全身に広がる激しい痛みに悩まされ、仕事や家事が思うようにできない。病院を何軒も回ったのに「原因不明」と言われ続け、ようやく線維筋痛症と診断された。治療を続けているけれど、痛みは簡単には治まらない。収入は減り、医療費の負担は増える一方で、この先の生活が不安で仕方ない――。
そんな状況の中で、「障害年金」という制度があることをご存知でしょうか。線維筋痛症は、症状の程度によっては障害年金の対象になります。実際に、神戸・兵庫県でも多くの方が障害年金を受給し、経済的な支えを得ています。
しかし、線維筋痛症での障害年金申請には特有の難しさがあります。特に「初診日の特定」は、多くの方が頭を悩ませるポイントです。確定診断までに複数の病院を転々とするケースが多いため、「どの日を初診日とすればよいのか」が分かりにくいのです。
この記事では、線維筋痛症で障害年金を受給するための条件、認定基準、初診日の特定方法について、社会保険労務士が詳しく解説します。実際の受給事例も3件ご紹介しますので、「自分も受給できるかもしれない」という希望を持っていただければ幸いです。
見た目では分からない痛みだからこそ、周囲に理解されにくく、孤独を感じることもあるでしょう。でも、諦める必要はありません。適切な手続きを踏めば、あなたの痛みは制度として認められ、経済的な支援を受けることができます。
線維筋痛症で障害年金申請をお考えの方、まずはお気軽にご相談ください。神戸の障害年金専門社労士が、あなたの状況を丁寧にお伺いします。
線維筋痛症とは?障害年金との関係
障害年金の申請を考える前に、まず線維筋痛症という病気について、そして障害年金との関係について確認しておきましょう。
線維筋痛症の基本知識
線維筋痛症とは、全身の広い範囲にわたって慢性的な痛みが続く病気です。痛みは3ヶ月以上持続し、上半身・下半身・左右両側など、身体の広範囲に及びます。
この病気の大きな特徴は、血液検査やレントゲン検査では異常が見つからないことです。そのため、診断が遅れることが多く、患者さんは「原因不明」と言われ続け、複数の医療機関を受診することになります。国内では推定200万人が発症していると言われていますが、潜在的な患者数はさらに多いと考えられています。
主な症状は以下のとおりです。
- 全身の慢性疼痛: 身体が締め付けられるような痛み、ナイフで切り裂かれるような痛み
- 身体のこわばり: 特に朝、身体が固まって動きにくい
- 激しい疲労感: 少し動いただけで疲れ果ててしまう
- 不眠: 痛みで夜中に目が覚める、熟睡感がない
- 抑うつ気分: 痛みが続くことで気分が落ち込む
- 認知機能の低下: 物忘れが増える、集中力が続かない
線維筋痛症は、女性に多く発症します。患者さんの80〜90%が女性で、特に30〜60歳の方に多く見られます。ただし、男性や若年層でも発症することがあります。
この病気の辛さは、「見た目では分からない」という点にもあります。外見上は健康そうに見えるため、周囲から「怠けている」「気のせいではないか」と誤解されることも少なくありません。しかし、患者さんご本人にとっては、耐え難い痛みとの闘いが毎日続いているのです。
なぜ線維筋痛症で障害年金を受給できるのか
線維筋痛症は、その症状の重さによっては、障害年金の対象となります。なぜなら、痛みによって日常生活や労働能力に著しい制限が生じるためです。
障害年金は、病気やケガによって日常生活や仕事に支障が出た場合に、生活を支えるために支給される公的年金です。線維筋痛症の場合、「肢体の機能の障害」という分類で認定されます。
具体的には、以下のような状態であれば、障害年金の対象となる可能性があります。
- 痛みで長時間立っていられない、歩行が困難
- 家事や身の回りのことが一人でできない
- 仕事を続けることができない、または著しい制限がある
- 階段の昇降に手すりが必要、または一人では困難
- 痛みのため、長時間同じ姿勢を保てない
線維筋痛症は、厚生労働省の「重症度分類試案」によって、ステージⅠ(軽度)からステージⅤ(重度)の5段階に分類されます。このステージが、障害等級の判断の重要な目安となります。
【重要】線維筋痛症の重症度分類(ステージⅠ〜Ⅴ)
| ステージ | 症状の特徴 | QOL(生活の質) |
|---|---|---|
| ステージⅠ | 18ヶ所の圧痛点のうち11ヶ所以上で痛みがある | 日常生活に重大な影響はない |
| ステージⅡ | 手足の指など末端部に痛みが広がる。不眠、不安感、うつ状態が続く | 日常生活が困難 |
| ステージⅢ | 激しい痛みが持続。軽微な刺激で激しい痛みが全身に広がる | 自力での生活は困難 |
| ステージⅣ | 痛みのため自力で体を動かせず、ほとんど寝たきりの状態 | 長時間同じ姿勢で寝たり座ったりできない |
| ステージⅤ | 激しい全身の痛みとともに、膀胱や直腸の障害など全身に症状が出る | 普通の日常生活は不可能 |
※出典: 厚生労働省「線維筋痛症診療ガイドライン」より
一般的には、ステージⅤが障害等級1級、ステージⅣが2級、ステージⅢが2級または3級、ステージⅡが3級に相当する可能性があります。ただし、これはあくまで目安であり、実際の認定は個別の状況を総合的に判断して行われます。
障害年金は「痛み」そのものではなく「生活への影響」で判断される
ここで重要なのは、障害年金は「病名」や「痛みの強さ」だけで判断されるわけではないという点です。最も重視されるのは、「その障害が日常生活や労働能力にどれだけ影響を与えているか」です。
たとえば、同じ線維筋痛症と診断されていても、日常生活をほぼ一人でこなせる方と、食事や排泄にも介助が必要な方では、認定される等級が異なります。診断書には、「どの動作ができて、どの動作ができないか」を具体的に記載してもらうことが大切です。
次のセクションでは、線維筋痛症で障害年金を受給するための3つの条件について、詳しく解説していきます。
線維筋痛症で障害年金を受給できる3つの条件
線維筋痛症で障害年金を受給するためには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。これらは障害の種類を問わず、すべての障害年金に共通する要件です。
- 初診日要件: 初診日に公的年金に加入していること
- 保険料納付要件: 一定期間以上、保険料を納付していること
- 障害状態要件: 障害の状態が障害等級に該当すること
