がある」状態が対象となりますので、働いている方でも認定される可能性があります。
ただし、フルタイムで一般的な業務を問題なくこなしている場合は、認定が難しくなります。就労状況と日常生活の状況を総合的に判断して認定されますので、詳しくは専門家にご相談ください。
更新はありますか?
A: はい、多くの場合、1〜5年ごとに更新(診断書の再提出)が必要です。
障害年金には「有期認定」と「永久認定」があります。
有期認定:
症状が変動する可能性がある場合、1〜5年ごとに診断書を再提出し、障害の状態を再確認します。認知症の場合、進行性の疾患であるため、有期認定となることが多いです。
更新時の診断書で症状の悪化が認められれば、等級が上がる(例:2級→1級)こともありますし、逆に症状が改善していれば等級が下がる、または支給停止となることもあります。
永久認定:
症状が固定しており、今後改善の見込みがないと判断された場合、永久認定となり、以降の更新は不要です。認知症で重度の状態が続いている場合、永久認定となることもあります。
更新時期が近づくと、日本年金機構から診断書提出の案内が届きますので、期限内に診断書を提出しましょう。更新手続きについても、社労士がサポートできますので、ご相談ください。
他の制度と併用できますか?
A: はい、多くの制度と併用できます。
障害年金は、以下の制度と併用することができます。
併用できる制度:
- 精神障害者保健福祉手帳: 障害年金とは別の制度で、併用可能です。手帳があると、税金の控除や公共交通機関の割引などのメリットがあります
- 介護保険サービス: 65歳以上の方、または40〜64歳で特定疾病に該当する方は、介護保険サービスと障害年金を併用できます
- 自立支援医療(精神通院医療): 精神科・心療内科の通院医療費の自己負担が1割になる制度で、障害年金と併用可能です
- 特別障害者手当: 20歳以上で、重度の障害があり日常生活に常時特別の介護が必要な方に支給される手当。一定の要件を満たせば併用可能です
併用できない(選択制の)制度:
- 老齢年金: 障害年金と老齢年金は同時に受給できません。どちらか金額の高い方を選択します
- 遺族年金: 原則として同時受給できませんが、一定の場合は併給調整があります
各制度の詳細については、市区町村の福祉担当窓口や年金事務所にお問い合わせください。
申請してから受給までどのくらいかかりますか?
A: 通常、申請から結果通知まで3〜4ヶ月程度かかります。
障害年金の審査は、日本年金機構の本部で行われます。審査には一定の時間がかかり、通常は3〜4ヶ月程度です。
ただし、以下のような場合は更に時間がかかることがあります。
- 初診日の調査が必要な場合: 初診日が不明確で、複数の医療機関への照会が必要な場合、半年以上かかることもあります
- 追加資料の提出が必要な場合: 審査の過程で追加の資料提出を求められた場合、その分時間がかかります
- 審査が混雑している時期: 年度末など、審査が混雑する時期は通常より時間がかかることがあります
認定された場合、年金は請求月の翌月分から支給されます。また、障害認定日請求の場合は、障害認定日まで遡って受給できます(時効により5年分が上限)。
審査期間中は不安になることもあるかと思いますが、社労士に依頼している場合は、審査の進捗状況を確認し、必要に応じて対応しますので、安心してお待ちください。
受給が認められなかった場合は?
