「毎日の痛みと疲れで、仕事を続けることができなくなってしまった…」
膠原病の一つである全身性エリテマトーデス(SLE)と診断され、日常生活に大きな支障をきたしている方は少なくありません。関節の痛み、激しい疲労感、そして将来への不安。一人で抱え込んでしまっている方も多いのではないでしょうか。
今回ご紹介するのは、全身性エリテマトーデスにより障害基礎年金2級の認定を受けた40代女性の事例です。症状の悪化で仕事を失い、経済的な不安を抱えていた相談者様が、どのように障害年金の受給につながったのか。その経緯とポイントを詳しく解説いたします。
辛い症状と向き合いながら、将来に不安を感じているあなたへ。この事例が少しでも希望となれば幸いです。
相談者様の基本情報
| 年齢・性別 | 42歳・女性 |
|---|---|
| 傷病名 | 全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎 |
| 請求方法 | 認定日請求(遡及請求を含む) |
| 決定等級 | 障害基礎年金2級 |
| 年金額 | 年額約81万円(令和6年度) |
相談に至った経緯と症状の詳細
突然の体調不良から診断まで
相談者様は、事務職として長年勤務されていた真面目な女性でした。令和元年8月頃から、「なんとなく体がだるい」「熱っぽい」という症状が続くようになりました。最初は夏バテだと思っていたそうですが、症状は改善せず、むしろ悪化していきました。
両手の指や手首の関節が腫れて痛むようになり、朝起きると手がこわばって動かしにくい状態に。さらに、顔に赤い発疹(蝶形紅斑)が現れたため、近くの内科を受診しました。これが初診日となります。
内科医の紹介で大学病院のリウマチ膠原病科を受診したところ、血液検査の結果、抗核抗体が陽性で、抗DNA抗体も高値を示していました。そして「全身性エリテマトーデス(SLE)」との診断を受けました。
進行する症状と日常生活への影響
診断後、ステロイド治療と免疫抑制剤による治療が開始されましたが、症状のコントロールは困難でした。以下のような症状が相談者様を苦しめていました:
- 全身の関節痛:特に手指、手首、膝の痛みが強く、ペンを持つことや階段の昇降が困難に
- 激しい疲労感:少し動いただけで強い疲れを感じ、午後には横にならざるを得ない状態
- 腎障害の進行:尿検査でタンパク尿と血尿が持続し、ループス腎炎と診断される
- 光線過敏症:日光に当たると発疹が悪化するため、外出が制限される
- 脱毛:ストレスも相まって頭髪が薄くなり、精神的にも落ち込む
令和2年春頃には、通勤すら困難な状態となり、やむを得ず退職されました。「自分の体が自分のものではないよう」「家事もまともにできず、家族に申し訳ない」と、相談者様は当時を振り返ります。
経済的不安と障害年金という選択肢
退職後、収入が途絶え、医療費の負担も重くのしかかりました。主治医から「障害年金という制度があるかもしれない」と言われたものの、「自分が該当するのか分からない」「手続きが複雑そうで不安」という思いから、なかなか行動に移せずにいました。
そんな中、家族の勧めもあり、当事務所にご相談をいただきました。
申請プロセスと社労士の対応
初回相談での状況確認
初回相談では、まず相談者様の現在の症状、治療の経過、そして日常生活の状況を詳しくお伺いしました。
ポイントとなったのは以下の点でした:
- 初診日が令和元年2月で、障害認定日(初診日から1年6か月後)は令和2年8月であること
- 国民年金に加入しており、保険料納付要件を満たしていること
- 症状が障害認定日時点から重く、日常生活に著しい制限があったこと
- ループス腎炎を併発しており、複合的な障害状態にあること
これらの状況から、障害基礎年金の認定日請求が可能であり、障害認定日時点に遡って請求できる可能性が高いと判断しました。
初診日の証明と保険料納付要件の確認
障害年金の請求において最も重要なのが「初診日(障害の原因となった傷病について、初めて医師の診療を受けた日)」の特定と証明です。
今回のケースでは、初診の内科クリニックは既に閉院していましたが、紹介先の大学病院の初診時記録に「〇〇内科からの紹介」と明記されていました。また、相談者様が保管していた紹介状の控えも証拠資料として活用しました。
保険料納付要件については、年金事務所で納付記録を確認し、初診日の前日時点で要件を満たしていることを確認しました。
診断書の依頼と作成支援
障害年金の審査において、診断書の内容は極めて重要です。今回は以下の診断書を依頼しました:
- 障害認定日の診断書(令和2年8月時点の状態)
- 請求日の診断書(令和4年1月時点の状態)
- 腎疾患の診断書(ループス腎炎に関するもの)
主治医に診断書を依頼する際、当事務所から以下の点を記載してもらうよう依頼書を作成しました:
- 関節症状の詳細(可動域制限、腫脹、疼痛の程度)