それぞれの要件について、詳しく見ていきましょう。
条件1: 初診日要件
初診日要件とは、「初診日に公的年金(国民年金または厚生年金)に加入していること」という条件です。
初診日とは、障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことです。この初診日がいつなのかによって、受給できる年金の種類(障害基礎年金か障害厚生年金か)や、受給額が変わってきます。
初診日に加入していた年金制度によって、受給できる年金は以下のように分かれます。
- 国民年金に加入していた場合: 障害基礎年金(自営業、学生、無職の方など)
- 厚生年金に加入していた場合: 障害厚生年金(会社員、公務員の方など)
障害厚生年金の場合は、障害基礎年金に加えて障害厚生年金も受給できるため、受給額が多くなります。また、障害等級3級でも受給できますが、障害基礎年金の場合は2級以上でなければ受給できません。
【線維筋痛症では初診日の特定が特に重要】
線維筋痛症の場合、初診日の特定が他の病気に比べて難しいという特徴があります。なぜなら、確定診断までに長い時間がかかり、複数の医療機関を受診するケースが多いためです。
たとえば、こんな経緯をたどる方が少なくありません。
- 全身の痛みで整形外科を受診 → 「原因不明」と言われる
- リウマチの疑いで総合病院のリウマチ科へ → 検査では異常なし
- 痛みが続くため、内科やペインクリニックを受診
- 専門医を紹介され、ようやく線維筋痛症と確定診断
この場合、「どの日を初診日とするか」によって、受給の可否や受給額が大きく変わる可能性があります。従来は「線維筋痛症と確定診断された日」が初診日とされる傾向がありましたが、令和3年8月に日本年金機構が取扱いを明確化し、条件を満たせば確定診断前の受診日も初診日として認められるようになりました。
この初診日の取扱いについては、次のセクションで詳しく解説します。
条件2: 保険料納付要件
保険料納付要件とは、初診日の前日時点で、一定期間以上の保険料を納付している必要があるという条件です。以下のいずれかを満たす必要があります。
原則的な要件
初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの期間のうち、3分の2以上の期間について保険料を納付または免除されていること。
特例的な要件(令和8年4月1日前の初診日の場合)
初診日において65歳未満であり、初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと。
多くの方は、この特例的な要件で判断されます。つまり、初診日の前々月までの1年間、保険料をきちんと納めていれば(または免除を受けていれば)、この要件はクリアできます。
ただし、ここで注意が必要なのは、「初診日の前日」時点で判断されるという点です。初診日が分かってから慌てて保険料を納めても、要件を満たすことにはなりません。
もし保険料の未納期間がある場合でも、免除申請をしていた期間は「納付済み期間」としてカウントされます。経済的に保険料の支払いが困難だった時期がある方は、免除申請の記録を確認してみましょう。
条件3: 障害状態要件
障害状態要件とは、障害の状態が一定以上の重さであり、障害等級に該当することという条件です。
障害等級は、1級・2級・3級の3つがあります(さらに軽度の場合は障害手当金の対象になることもあります)。数字が小さいほど、障害の程度が重いことを示します。
- 1級: 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度(食事や排泄など、日常生活の動作全てに他人の介助が必要)
- 2級: 日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度(必ずしも他人の助けは借りなくても、日常生活が困難で労働により収入を得ることができない状態)
- 3級: 労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度(日常生活には大きな制限はないが、仕事に制限がある状態)
線維筋痛症の場合、前のセクションで紹介したステージ分類が、等級判定の重要な目安となります。一般的には、ステージⅤが1級、ステージⅣが2級、ステージⅢが2級または3級、ステージⅡが3級に相当すると考えられています。
ただし、障害基礎年金の場合は、2級以上でなければ受給できません。3級に該当する場合は、初診日に厚生年金に加入していた方のみが、障害厚生年金として受給できます。
たとえば、会社員として働いていた時に最初の症状で受診し、その後退職して国民年金に切り替わってから確定診断を受けた場合を考えてみましょう。もし確定診断日を初診日とすると、国民年金加入中なので障害基礎年金の対象となり、3級では受給できません。しかし、会社員時代の最初の受診日を初診日として認められれば、障害厚生年金の対象となり、3級でも受給できる可能性があります。
このように、初診日をいつにするかは、受給の可否に大きく影響するのです。
【受給要件チェックリスト】
ご自身が障害年金の対象になるかどうか、以下のチェックリストで確認してみましょう。
- □ 初診日(線維筋痛症の症状で初めて医療機関を受診した日)に、国民年金または厚生年金に加入していた
- □ 初診日の前々月までの直近1年間、保険料の未納がない(または3分の2以上の期間、納付または免除されている)
- □ 線維筋痛症の痛みにより、日常生活または労働に著しい制限がある
- □ 線維筋痛症の重症度分類で、ステージⅡ以上に該当する
これらの項目にチェックが入る方は、障害年金を受給できる可能性があります。
ただし、線維筋痛症の場合は特に初診日の特定が複雑です。「初診日がいつなのか分からない」「複数の病院を受診したが、どこを初診日とすればよいか分からない」という方も多いでしょう。そのような場合こそ、専門家のサポートが役立ちます。
線維筋痛症で障害年金申請をお考えの方、まずはお気軽にご相談ください。神戸・兵庫県で障害年金申請の実績が豊富な当事務所が、初診日の特定から申請手続きまで、しっかりとサポートいたします。
次のセクションでは、線維筋痛症で最も重要なポイントである「初診日の特定」について、令和3年8月の取扱い変更も含めて詳しく解説していきます。