A: 審査請求(不服申立て)を行うことができます。
障害年金の申請が不支給となった場合でも、諦める必要はありません。処分があったことを知った日の翌日から3ヶ月以内であれば、審査請求(不服申立て)を行うことができます。
審査請求では、不支給となった理由を確認し、追加の医療資料や日常生活の状況を示す資料を提出することで、再審査を受けられます。
審査請求の流れ:
- 不支給理由の確認: なぜ不支給となったのか、年金事務所で理由を確認します
- 追加資料の準備: 不支給理由を踏まえ、診断書の追加、日常生活状況の詳細な説明資料などを準備します
- 審査請求書の提出: 3ヶ月以内に審査請求書を提出します
- 再審査: 社会保険審査官による再審査が行われます(数ヶ月かかります)
- 結果通知: 認容(認定)または棄却(不支給維持)の決定が通知されます
審査請求でも認められなかった場合は、さらに再審査請求を行うことができます。
実際に、初回申請で不支給となったケースでも、審査請求によって認定されることは少なくありません。特に、診断書の記載内容が実態よりも軽く書かれていた場合や、日常生活の状況が十分に伝わっていなかった場合などは、追加資料によって認定される可能性があります。
審査請求は複雑な手続きですので、社労士のサポートを受けることを強くおすすめします。当事務所では、審査請求のサポートも行っていますので、不支給となった場合でも、まずはご相談ください。
【よくある質問まとめ】
| 質問 | 回答のポイント |
|---|---|
| 軽度でも申請できますか? | 日常生活に支障があれば可能。早めの受診が重要 |
| 働きながらでも受給できますか? | 就労に制限がある場合は可能。特に3級は対象 |
| 更新はありますか? | 多くの場合、1〜5年ごとに診断書の再提出が必要 |
| 他の制度と併用できますか? | 精神障害者手帳、介護保険、自立支援医療などと併用可能 |
| 申請から受給まで何ヶ月? | 通常3〜4ヶ月。初診日調査が必要な場合は更にかかる |
| 不支給の場合は? | 3ヶ月以内に審査請求可能。専門家のサポート推奨 |
この他にも、ご不明な点やご不安なことがございましたら、お気軽にご相談ください。
まとめ:認知症でも障害年金は受給できる、諦めないでください
この記事では、認知症で障害年金を受給する方法について、詳しく解説してきました。最後に、重要なポイントをまとめます。
【この記事の重要ポイント】
- 認知症でも障害年金は受給できます。特に、65歳未満で発症した若年性認知症が対象となります
- 受給には3つの条件があります: ①初診日の要件、②保険料納付要件、③障害状態の要件
- 初診日の特定が最大の課題。認知症は「いつから症状が始まったか」が不明確なことが多く、初診日の証明に苦労するケースが少なくありません。しかし、診察券・領収書・お薬手帳・第三者証明などで対処できる可能性があります
- 本人に病識がない場合の対応が重要。家族が診察に同席し、日常生活の実態を医師に具体的に伝えることで、適切な診断書を作成してもらえます
- 65歳以上でも例外的に申請できるケースがあります。初診日が65歳前であれば、65歳を過ぎてからでも障害認定日請求が可能です
- 社労士のサポートで負担軽減と認定率向上。複雑な申請手続きを代行し、適切な書類作成によって認定される可能性が高まります
認知症の障害年金申請は、確かに簡単ではありません。初診日の証明が難しい、本人に病識がない、書類が複雑、介護と並行して手続きを進める負担など、多くの困難があります。
しかし、だからこそ、諦めないでください。
障害年金は、認知症のご本人とご家族の生活を支える重要な制度です。月額6万円〜8万円以上の年金を受給できれば、デイサービスや訪問介護などの介護サービスを利用でき、ご家族の介護負担も軽減できます。経済的な不安が少しでも和らげば、ご本人もご家族も、より穏やかに日々を過ごすことができるはずです。
「初診日が分からない」「自分で申請する自信がない」「過去に不支給になった」――そのような複雑なケースであっても、専門家のサポートを受けることで、受給できる可能性があります。
清水総合法務事務所は、「諦めない障害年金」をコンセプトに、認知症の障害年金申請を専門的にサポートしています。初診日の証明が難しいケース、本人に病識がないケース、複数の医療機関を受診しているケースなど、どのような状況でも、まずはご相談ください。一人ひとりの状況に合わせて、最善の方法をご提案します。
ご家族だけで悩まず、専門家の力を借りることも選択肢の一つです。介護と申請準備を両立することは大きな負担ですから、申請手続きは私たちにお任せいただき、ご家族は介護に専念していただければと思います。
まずは無料相談から、お気軽にお問い合わせください
認知症の障害年金申請について、少しでも不安や疑問がございましたら、まずはお気軽にご相談ください。「受給できるか分からない」「何から始めればいいか分からない」という段階でも大丈夫です。現在の状況をお聞きし、受給の可能性や必要な手続きについて、分かりやすくご説明いたします。
清水総合法務事務所
社会保険労務士 清水 良訓
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認知症の障害年金申請は、決して一人で抱え込む必要はありません。私たちが全力でサポートいたします。あなたとご家族が、少しでも安心して生活できるよう、「諦めない障害年金」の実現に向けて、一緒に取り組んでいきましょう。
ご相談をお待ちしています。