- 全身症状(疲労感、倦怠感の程度と日常生活への影響)
- 腎機能の数値(クレアチニン値、尿蛋白、eGFR等)
- 治療内容(ステロイド量、免疫抑制剤の種類と効果)
- 日常生活能力の低下の具体例
主治医は非常に協力的で、カルテの記録を詳細に確認しながら、相談者様の状態を正確に診断書に反映してくださいました。
病歴・就労状況等申立書の作成
病歴・就労状況等申立書は、ご本人の言葉で症状の経過や日常生活の困難さを伝える重要な書類です。
当事務所では、相談者様に丁寧にヒアリングを行い、以下のような内容を申立書に盛り込みました:
- 発症時の症状と受診までの経緯
- 症状の変化と治療の経過(時系列で整理)
- 日常生活での具体的な困難(例:「朝、布団から起き上がるのに30分以上かかる」「買い物に行っても重いものが持てず、家族に頼るしかない」など)
- 就労状況の変化(退職に至った経緯)
- 家族のサポート状況
特に重要なのは、抽象的な表現ではなく、具体的なエピソードで症状の重さを伝えることです。
請求書類の提出
すべての書類を整え、令和4年2月に年金事務所に提出しました。提出する書類は以下の通りです:
- 年金請求書
- 診断書(障害認定日用、請求日用、腎疾患用)
- 病歴・就労状況等申立書
- 受診状況等証明書(初診日を証明する書類)
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
- 戸籍謄本、住民票など
審査結果と受給内容
審査期間と結果通知
書類提出から約4か月後の令和4年6月、日本年金機構から年金証書が届きました。
認定結果:障害基礎年金2級
相談者様からは「本当に認定されるのか不安でしたが、無事に受給できることになり、心から安心しました」とのお言葉をいただきました。
受給額の詳細
認定された年金額は以下の通りです:
| 年金の種類 | 障害基礎年金2級 |
|---|---|
| 年金額(令和6年度) | 816,000円(月額約68,000円) |
| 遡及期間 | 令和2年9月分~令和4年5月分(1年8か月分) |
| 遡及分の金額 | 約130万円 |
※年金額は令和6年度の金額です。年度により改定されます。
認定日請求により、障害認定日(令和2年8月)の翌月分から遡って年金が支給されることになり、約130万円の遡及分を一時金として受け取ることができました。
なぜ2級に認定されたのか
今回の事例が障害基礎年金2級に認定されたポイントは以下の通りです:
- 複数の症状による総合的な判断:関節症状だけでなく、ループス腎炎による腎機能障害、全身倦怠感など、複合的な障害状態が認められた
- 日常生活能力の著しい制限:診断書と申立書により、家事や外出などの日常生活動作に著しい制限があることが明確に示された
- 継続的な治療の必要性:高用量のステロイド治療を継続しており、治療効果が十分でない状態が続いていること
- 就労不能の状態:症状により退職を余儀なくされ、現在も就労が困難な状態であること
障害年金の認定基準において、障害基礎年金2級とは「日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度」とされています。今回の事例は、この基準に該当すると判断されました。
この事例から学ぶ申請のポイント
ポイント①:早期相談の重要性
相談者様は主治医から障害年金について聞いてから約1年間、相談をためらっていました。しかし、早期に相談していれば、より早く手続きを進めることができました。
「自分は該当しないのではないか」と思っても、まずは専門家に相談することが大切です。該当するかどうかは、詳しい状況を聞いてみなければ分かりません。
ポイント②:初診日の証明は慎重に
今回のケースでは初診のクリニックが閉院していましたが、紹介先の病院の記録と紹介状の控えにより初診日を証明できました。
膠原病の場合、最初は「なんとなく体調が悪い」という症状で内科を受診することが多く、その後、専門医につながるケースが一般的です。初診日は専門医ではなく、最初に症状で受診した医療機関の日となりますので、注意が必要です。
ポイント③:診断書の内容が決定的に重要
障害年金の審査は、診断書の内容が最も重視されます。今回は、主治医に対して、具体的にどのような内容を記載してほしいかを依頼書で伝えることで、審査に必要な情報を過不足なく盛り込むことができました。
医師は障害年金の認定基準に必ずしも詳しいわけではありません。社労士が介入することで、認定基準に沿った診断書の作成をサポートできます。
ポイント④:複数の症状を総合的に評価
膠原病の場合、単一の症状ではなく、関節症状、腎障害、全身症状など、複数の症状が同時に存在することが多いです。
今回の事例では、関節症状の診断書だけでなく、腎疾患の診断書も提出し、複合的な障害状態であることを明確に示しました。これが2級認定につながった大きな要因です。
ポイント⑤:認定日請求による遡及受給