線維筋痛症の初診日はいつ?特定が難しい理由と対処法
線維筋痛症で障害年金を申請する際、最も重要かつ難しいのが「初診日の特定」です。初診日をいつにするかによって、受給できるかどうか、いくら受給できるかが大きく変わります。このセクションでは、線維筋痛症特有の初診日の問題と、その対処法について詳しく解説します。
なぜ線維筋痛症は初診日の特定が難しいのか
線維筋痛症は、他の病気に比べて初診日の特定が特に難しい病気です。その理由は主に3つあります。
理由1: 確定診断までに時間がかかる
線維筋痛症は、血液検査やレントゲンなどの一般的な検査では異常が見つかりません。そのため、確定診断までに数ヶ月から数年かかることも珍しくありません。その間、患者さんは「原因不明」と言われ続け、不安な日々を過ごすことになります。
理由2: 複数の医療機関を転々とする
最初は「腰痛」「肩こり」「リウマチの疑い」など、別の病名を疑われて整形外科や内科を受診します。そこで原因が分からず、リウマチ科、神経内科、ペインクリニックなど、複数の医療機関を受診するケースが多いのです。
たとえば、以下のような受診経緯をたどる方が少なくありません。
- 3年前: 全身の痛みで近所の整形外科を受診 → カルテには「腰痛、原因不明」と記載
- 2年半前: 症状が改善せず、総合病院のリウマチ科へ → リウマチ検査は陰性
- 2年前: 内科で診察を受けるも、異常なしと言われる
- 1年半前: ペインクリニックを受診
- 1年前: 専門医を紹介され、ようやく線維筋痛症と確定診断
このような場合、「どの受診日を初診日とするか」が問題になります。
理由3: 従来は確定診断日が初診日とされる傾向があった
従来、障害年金の実務では、「線維筋痛症と確定診断された日」を初診日とする傾向がありました。しかし、確定診断が遅れるほど、障害年金の受給開始も遅れてしまいます。なぜなら、障害年金は原則として、初診日から1年6ヶ月経過した日(障害認定日)以降でなければ受給できないからです。
また、確定診断を受けた時点では既に退職していて国民年金に切り替わっていた場合、障害基礎年金の対象となり、3級では受給できなくなってしまいます。
令和3年8月の取扱い変更|確定診断前でも初診日と認められる
このような状況を踏まえ、令和3年8月、日本年金機構は「線維筋痛症等に係る障害年金の初診日の取扱いについて」という通知を出しました。この通知により、条件を満たせば、確定診断を受ける前の受診日も初診日として認められるようになりました。
申立初診日が認められる3つの条件
以下の①〜③のすべてを満たす場合、請求者本人が申し立てた初診日(申立初診日)が、障害年金の初診日として認められます。
① 申立初診日における診療が、線維筋痛症の症状に係るものと認められること
申立初診日に受診した医療機関が作成した診断書または受診状況等証明書の記載内容から、線維筋痛症の症状(身体の広範囲に及ぶ慢性疼痛など)について診療を受けていたと認められることが必要です。
たとえば、整形外科のカルテに「全身の痛み」「原因不明の疼痛」などの記載があれば、この条件を満たす可能性があります。単なる「腰痛」だけの記載では難しいかもしれませんが、「広範囲の痛み」「慢性疼痛」などの記載があれば、線維筋痛症との関連性が認められやすくなります。
② 確定診断を行った医療機関の診断書に、申立初診日が初診日として記載されていること
線維筋痛症の確定診断を行った医療機関(または確定診断に基づき他の医療機関)が作成した診断書において、申立初診日が「線維筋痛症のため初めて医師の診療を受けた日」として記載されている必要があります。
つまり、確定診断を行った医師が、「患者さんが○年○月○日に整形外科を受診したのが、線維筋痛症の初診日である」と認めてくれることが必要です。主治医とよく相談し、これまでの受診経緯を説明しておくことが大切です。
③ 発症直後に確定診断が行われなかった理由の申立てがあること
病歴・就労状況等申立書などで、「なぜ確定診断が遅れたのか」を説明する必要があります。たとえば、「最初は原因不明と言われ、複数の病院で検査を受けたが異常が見つからなかった」「専門医が少なく、受診までに時間がかかった」などの事情を記載します。
また、医療機関の受診に空白期間(未継続期間)がある場合は、その期間も症状が継続していた旨を申し立てる必要があります。空白期間が6ヶ月を超える場合は、診断書などの医療機関が作成する書類の記載内容から、症状が継続していたと認められることが必要です。
【具体例】初診日によって受給額が変わるケース
具体的な例で、初診日の違いがどう影響するか見てみましょう。
Aさん(40代女性)は、3年前に会社員として働いていた時に全身の痛みで整形外科を受診しました。その後、症状が悪化して退職し、1年前に線維筋痛症と確定診断されました。現在はステージⅢで、障害等級2級相当の状態です。
- 確定診断日を初診日とした場合: 確定診断時は退職後で国民年金加入中 → 障害基礎年金2級を受給 → 年額約83万円
- 整形外科の受診日を初診日とした場合: 会社員として厚生年金加入中 → 障害厚生年金2級を受給 → 年額約120〜150万円(報酬比例額を含む)
このように、初診日をいつにするかによって、年間で40〜70万円近くの差が生じる可能性があるのです。
初診日証明が困難な場合の対処法
初診日の特定が重要だとわかっていても、実際には証明が困難なケースも少なくありません。特に以下のような場合です。
- 最初に受診した病院がカルテを廃棄している
- 病院が閉院している
- カルテの記載が簡素で、線維筋痛症との関連性が不明確
対処法1: 受診状況等証明書を取得する
まずは、初診日と思われる医療機関に「受診状況等証明書」の作成を依頼しましょう。カルテが残っていれば、受診日や症状について記載してもらえます。
カルテの保存期間は原則5年です。5年以上前の受診であっても、病院によっては保存していることもあるので、まずは問い合わせてみることをおすすめします。
対処法2: 第三者証明を活用する
カルテが廃棄されている場合は、「第三者証明」という方法があります。これは、当時の受診状況を知る第三者(家族以外)に証明してもらう方法です。たとえば、職場の同僚、友人、隣人などが該当します。
対処法3: 診察券、領収書、お薬手帳などの資料を集める
当時の診察券、医療費の領収書、お薬手帳の記録など、受診した事実を示す資料を可能な限り集めましょう。これらは初診日を特定する際の参考資料となります。
対処法4: 複数の医療機関の受診状況等証明書をつなげる
最初の病院のカルテが廃棄されていても、2番目、3番目の病院のカルテが残っていれば、それらをつなぎ合わせることで初診日を推定できる場合があります。各医療機関の受診状況等証明書に「前医からの紹介」「○年○月頃から症状があった」などの記載があれば、初診日の証明に役立ちます。
対処法5: 専門家に相談する
初診日の特定は、障害年金申請の中で最も専門的な知識と経験が求められる部分です。特に線維筋痛症のように、確定診断までに複数の医療機関を受診しているケースでは、どの受診日を初診日として申し立てるべきか、どのような証拠を集めるべきかの判断が難しくなります。
社会保険労務士であれば、個別の状況に応じて最適な初診日を選定し、必要な証拠書類の準備をサポートできます。「初診日の証明が難しい」と諦める前に、ぜひ専門家に相談してみてください。
次のセクションでは、線維筋痛症の障害認定基準について、ステージ別の判断目安とともに詳しく解説していきます。
線維筋痛症の障害認定基準|ステージ別の判断目安
線維筋痛症で障害年金を受給できるかどうかは、「障害認定基準」に基づいて判断されます。このセクションでは、線維筋痛症の認定基準と、ステージ別の障害等級の目安について詳しく解説します。
線維筋痛症は「肢体の機能の障害」として認定される
障害認定基準は、障害の種類ごとに設けられています。たとえば、眼の障害であれば「眼の障害認定基準」、精神疾患であれば「精神の障害認定基準」といった具合です。
線維筋痛症の場合は、「肢体の機能の障害認定基準」が適用されます。同じ難病でも、たとえば白血病などは「血液・造血器・その他の障害用」の診断書を使用しますが、線維筋痛症は全身の痛みによって身体機能に制限が生じるため、「肢体の障害」として扱われるのです。
このため、診断書も「肢体の障害用」を使用します。間違えて別の診断書を使用してしまうと、受理されないので注意が必要です。
肢体の障害認定基準では、「日常生活における動作がどの程度制限されているか」が、等級判定の重要なポイントとなります。病名や検査数値よりも、「実際の生活にどれだけ影響が出ているか」が重視されるのです。
障害等級1級・2級・3級の判断基準
線維筋痛症の場合、国民年金・厚生年金保険の障害認定基準では、以下のように定められています。
【障害等級1級】
線維筋痛症の激しい痛みなどにより、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの。
具体的には、食事、排泄、入浴、着替えなど、日常生活の基本的な動作のすべてに他人の介助が必要な状態です。ベッドからの起き上がりも一人では困難で、ほぼ寝たきりに近い状態が該当します。
【障害等級2級】
線維筋痛症の激しい痛みなどにより、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。
具体的には、必ずしも他人の助けを常に借りる必要はなくても、日常生活の多くの場面で困難が生じ、労働により収入を得ることができない状態です。家事はごく限られたことしかできず、外出も困難な状態が該当します。
【障害等級3級】
線維筋痛症の激しい痛みなどにより、身体の機能に労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの。
具体的には、日常生活は何とか一人でできるものの、仕事においては軽作業や短時間勤務などの配慮が必要で、フルタイムでの就労が困難な状態が該当します。
なお、障害基礎年金の場合は、2級以上でなければ受給できません。3級は障害厚生年金のみが対象です。
【重要】障害等級とステージの対応表
| 障害等級 | ステージ目安 | 障害の状態 | 日常生活への影響 | 年金額(年額) |
|---|---|---|---|---|
| 1級 | ステージⅤ | 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度 | 食事・排泄・入浴など全介助。寝たきりに近い状態 | 約104万円(基礎年金) +報酬比例額×1.25(厚生年金) |
| 2級 | ステージⅢ〜Ⅳ | 日常生活が著しい制限を受ける程度 | 家事・外出が困難。労働不能 | 約83万円(基礎年金) +報酬比例額×1.0(厚生年金) |
| 3級 | ステージⅡ | 労働が著しい制限を受ける程度 | 日常生活は可能。軽作業や時短勤務のみ可能 | 約62万円(厚生年金のみ) |
※金額は令和7年度の基準です。障害厚生年金の報酬比例額は、加入期間や給与額によって個人差があります。
この表はあくまで目安です。実際の認定では、ステージ分類だけでなく、日常生活動作の具体的な評価、治療の経過、併発症状なども総合的に判断されます。たとえば、ステージⅢでも日常生活の状況によっては3級と判定される場合もありますし、逆に2級と判定される場合もあります。
日常生活動作の評価ポイント
障害等級を判定する際に最も重視されるのが、「日常生活における動作」の評価です。診断書には、以下のような具体的な動作について、4段階で評価する欄があります。
【上肢(腕・手)の機能】
- さじで食事をする
- 顔を洗う(顔に手のひらをつける)
- 用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)
- 用便の処置をする(尻のところに手をやる)
- 上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)
- 上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)
【下肢(脚)の機能】
- 片足で立つ
- 歩く(屋内)
- 歩く(屋外)
- 立ち上がる
- 階段を上る
- 階段を下りる
【手指の機能】
- つまむ(新聞紙が引き抜けない程度)
- 握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程度)
- タオルを絞る(水をきれる程度)
- ひもを結ぶ
これらの動作について、医師は以下の4段階で評価します。
- ○: 一人で支障なくできる