障害年金には「認定日請求」と「事後重症請求」があります。認定日請求は、障害認定日(初診日から1年6か月後)時点の診断書を提出することで、その時点まで遡って年金を受給できる制度です。
今回は認定日時点の診断書を取得することができたため、約1年8か月分の遡及受給が実現しました。遡及分は一時金として受け取れるため、経済的な負担が大きく軽減されます。
ポイント⑥:病歴・就労状況等申立書で日常生活の困難さを具体的に伝える
申立書では、抽象的な表現ではなく、具体的なエピソードで症状の重さを伝えることが重要です。
例えば、「家事ができない」ではなく、「洗濯物を干す際、両手を上げると関節が痛み、10分以上続けられない。食事の準備も、包丁を持つと手首が痛むため、家族に頼っている」といった具体的な記述が効果的です。
膠原病で障害年金を受給するための基礎知識
膠原病とは
膠原病は、自己免疫疾患の総称で、体の免疫システムが誤って自分自身の組織を攻撃してしまう病気です。代表的な膠原病には以下のようなものがあります:
- 全身性エリテマトーデス(SLE)
- 関節リウマチ
- 強皮症(全身性硬化症)
- 多発性筋炎・皮膚筋炎
- シェーグレン症候群
- 混合性結合組織病(MCTD)
これらの疾患は、関節、皮膚、腎臓、肺、心臓など、全身のさまざまな臓器に影響を及ぼす可能性があります。
障害年金の受給要件
障害年金を受給するためには、以下の3つの要件を満たす必要があります:
- 初診日要件:障害の原因となった傷病について、初めて医師の診療を受けた日(初診日)に、国民年金または厚生年金保険に加入していること
- 保険料納付要件:初診日の前日において、一定期間の保険料を納付していること(原則として、初診日のある月の前々月までに、加入期間の3分の2以上の期間について保険料を納付または免除されていること)
- 障害状態要件:障害認定日(原則として初診日から1年6か月を経過した日)または請求日において、障害等級に該当する障害の状態にあること
膠原病における障害認定基準
膠原病の障害認定は、主に「肢体の障害」「腎疾患による障害」「呼吸器疾患による障害」などの基準に基づいて行われます。
障害等級2級の目安(障害基礎年金の場合):
- 日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度
- 家庭内での日常生活動作が著しく制限される状態
- 他人の介助なしには日常生活を送ることが困難な状態
障害等級3級の目安(障害厚生年金の場合):
- 労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度
膠原病の場合、関節症状、全身症状、臓器障害などを総合的に評価し、日常生活能力や労働能力への影響が判断されます。
専門家に相談するメリット
社労士に依頼する3つのメリット
①適切な診断書の取得をサポート
障害年金の審査において、診断書の内容は決定的に重要です。医師は必ずしも障害年金の認定基準に詳しいわけではありません。社労士が介入することで、認定基準に沿った診断書の作成を医師にお願いすることができます。
②複雑な手続きをスムーズに進行
障害年金の申請には、多くの書類が必要です。初診日の証明、保険料納付記録の確認、診断書の取得、申立書の作成など、煩雑な手続きを社労士が代行することで、ご本人の負担を大幅に軽減できます。
③認定の可能性を最大化
社労士は障害年金の認定基準を熟知しています。どのように症状を伝えれば認定につながりやすいか、どのような証拠資料を揃えるべきかなど、専門的な知識に基づいてサポートします。
「諦めない障害年金」の理念
当事務所では、「諦めない障害年金」をモットーに、一人でも多くの方が適切に障害年金を受給できるよう、全力でサポートしています。
「自分は該当しないのではないか」「手続きが複雑すぎて無理」と諦める前に、ぜひ一度ご相談ください。あなたの状況を丁寧にお伺いし、最適な方法をご提案いたします。
まとめ:希望を持って、まずは無料相談へ
全身性エリテマトーデスをはじめとする膠原病は、目に見えない症状も多く、周囲に理解されにくい病気です。痛みや疲れと闘いながら、経済的な不安も抱えている方は少なくありません。
しかし、障害年金という制度があります。適切な手続きを踏めば、あなたも受給できる可能性があります。
今回ご紹介した事例のように、専門家のサポートを受けることで、複雑な手続きをスムーズに進め、認定の可能性を高めることができます。
一人で悩まないでください。まずは無料相談から始めてみませんか。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事例により結果は異なります。実際の申請に際しては、必ず専門家にご相談ください。

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