- △: 一人でできるが時間がかかる、またはやや不自由
- △×: できるが非常に不自由、または実用性に乏しい
- ×: 一人では全くできない
【評価の注意点】
日常生活動作の評価では、以下の点に注意が必要です。
1. 補助具を使わない状態で評価する
杖や補助用具を使えばできる動作でも、補助具なしでの評価が原則です。「杖があれば歩ける」という場合でも、杖なしでは歩行困難であれば、その旨を評価に反映してもらう必要があります。
2. 「できる」の定義は実用性がある場合のみ
瞬間的にできても、毎日継続してできなければ「できる」とは評価されません。たとえば、「階段を上ることは可能だが、痛みが激しくなるため実際には避けている」という場合は、実用性に乏しいと判断されます。
3. 両手で行う動作は片手では評価しない
たとえば「ボタンをとめる」という動作は、通常片手で行います。両手を使ってようやくできる場合は、「△×」または「×」の評価となります。
4. 痛みの変動も考慮する
線維筋痛症の痛みは、日によって、時間帯によって変動します。「調子の良い時はできるが、痛みが強い時はできない」という場合は、痛みが強い時の状態を基準に評価してもらうことが重要です。
診断書作成時に医師に伝えるべきこと
短い診察時間の中で、医師が患者さんの日常生活の詳細をすべて把握することは困難です。そのため、診断書を依頼する際には、以下のような情報を医師に詳しく伝えることが大切です。
- 朝起きてから寝るまでの一日の流れ(どの動作にどれくらい時間がかかるか)
- 家事や仕事で困っていること(できないこと、制限があること)
- 外出の頻度と困難さ(通院以外で外出できるか、付き添いが必要か)
- 痛みが最も強い時の状態(痛みで動けない日が週に何日あるか)
- 家族に手伝ってもらっていること
事前に紙に書いてまとめておき、診察時に医師に渡すのも効果的です。また、家族に付き添ってもらい、普段の様子を説明してもらうのもよいでしょう。
次のセクションでは、線維筋痛症の障害年金申請で重要な4つのポイントについて、さらに詳しく解説していきます。
線維筋痛症の障害年金申請で重要な4つのポイント
線維筋痛症で障害年金を申請する際には、他の病気とは異なる注意点がいくつかあります。このセクションでは、申請を成功させるための4つの重要なポイントについて、具体的に解説します。
ポイント1: 診断書には必ずステージを記載してもらう
線維筋痛症の診断書で最も重要なのが、重症度分類のステージ(Ⅰ〜Ⅴ)を必ず記載してもらうことです。これは厚生労働省と日本年金機構が、線維筋痛症の診断書作成医に対して明確に求めている事項です。
診断書の「⑨現在までの治療の内容、期間、経過、その他参考となる事項」の欄に、「線維筋痛症 ステージ○」と明記してもらう必要があります。
ステージの記載がないと、以下のような問題が発生します。
- 年金事務所の窓口で診断書を受け取ってもらえない
- 提出後に日本年金機構から診断書の差し戻しがあり、再提出が必要になる
- 障害等級の判定が遅れる、または適切に評価されない可能性がある
医師によっては、ステージ分類に詳しくない場合もあります。診断書を依頼する際には、「障害年金の申請に必要なので、重症度分類のステージを診断書に記載してください」と、明確にお願いしましょう。
また、圧痛点(18ヶ所のうち何ヶ所で痛みがあるか)についても記載してもらうと、より詳細な評価につながります。
ポイント2: 日常生活の状況を医師に詳しく伝える
診察室では、患者さんは診察台に座っているだけです。医師は短い診察時間の中で、あなたの自宅での生活の様子を詳しく知ることはできません。そのため、診断書を依頼する前、または依頼する際に、日常生活の困難さを具体的に伝えることが非常に重要です。
医師に伝えるべき具体的な内容
- 朝の準備にかかる時間: 「起床から着替え終わるまで1時間以上かかる」など
- 家事の状況: 「洗濯物を干すのが辛い」「料理は週に2回程度しかできない」「掃除は月に1回が限界」など
- 入浴の頻度と困難さ: 「週に2回しか入浴できない」「浴槽をまたぐのが困難」など
- 外出の状況: 「通院以外はほとんど外出できない」「買い物は家族に頼んでいる」「外出時は必ず杖が必要」など
- 階段の昇降: 「手すりがないと上り下りできない」「痛みで階段を避けている」など
- 痛みの頻度と強さ: 「週に4日は激痛で動けない」「夜中に痛みで目が覚める」など
- 仕事への影響: 「休職中」「時短勤務に変更」「欠勤が多い」など
効果的な伝え方
口頭で伝えるだけでは忘れられてしまう可能性があるため、以下の方法をおすすめします。
- メモを作成して渡す: A4用紙1〜2枚に、箇条書きで日常生活の困難さをまとめ、診察時に医師に渡す
- 家族に付き添ってもらう: 普段の様子を知っている家族から、医師に説明してもらう
- 痛みの日記をつける: 1週間〜1ヶ月程度、毎日の痛みの強さ(10段階評価)と、できなかったことを記録し、医師に見せる
医師は患者さんの訴えを信じて診断書を書きます。遠慮せず、ありのままの生活状況を伝えることが大切です。
ポイント3: 病歴・就労状況等申立書の書き方
病歴・就労状況等申立書は、請求者本人(またはその家族)が作成する書類です。診断書だけでは伝わらない、発症から現在までの経緯や生活の困難さを説明する重要な書類です。
線維筋痛症の申立書で特に重要な記載事項
1. 発症から確定診断までの経緯を詳しく
複数の医療機関を受診した経緯を、時系列で分かりやすく記載します。特に、初診日の根拠を明確にすることが重要です。
記載例:
「令和2年4月頃から全身の痛みが出現し、同年5月に○○整形外科を受診。腰痛と診断されたが改善せず。同年9月に△△総合病院リウマチ科を受診し、リウマチ検査を受けたが陰性。令和3年1月に□□ペインクリニックを受診し、同年6月に専門医を紹介され、線維筋痛症と確定診断されました。」
2. なぜ確定診断が遅れたかの説明
「最初は原因が分からず、複数の病院で検査を受けましたが異常が見つかりませんでした」「線維筋痛症を診断できる専門医が少なく、受診までに時間がかかりました」など、診断の遅れた理由を記載します。
3. 日常生活の具体的な困難さ
診断書には書ききれない、日常生活の細かな困難さを記載します。
記載例:
「朝は痛みとこわばりで起き上がるのに30分以上かかります。着替えはボタンをとめるのが困難で、かぶりシャツしか着られません。家事は夫に大部分を任せており、自分では食器洗いを少しする程度です。階段の昇降は手すりが必須で、2階に上がるだけで息切れし、痛みが増します。買い物は痛みで長時間立っていられないため、夫に頼んでいます。」
4. 就労状況の変化
仕事への影響を具体的に記載します。
記載例:
「発症前はフルタイムで事務職として働いていましたが、痛みで出勤が困難になり、令和3年4月から休職。同年10月に復職を試みましたが、週3日・1日4時間の時短勤務でも継続できず、令和4年3月に退職しました。現在は自宅療養中で、就労は不可能な状態です。」
申立書は、審査する担当者があなたの生活状況をイメージできるように、具体的に書くことが大切です。
ポイント4: 診断書の内容を必ずチェックする
医師から診断書を受け取ったら、封を切って中身を確認しましょう。封筒に入っていても、開封して確認することは全く問題ありません。むしろ、確認せずに提出してしまうと、後で取り返しのつかない問題が起きる可能性があります。
診断書でチェックすべきポイント
1. ステージの記載があるか
「⑨現在までの治療の内容、期間、経過、その他参考となる事項」の欄に、「ステージ○」の記載があるかを確認します。記載がなければ、医師に追記をお願いしましょう。
2. 日常生活動作の評価が適切か
診断書裏面の「日常生活における動作の障害の程度」の欄を確認します。実際の生活状況と照らし合わせて、評価が適切かをチェックしましょう。
たとえば、実際には「階段の昇降は手すりがないとできない」のに、診断書に「○(一人で支障なくできる)」と記載されていれば、医師に相談して修正してもらう必要があります。
3. 関節可動域と日常生活動作の整合性
診断書には、関節可動域の測定値と日常生活動作の評価が記載されます。この2つに矛盾がないかを確認しましょう。
たとえば、肩関節の可動域が著しく制限されているのに、「上衣の着脱ができる」と記載されていると、整合性が取れません。
4. 補助具の使用状況
杖や補助具を使用している場合は、その旨が記載されているかを確認します。また、評価は「補助具を使わない状態」で行われているかもチェックしましょう。
診断書の内容に疑問があった場合
診断書の内容が実際の状況と異なる場合は、遠慮せず医師に相談しましょう。「実際にはこのような状況なので、診断書にも反映していただけませんか」と丁寧にお願いすれば、多くの医師は修正に応じてくれます。
ただし、医師との関係が悪化しないよう、批判的な言い方は避け、「障害年金の審査では日常生活の状況が重視されると聞いたので、実際の状況を正確に記載していただきたい」という伝え方を心がけましょう。
当事務所では、このような複雑なケースにも対応しています
- 初診日が不明確なケースの調査・証明サポート
- 医師との診断書作成に関する連携サポート(医師への説明資料作成など)
- 病歴・就労状況等申立書の作成代行
- 診断書の内容チェックと修正のアドバイス
- 不支給決定後の再申請・審査請求
神戸・兵庫県で多数の線維筋痛症の申請サポート実績があります。初診日の特定が難しい、診断書の書き方が分からない、といったお悩みがある方は、ぜひお気軽にご相談ください。詳しくはこちら
次のセクションでは、実際に線維筋痛症で障害年金を受給された方の事例を3件ご紹介します。あなたと似た状況の事例があるかもしれませんので、ぜひ参考にしてください。
実際の受給事例3選|線維筋痛症での障害年金
ここでは、線維筋痛症で障害年金を受給された方の事例を3件ご紹介します。それぞれ状況は異なりますが、適切な準備とサポートによって受給に結びついた実例です。あなたと似た状況の事例があるかもしれませんので、ぜひ参考にしてください。
事例1: 40代女性・ステージⅢで障害厚生年金2級を受給したケース
※個人情報保護のため、内容を一部変更しています
【背景】
兵庫県在住の40代女性。会社員として事務職で働いていましたが、3年前から全身の痛みとこわばりが出現しました。当初は近所の整形外科で「腰痛」と診断され、湿布と鎮痛剤を処方されましたが改善せず。その後、総合病院のリウマチ科を受診しましたが、リウマチ検査は陰性。ペインクリニックを経て、約1年半前に専門医で線維筋痛症(ステージⅢ)と確定診断されました。朝の着替えに30分以上かかり、階段の昇降は手すりが必須。買い物や洗濯物を干すのも困難で、家事の大部分は夫に頼っている状態です。フルタイムから時短勤務(週4日・1日5時間)に変更しましたが、収入は約40%減少し、医療費負担も重く、経済的に不安を抱えていました。
【困難だった点】
最大の課題は初診日の証明でした。最初に受診した整形外科のカルテには「腰痛、原因不明」としか記載がなく、線維筋痛症との関連性が不明確でした。また、複数の医療機関を受診した経緯を整理し、一連の診療の流れとして説明する必要がありました。さらに、主治医は線維筋痛症の診断には慣れていましたが、障害年金の診断書作成は初めてで、どのように記載すればよいか戸惑っている様子でした。
【当事務所のサポート内容】
令和3年8月の取扱い変更を踏まえ、整形外科の初診日を申立初診日として主張する方針を立てました。各医療機関から受診状況等証明書を取得し、それぞれの診療内容と線維筋痛症との関連性を丁寧に説明しました。主治医には、診断書作成時のポイント(ステージ記載の必須性、日常生活動作の評価基準など)をまとめた資料をお渡しし、日常生活の困難さを適切に診断書に反映していただきました。また、病歴・就労状況等申立書には、複数の医療機関を受診した経緯と、なぜ確定診断が遅れたかを詳細に記載しました。
【結果】
障害厚生年金2級に認定されました。整形外科の初診日が認められたため、厚生年金加入中の初診日として扱われました。年額約120万円(報酬比例額含む)の受給が開始され、経済的な安心感を得ることができました。
【ご本人の声】
「初診日の証明が難しいと諦めかけていましたが、専門家のサポートで無事に受給できました。見た目では分からない痛みを認めてもらえたことが、何より嬉しかったです。受給できたことで、無理せず治療に専念できるようになりました。」
事例2: 50代女性・初診日証明が困難だったが遡及請求で5年分受給したケース
※個人情報保護のため、内容を一部変更しています
【背景】
兵庫県明石市在住の50代女性。販売員として正社員で働いていましたが、5年前から全身の痛みと疲労感が出現しました。最初は内科で「原因不明」と言われ、その後、整形外科、神経内科を転々としました。痛みで仕事を続けることが困難になり、2年前に休職、期間満了で退職。退職後、専門医を受診し線維筋痛症(ステージⅣ)と確定診断されました。痛みで長時間同じ姿勢を保てず、寝たきりに近い日もある状態。入浴は週2回が限界で、食事の準備も夫に頼っています。医療費は月5万円、夫の収入のみで生活しており、子どもの学費負担も重く、貯金が底をつきそうな状況でした。
【困難だった点】
最大の問題は、5年前に最初に受診した内科のカルテが既に廃棄されていたことです。内科のカルテ保存期間は5年のため、ちょうど保存期間を過ぎていました。病院に問い合わせましたが「カルテは残っていない」との回答。また、その後受診した整形外科や神経内科のカルテにも、線維筋痛症との明確な関連性を示す記載がありませんでした。過去に一度、年金事務所で相談した際にも「初診日が証明できないと難しい」と言われ、諦めかけていました。
【当事務所のサポート内容】
まず、第三者証明の活用を検討しました。当時の職場の同僚に、「○年○月頃から全身の痛みを訴えていた」という証明書を作成してもらいました。また、ご家族からの陳述書も準備しました。さらに、整形外科と神経内科の受診状況等証明書に「前医からの紹介」「数年前から症状があった」との記載があったため、これらをつなぎ合わせて初診日を推定しました。確定診断を行った専門医には、これまでの受診経緯を詳しく説明し、診断書に「推定初診日」として5年前の内科受診日を記載していただきました。病歴・就労状況等申立書には、なぜ確定診断が遅れたか、なぜカルテが残っていないかを詳細に説明しました。
【結果】
障害基礎年金2級に認定されました。さらに、障害認定日(初診日から1年6ヶ月後)まで遡及しての請求が認められ、5年分の遡及分として約400万円を受給できました。年額約83万円の継続受給も開始され、経済的な負担が大きく軽減されました。
【ご本人の声】
「初診日の証明が取れず、一度は諦めていました。でも、専門家に相談して本当によかったです。第三者証明という方法があることも知りませんでした。遡及分も含めて受給できたことで、子どもの学費の心配がなくなり、治療にも専念できるようになりました。見えない痛みとの闘いを理解してもらえたことが、何より救いになりました。」
事例3: 30代女性・一度不支給後、再申請で障害厚生年金3級を受給したケース
※個人情報保護のため、内容を一部変更しています
【背景】
神戸市在住の30代女性。IT企業でシステムエンジニアとして働いていましたが、2年前から全身の痛みが出現しました。長時間のデスクワークが困難になり、通勤も辛くなったため、1年前から在宅勤務に切り替えました。線維筋痛症(ステージⅡ)と診断され、痛みで集中力が続かず、仕事の効率は大幅に低下。短時間しか働けない状態です。最初は自分で障害年金を申請しましたが、不支給の決定を受けてしまいました。不支給の理由は「診断書にステージの記載がない」「日常生活動作の評価が不十分」というものでした。
【困難だった点】
最初の申請では、診断書にステージの記載がなかったことが最大の問題でした。また、主治医は「日常生活は問題ない」という認識で診断書を作成していましたが、実際には仕事に大きな制限があり、家事も最低限しかできない状態でした。しかし、それが診断書に反映されていませんでした。不支給の決定を受けて落ち込み、「もう諦めるしかないのか」と考えていました。
【当事務所のサポート内容】
まず、不支給決定の理由を詳しく分析しました。診断書の再作成が必要だと判断し、主治医に再度お願いすることにしました。主治医には、前回の診断書の問題点と、障害年金の認定基準について説明した資料をお渡ししました。特に、ステージⅡの記載が必須であること、日常生活だけでなく労働能力への影響も評価の対象になることを丁寧に説明しました。また、ご本人には、1週間の痛みの日記をつけていただき、仕事や家事でどのような制限があるかを具体的に記録してもらいました。その記録を医師にも見せ、実際の生活状況を理解していただきました。病歴・就労状況等申立書も全面的に書き直し、在宅勤務での困難さ、仕事の効率低下、家事の制限について詳細に記載しました。
【結果】
再申請の結果、障害厚生年金3級に認定されました。年額約70万円(報酬比例額含む)の受給が開始されました。在宅勤務を続けながら、障害年金による経済的な支えを得られるようになりました。
【ご本人の声】
「一度不支給になって、もう無理だと思っていました。でも、専門家に相談して再チャレンジしてよかったです。診断書の書き方一つでこんなに変わるんだと驚きました。3級でも受給できたことで、無理に長時間働く必要がなくなり、身体を休めながら仕事を続けられるようになりました。諦めなくて本当によかったです。」
【受給事例の比較表】
| 事例 | 年齢・性別 | ステージ | 主な課題 | 認定等級 | 年金額(年額) |
|---|---|---|---|---|---|
| 事例1 | 40代女性 | ステージⅢ | 初診日証明、複数病院受診 | 障害厚生年金2級 | 約120万円 |
| 事例2 | 50代女性 | ステージⅣ | カルテ廃棄、初診日証明困難 | 障害基礎年金2級(遡及5年) | 約83万円 (遡及分約400万円) |
| 事例3 | 30代女性 | ステージⅡ | 一度不支給、診断書不備 | 障害厚生年金3級 | 約70万円 |
これらの事例からわかるように、線維筋痛症での障害年金申請は、初診日の特定、診断書の内容、申立書の書き方など、様々な注意点があります。しかし、適切な準備とサポートがあれば、受給の可能性は十分にあります。
「自分のケースは複雑だから無理かもしれない」「一度不支給になったから諦めるしかない」と思っている方も、ぜひ一度ご相談ください。あなたの状況に応じた最適な方法を一緒に考えましょう。
次のセクションでは、線維筋痛症の障害年金についてよくある質問にお答えします。
線維筋痛症の障害年金|よくある質問
線維筋痛症での障害年金申請について、よくいただく質問とその回答をまとめました。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| Q1. ステージⅡでも障害年金を受給できますか? | 初診日に厚生年金に加入していた場合は、障害厚生年金3級として受給できる可能性があります。ステージⅡは労働に著しい制限がある状態と評価されるためです。ただし、初診日に国民年金のみに加入していた場合は、障害基礎年金の対象となり、2級以上でなければ受給できません。ステージⅢ以上であれば、2級として認定される可能性が高まります。 |
| Q2. 現在働いていても障害年金を受給できますか? | はい、可能です。障害年金は「労働による収入の有無」ではなく、「日常生活や労働への制限の程度」で判断されます。時短勤務や在宅勤務、軽作業など、配慮を受けながら働いている場合でも、障害の状態が認定基準に該当すれば受給できます。実際に、事例3のように在宅勤務をしながら障害厚生年金3級を受給している方もいらっしゃいます。 |
| Q3. 申請から受給までどれくらいの期間がかかりますか? | 通常、申請書類を年金事務所に提出してから、審査結果が出るまで3〜4ヶ月程度かかります。遡及請求(障害認定日請求)の場合は、さらに時間がかかることがあります。書類に不備がある場合や、追加の資料提出を求められた場合は、さらに時間が延びる可能性があります。そのため、できるだけ早めに準備を始めることをおすすめします。 |
| Q4. 一度不支給になった場合、再申請はできますか? | はい、可能です。不支給の理由を確認し、診断書の内容を見直したり、追加の証拠書類を準備したりして再申請できます。事例3のように、診断書にステージ記載がなかったことが理由で不支給になっても、診断書を作り直して再申請することで認定されるケースもあります。また、不支給決定に不服がある場合は、審査請求という手続きもあります。諦めずに専門家に相談することをおすすめします。 |
| Q5. 障害者手帳がなくても障害年金は申請できますか? | はい、申請できます。障害年金と障害者手帳は別の制度です。障害者手帳を持っていなくても障害年金を受給できますし、逆に障害者手帳を持っていても障害年金を受給できないこともあります。それぞれ独立した制度なので、手帳の有無を気にする必要はありません。 |
| Q6. 初診日が分からない場合はどうすればよいですか? | まずは、最初に症状で受診したと思われる医療機関に受診状況等証明書の作成を依頼しましょう。カルテが廃棄されている場合は、第三者証明(家族以外の知人や同僚による証明)や、診察券、お薬手帳、医療費の領収書などの資料を集めます。複数の医療機関の受診状況等証明書をつなぎ合わせることで初診日を推定できる場合もあります。初診日の特定は専門的な判断が必要なため、社会保険労務士に相談することをおすすめします。 |
| Q7. 線維筋痛症以外の病気も併発しています。併合して認定されますか? | 線維筋痛症と関連のある他の障害(たとえば、抑うつ症状など)がある場合、それぞれの障害を併合して評価されることがあります。ただし、初診日が同じか、または因果関係が認められる必要があります。複数の障害がある場合は、診断書も複数必要になることがあるため、事前に年金事務所や専門家に相談することをおすすめします。 |
| Q8. 障害年金は一度もらったらずっともらえますか? | 障害年金には、定期的に診断書を提出して障害の状態を確認する「更新」があります。更新の頻度は、障害の種類や程度によって異なり、1年後、2年後、3年後、5年後などに設定されます。線維筋痛症の場合、症状が固定していると判断されれば更新期間は長めに設定されることが多いです。更新時の診断書で症状の改善が認められた場合は、等級が下がったり、支給が停止されたりすることもあります。 |
| Q9. 診断書の作成費用はどれくらいかかりますか? | 診断書の作成費用は医療機関によって異なりますが、一般的に5,000円〜10,000円程度です。複数の診断書が必要な場合(障害認定日の診断書と現在の診断書など)は、それぞれに費用がかかります。また、受診状況等証明書の作成費用は、1通あたり3,000円〜5,000円程度が相場です。これらの費用は、申請に必要な実費として自己負担となります。 |
これらの質問以外にも、ご不明な点やご心配なことがあれば、お気軽にご相談ください。線維筋痛症での障害年金申請は、個別の状況によって対応方法が異なります。あなたの状況に応じた具体的なアドバイスをさせていただきます。
次のセクションでは、障害年金申請の第一歩として、無料相談のご案内をいたします。
まずは無料相談から、一歩を踏み出しましょう
ここまで、線維筋痛症で障害年金を受給するための条件、認定基準、初診日の特定方法、申請のポイント、そして実際の受給事例についてご紹介してきました。
線維筋痛症での障害年金申請は、確かに簡単ではありません。初診日の特定、診断書へのステージ記載、日常生活動作の適切な評価、病歴・就労状況等申立書の作成など、様々な注意点があります。特に、複数の医療機関を受診してきた経緯がある場合は、初診日の証明が困難になることも少なくありません。
しかし、だからこそ専門家のサポートが役立ちます。社会保険労務士は、障害年金制度の専門家として、あなたの状況に応じた最適な申請方法をご提案できます。初診日の特定方法、医師への診断書作成の依頼方法、申立書の書き方など、一つひとつ丁寧にサポートいたします。
【当事務所の強み】
- 障害年金専門: 障害年金申請に特化した社会保険労務士事務所です
- 神戸・兵庫県の地域密着: 兵庫県内の医療機関や年金事務所との連携実績が豊富です
- 線維筋痛症の申請実績: 初診日の特定が困難なケース、一度不支給になったケースなど、複雑な事例にも対応してきました
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【お問い合わせ方法】
以下の方法で、お気軽にお問い合わせください。
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お電話では、簡単な状況をお伺いし、今後の進め方についてご説明いたします。 - メール: mail@srkobe.com(24時間受付)
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清水総合法務事務所
社会保険労務士 清水 良訓
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